途中からの人は1話から読んで頂けると非常に嬉しいです。





目が覚めると11時。



『踊る!さんま御殿!!』の途中で寝てしまった事を考えると、

あの番組が20時からですから。



実に14時間、

1度も目が覚めずに寝ていたという計算です。



起きると、

すでに起きていた増本に


「すげぇ寝てたよ。どんだけ寝るんだよ」


と言われました。



それだけこの旅で疲労してたのでしょうね。



しかし寝起きが悪い僕はムッとし、


『僕が社長をヒッチハイクで捕まえるまで、

お前路上で寝てたじゃねえか』


と言いかけましたが、

ケンカになりそうなのでやめました。



起きた事を報告に行くと


「やっと起きたか!

よっしゃ、これから飯食いに連れてったる!」


そう社長さんに言われ、ファミレスへ。



そこで昼食をごちそうになり、

店を出て、

車で集合場所の大阪駅まで送って頂きました。



そこで


「ここで君らとはお別れや。

嫁が作ったこいつを最後に渡すから、がんばるんやで!」


と、おにぎりをそれぞれ3つずつ渡されました。



もうなんというか、

ここまで見ず知らずの僕らに優しくしてくれるのか…と思ったら、

涙が出そうになりました。



しかし、ここで涙でも出ようもんなら、

後々に増本にいじられそうでしたから、

ぐっと我慢しました。


もしかしたら増本も同じ気持ちだったかもしれません。


とにかく、集合場所の大阪に着いた僕ら。



使える残高4300円から前日の焼き肉580円を食べ、残りは約3700円くらいでしょうか。


社長さんのおかげで、

集合までどうにか乗り切る事ができました。


集合まであと数時間あったので、

どうやって時間を潰そうか。


そんな話になり、

また本屋で大阪で時間を潰せるスポットを探すため、

雑誌を立ち読みする事にしました。


 

そこで、あるページを見つけた増本は


「見ろよ!この近所にこんな店があるぞ!」


喜々として僕にそのページを見せてきました。



そこには


『30分で食べきったらタダ!

ジャンボアイスパフェ3000円!』


と書かれていました。



嘘だろ。


顔を上げると、ニコニコしている増本。


もう断る術もありませんでした。



方向音痴のくせに、

なぜかこういう時は迷わずに到着する僕ら。



せっかくの残り残高でジャンボパフェ…

マジかよ…



そんな表情の僕に関係なく


「ジャンボアイスパフェ2人、挑戦します!!」


と店内中に高らかに宣言した増本。



バカ過ぎる。



 雑誌に載っていた情報から知りましたが、

どうやら6リットルのアイスにチョコケーキ2つ。

よせばいいのに、

そこにミントのカップアイスが2つ。


 

そんな物体が今から来る。


気合いを入れ直さなければ、やられる。



そう思った僕は増本に


「ちょっと、トイレ」


と言い残し、

店外に設置されてあるトイレに直行。



気持ちを落ち着けてから挑もうとしましたが、

そこから戻ってくる途中、


すごく苦しそうな顔で、

僕が想像していたよりも巨大なパフェに挑む増本


の姿をガラス越しに見て、

確実に無理だと悟りました。



そして最初からあきらめた状態で挑戦スタート。



冷たいのが食べても食べても減らない、

未だに、この時しか経験した事ありません。



増本は


「おいしいな!

こんな巨大パフェ食べるのが夢だったんだよ」


と言っていましたが、

強がりなのは表情から明らかでした。



僕「おい、お前のそんな夢聞いたことないぞ。

完全に取ってつけた夢じゃねえか」


増本「そんな事ないよ。

オレの夢ベスト100には前からランクインしてるよ。お前の夢100位って何だ?」


僕「おいしい煮物を自分で作れるようになるとかかな…」


増本「それ、わざわざ人に言うか?」


僕「いや」


増本「だから、オレも言わなかった」



よくわからない形で丸めこまれた後、

黙々と食べ続けました。



でもなんとかがんばって、

1リットルくらいは食べたのでしょうか。



そのくらいで


「ギブアップ…」


スタートから10分。



早くも僕は言いました。

3分の1も食べれていませんでした。



元々甘い物が好きではない僕に6リットルのアイスは、挑戦する前から不可能。



登山経験もないのに、

いきなりエベレストに登らされた気分です。


そして2分後くらいに、

半分くらいまでいった増本がギブアップ宣言。


僕らのギブアップ宣言を受けた店員さんは言いました。



「それでは、

ここからはごゆっくりお楽しみください!!」



何を言うんだ。


これ以上は無理だからギブアップしたんだ。



「男はあきらめが肝心だぞ」



増本は前日の僕の言葉を引用し、

へこんでいる僕をせっつきました。



パフェ代3000円を泣く泣く支払う。



これで所持金700円ですよ。

店を出ると、集合まで残り15分。


 

そこで僕と増本はトイレで着替えました。



『チームカラーはオレンジ』



担任のM先生の言葉を守るべく、

増本が高校3年の引退まで所属していた陸上部のオレンジのランニングパンツ。


それをあらかじめ持ってきていた、

全身白タイツの上に着用したのでした。



増本「よし、どっちが先に行く?」


僕「先に行くって何?同時じゃないの?」


増本「バカ。こういうものが用意してあるんだ」



と言うと、

増本はバッグからオレンジ色のバトンを取りだしました。



ランニングパンツは学校で使っていただろうからわかるけど、バトンはどこから…


そんな詮索をする間もなく、

ジャンケンが始まりました。



増本が勝ち


「よし、オレは後攻だ!」


と選択。



そしてその姿で恐る恐る駅前の柱の陰に隠れました。


と言っても、

その辺の道行く人にはジロジロ見られています。


そこから周囲を見渡すと、

他の4人のメンバーが揃っているのを確認できました。



「よし、行け!!」



増本の号令がかかり、

僕は全身白タイツにオレンジのランニングパンツの姿でスタートしたのでした。



そして驚く4人のメンバーの周囲をグルグルと2周した後、

増本の元に戻り、バトンを渡す。



それを受け取った後、

増本は僕よりも早いスピードで4人の周囲を2周。


超いらない情報ですけど、

増本は陸上の中距離で県大会のトップ10に入る選手でしたから、

それはかなり早いものでした。


しかし、そのスピードが仇になったのか、

走り終わり付近で



ギャロが手にしていたギターに


ガン!!


思い切り接触。



見るからに疲れ切った顔で、

チームカラーの紺のバンダナを身に付けたギャロは


「マジでやめてほしいわ…」


と言い放ちました。


その光景を見ていた、

チームカラーの黄色のTシャツをまとったピーチは



「いっそ、オレが手刀でギター割ろうか?」



と真顔でギャロに詰めよりました。



「マジで勘弁してくれよ…」



とギャロがガチのリアクションをとった、

3月8日の16時。



ここに6人が全員集合したのでした。



(続く)



次はいよいよこの旅の主旨である交通費発表です。