午前1時、都内某所。雑居ビルの一室に、スーツ姿の男たちが集まっていた。

大きなフロアに、本革のソファがテーブルを挟んで2つ置かれている。

殺風景なその部屋の窓は、厚いカーテンで閉め切られ、蛍光灯の灯りが妙に明るく感じる。

そのソファに、それぞれ2人の男が座り、男たちを囲むように、ガタイのいいスーツ姿の男たちが立っていた。

2人がソファに座ってから、しばらく沈黙が続いていたが、小柄な方の男がタバコに火をつけ、おもむろに話し始めた。

 「長谷川さん、今回の受検者は決まったんですか。あれからしばらく経ったんで、そろそろテストを再開してほしいっていう依頼がきてるんですよ。まあ、あんなことがあった手前、慎重になっているのはわかりますよ。でも、そろそろ動き始めたほうがいいじゃないですか」

 

 長谷川は、背が高く、よくスーツの似合う男だった。彼はかけていたサングラスを外し、問いに答えた。

 

 「なあ、葛城。俺に文句を言うのもわかる。なんせ、前回の失敗は俺にも責任があるからな。だが、今回は安心してほしい。もうすでに、受検者の目星はついている」

 「お、珍しく仕事が早いじゃないですか。今回はどんな奴を選んだんですか。人数は何人のパターンで行くんです?」

 葛城は興味津々な顔をして、長谷川に詰め寄った。

 「これが今回の受検者だ」

そういうと、長谷川は近くにいたスーツの男からパソコンを受け取って、テーブルに置き、受検者のリストを葛城に提示した。

 「おいおい、今回の受検者ってこいつらかよ。なんだかパッとしないな。落ちぶれたのかな、天下の長谷川さんも。聞くところによると、昔はかなり幅を利かせてたみたいじゃないですか。

もう、そのころの力は残ってないんですかねー」

 葛城が話し終わると同時に先ほどパソコンを長谷川に渡した男が、懐から拳銃を取り出し、葛城に突き付けた。

 「長谷川さん、こいつ殺っていいですよね。ここまで言われてだまっていることは俺にはできなせん」

 その瞬間、拳銃の音が部屋に鳴り響き、一人の男が倒れた。

 

 「だめですよー。そんな怖いもの人に突き付けちゃ。学校で習わなかったのかなー。長谷川さんも部下の教育がなってないなー」

 倒れた男は長谷川の部下の方だった。葛城の部下が男の脳を的確に打ち抜いていたのだ。

 

 「すまない。俺の部下が迷惑をかけたみたいだな。だが、お前が間違っていることが一つだけある。それは、受検者はこいつらでいいのさ。つまり、今回のテストは今までのテストと趣旨が違うってことだ。俺がこれからやろうとしていることは、以前のテストよりも格段に面白いものになる。どうだ、気になるか」

 

 葛城はおもちゃを買い与えられた子どものように、表情が明るくなり、笑顔で何度もうなずいた。

 「俺がこれからやろうと考えているのは、その名もシャッフル・テスト」

 「シャッフル・テスト?なんだそりゃ。よくわからないから、どういうものか、早く教えろ」

 「まあ、焦るな。いいか、このテストは手始めに4人で行おうと考えている。俺が選んだ4人はすでに先ほどお前に見せたやつらだ」

 「なるほど、なるほど。それで、それで?」

 ますます、葛城は表情を豊かにして、長谷川に詰め寄る。

 一方の長谷川は、部下が殺されたことなどなかったかのように、表情を変えずに淡々と説明を行った。

 

 夜明け前、大きなスーツ姿の男と数人の男が雑居ビルから出てきた。長谷川は近くに止まっていた黒い大きな車の後部座席に乗り込んだ。

 「葛城のやろう、今はだまっておいてやるが、この借りは必ず返してやる」

 男は、大きく歯ぎしりをし、部下を弔ってやるために山へとむかっていった。

 

 様々な因縁がゲームを通じて、巡ろうとしている。

 受検者たちはまだ、そのことを知らない。