途中からの人は1話から読んで頂けると非常に嬉しいです!






「おい、そろそろ起きようぜ」


増本の声で目を覚ました僕。



目を開けると吹田サービスエリア(多分)。



あぁ、そうか…

ヒッチハイクで大阪に来たんだった…



なんだか起きてからの方が夢みたいでした。

そして眠気をさますために顔を洗う。



戻ってくると、

増本はすでに地図で場所の確認を終えたようでした。



『ここからは歩いていく。

まだ集合まで時間はあるから、アメリカ村に行ってみよう』



という案がまとまり、サービスエリアを出発。



3月の朝方は冷え込む気候でしたが、

動いている内に温かくなるだろうと歩き始めました。


なにぶん昔の事ですから詳しい地名は覚えていませんが、

十三だかそんな名前のところまで進みました。



周辺のコンビニで地図を確かめてみると、

アメリカ村の存在する難波までまだ結構距離がある。



これはさすがにきついな…



2人で話し合った結果、

難波までもう1度ヒッチハイクをしてみようという事に。



スケッチブックに


『難波』


と記載し、再び掲げる僕ら。



この頃は本当に電波少年のおかげで、

世間の方々がヒッチハイクに寛容だったのかもしれません。



ものの10分ほどで乗用車が止まってくれました。



マジかよ!!


またテンションの上がった僕ら。



1台目のヒッチハイクを経験し、

僕らは


『助手席に乗る方は運転手と話をする。

後部座席の方はなるべく休憩に専念しよう。

その役目は車ごとに交代』


という作戦を立てたのでした。


なので、今回は増本が助手席、

僕が後部座席に乗り込む。



乗せてくれたのは、

20代中頃くらいのお兄さんでした。



服装と車、

そして朝方の帰りという時間帯から察するに、

おそらく夜の仕事系。



そして車中には、

讃美歌が流れておりました。



しかも大音量。



乗せて頂いたくせにこう言うのもなんですが、
ただでさえ、ちょっといかつい感じの服装に、
大音量の讃美歌の組み合わせは少し怖いものがありました。


そもそも僕らなんかを乗せてくれてるし、

実際はすごく感じの良い方だったんですけどね。



その空気を察してか、

お兄さんは


「朝方に聞く讃美歌はええよ。

心が洗われる気がすんねん」


と3回くらい言ってました。


とにもかくにも、

お兄さんのおかげでアメリカ村まで行く事に成功。



人が溢れかえる様子を見て、

ようやく大阪に着いたんだという事を実感しました。



増本「よし!大阪に着いたんだから、まずたこ焼きだろ!」



テンション最高潮の僕らは、

足早に店を探し、たこ焼きを食べました。


そしてそのままアメリカ村の古着屋を散策。



所持金が少ない事も考えずに


「おい、これ、お前に似合うんじゃないのか」


「よし、買う!!」


よせばいいのに、お互い1着ずつ服を購入。



カラオケに行ったりして、

楽しいアメリカ村の時間は過ぎていきました。



そして夜、21時になった頃。



財布を開いてみると、

お互いの所持金は1万円程度。



集合してからの宿泊代で5000円を支払うのは決まっていますから、

使えるお金はこの時点で残り5000円。



結構あるじゃないかと思うかもしれませんが、

この5000円で


・2日分の宿代


・食事代


・帰りの交通費


をやりくりしなければいけません。


正直、かなり絶望的な金額になっています。


とりあえず、本日の宿をどうすればいいのか。


野宿という考えも浮かびましたが、

なにぶん3月。



外で寝るには寒すぎる。



頭を悩ませながら街を徘徊していると、

マンガ喫茶の


『フリータイム。朝まで680円』


の看板が目に入りました。



これだ!!



もう何の迷いもなく入店。


この当時、高校生の僕らに、

マンガ喫茶に宿泊なんて発想はなかったですからね。


かなり救いの神に見えました。


そしてこれが、僕の人生初のマンガ喫茶でした。



この頃はなのか、

このマンガ喫茶がなのかわかりませんが、

この店は個室タイプではなく、

だだっ広い空間にテーブルが何個か置いてある。



そんなマンガ喫茶でした。



若い兄ちゃんやサラリーマンがひしめく中、
2人並びの席を見つけ着席。


かなりありがたい事にドリンクも飲み放題でしたから、

そこで2、3杯のドリンクを一気に飲み、

乾いた喉を潤しました。



一息ついたところで、

読みたいマンガを探す事にしました。



僕はなんとなくタイトルで手に取った


『総理を殺せ』


というマンガをチョイス。



それが想像以上に面白く、

夢中で読み進めていると、

増本が言いました。



「そういえば21時過ぎてるぞ」



あわてて携帯の電源を入れました。



『連絡がとりたい時に充電が切れたら嫌なので、お互い夜21時から23時だけスイッチを入れる事』


と他のメンバーに伝えてありますからね。



まずは大重・ピーチチームに電話をかけてみると


「まだ自宅だよ」


どうやらまだ出発していないようでした。



僕達が大阪に着いていると知っているのに、

なんという胆力でしょう。



そして早川・ギャロチームに連絡をとってみる。



すると


「俺らは今、岐阜にいるよ」


という返答が。




増本「一体どうやって岐阜まできたんだ…?」


僕「そもそも、なんで岐阜なんだよ」


増本「鈍行で向かってて、今そこって事なんじゃないの?」


僕「だとしたら、この時点で早川・ギャロチームの勝利はもうないな」


増本「タダより安いものはないからな。

負けるなんて絶対ありえないだろ」


僕「よし、今は勝負の事は忘れて、

ひたすらマンガを読もう」



そんな会話を増本と交わした後、

かねてから読んでみたかった松本大洋の漫画を読みあさり、


『ピンポン』


を読んでる途中で、

また眠りに落ちていきました。



(続く)