愛と自我
人間は自我によって苦しむというのは一つの面ですが、自我は苦しみの原因でしかないのかと言えばそうではありません。
自我は愛を反映する器でもあり、恋人との恋愛や家族の愛、普遍的な人類愛など、愛には「私は愛する」という自我の働きがあるからです。
つまり、愛が現象世界に現れるとき、それは自我を通して現れるのです。
これは一般的に言えば恋愛に顕著で、私たちは知り合う人に対して誰でも恋愛できるものではなく、「この人が好き」という個別の感情が働きます。
つまり、そこに自我の働きがあり、自分と他者という明確な個別感を元に、恋愛の感情が発展していくのです。
一方で、動物は自我がない分、嫉妬や自己否定などの苦しみを受けることはありませんが、個別の意志や愛や慈悲なども反映することができません。
人間の自我は愛や慈悲などのより高い精神を反映して、それを人々と分かち合うことができます。
先ほどもお話ししたように、愛や慈悲の面と結びついた自我を高級自我、欲望や自尊心などと結びついた自我を低級自我と呼びます。
欲望と自我が同一化し、「私はあれが欲しい」とか、「私はあれが食べたい」という欲望が自分そのものとなれば、その人は低級自我として生きることとなり、強い執念で欲望を叶えようと必死になります。
また、「あの人は自分よりも成功している」とか、「こんな私では皆んなからバカにされる」という嫉妬や劣等感なども低級自我によって生じる感情です。
そして、欲望を主体的に働かせることによって、人は自らの苦しみを深めてしまいます。
これがうつの原因になるのです。
反対に、高級自我で世界と関わることのできる人は、自分のみならず他者をも幸福にするために働くことができます。
そのような愛や慈悲の行動によって、その人の周りからは争いがなくなり、協調性や思いやりの輪が広がります。
また、愛を持って生きる人から、恐怖や不安は去り、危険を顧みない積極的な行動ができるようになります。
したがって、自我の低級な面に目を向けるのではなく、「私は愛や慈悲を積極的に他者に与えていこう」という自我の高級な面に目を向けることが本来の自分らしい生き方であり、
うつの対策でもあるのです。
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