スクラップ・タウン 中央にある酒場にて

 

この酒場は、スクラップ・タウンに誘われたものが最初に訪れる場所である。

皆、疲れ切った表情や、やさぐれた顔をしてここに集う。

スクラップ・タウンの情報が多く集まるこの酒場には名前などない。

噂によると、この酒場を取り仕切っているマスターも、ガチャの外れだったらしい。

そして、マスターは最古参とされ、マスターよりも先に街に来たものはいないといわれている。

例の外れの彼も、仕事を済ませ、この酒場を訪れていた。

カウンターのマスターの前が彼の定位置だ。

 

「マスター、最近この街に来るやつが多い気がしないか」

「スマホアプリゲームのブームが去ったのだろう。無料でお試しだけして、アカウントを捨てたやつがたくさんいる。ガチャ主のもとで頑張ろうとしていたキャラたちが、毎日送られてきては、行き場のない怒りの表情を浮かべている顔をよくみるよな。その数も少し減ってきたような気もするよ」

マスターは後ろ向きのまま俺の話に答える。マスターがグラスを拭いては、棚に並べていく作業を何も考えずに見ていた。

今更だがアカウントを捨てたことで、この世界に来る奴らが多くなるのであれば、ガチャ主が使っていたはずのレアキャラ達はどこにいくのだろう。

外れがここに集まっているのは、俺も知っているが、一緒の世界で共に活躍しようと誓ったキャラが俺にもいた。

レアキャラだったあいつは、どこに行ったのだろう。

 

「なあ、マスター。『アタリ』のやつら、レアキャラたちはどこにいったんだ。ここにきたやつらはいないのか」

「なんだ、知らないのか。まあ、お前がここに来て、3か月。そろそろ教えてやってもいい頃だな。この街にレアキャラはいない。いや、このスクラップ側の世界にはいないのかもな。なんせ、俺もここに来てからは、『奴ら』をみたことはない」

マスターは作業を止め、俺の空いたグラスにブランデーを注ぐ。マスターは少し寂しそうな顔をしていた。

思い返すとたしかに、ここに来てからというものの、ガチャのアタリ枠だったという者に会ったことはない。

あいつには、もう会えないのかもしれないな。俺はグラスの酒を一気に飲み干した。

 

「ん、新しいお客さんかな」

マスターが、入口の方を見る。俺も後ろを振り返ると、扉のガラス越しに女がいた。

この世界にも女はたくさんいる。この酒場にもちらほら酒を飲んでいる女はいる。

だが、この女は違う。この世界で会った女とは違う。感覚的なものだが、それはマスターや酒場の客も同じように感じていただろう。

先ほどまであれほど静かだった酒場が、今では誰もいないのではないかと思うほど、静かになっていた。

酒場に入ってきた女は真っ白なきれいなドレスを着ていた。どこかのお姫様のようにも見える。

 

女は、酒場に入ってくると、辺りをキョロキョロと見回した後、酒場に集まったものたちへ透き通るようなきれいな声で疑問を投げかけた。

「あの、ここは。ここはどこなのでしょうか」

この女が現れてから、この街にもうひとつの顔が誕生した。