白井先生は、
私たちが資料に目を通すのを待って、
「昭和二十三年(一九四八)京都でジフテリアの予防接種による、
集団事故があったことはご存知ですか?」
「いいえ知りません。そんなことがあったのですか?
その資料は私たちにも入手できるでしょうか。
どこに行ったら分かるでしょうか」と、私たちは立て続けに聞いた。
「京都の府立図書館にあると思います」
先生から聞いた新しい情報に、
私たちは喜びを隠し切れなかった。
「これからも出来る限り力になりますから……。
体を壊さないように」
との先生のやさしい言葉に送られて、病院を後にした。
外はもう日が落ちて、
行き交う人の波が忙しく揺れていた。そんな中を、
私たちも最終の飛行機に乗るために急いだ。
飛行機の座席に肩を並べて
「無理をして東京まで白井先生に会いにきてよかった」と、
二人で喜びを噛みしめた。