令和六年 大相撲三月(春)場所<3/10~3/24> 於:大阪 エディオンアリーナ【 展 望 】

 

一月往ぬる、二月逃げる、三月去るという慣用句にもあるように、一月場所の千秋楽を迎えてから、早いもので2月26日に三月場所の番付が発表された。

しかし、三月場所の番付発表前に相撲協会ではまたもや事件が勃発した。

SNSへの書き込みや被害力士の関係者による相撲協会への訴え等により、相撲協会コンプライアンス委員会が調査を行った結果、宮城野部屋の北青鵬の兄弟弟子への暴行が発覚。

2月21日に師匠宮城野と北青鵬に聴取を複数回行い、2月23日の臨時理事会に報告する調査結果と北青鵬と師匠の13代宮城野(元横綱・白鵬)に対する処分案をまとめた。

北青鵬に対しては、2番目に重い「引退勧告」、13代宮城野に対しては、3番目に重い「2階級降格及び減俸」となり、今後の宮城野部屋運営についても宮城野が師匠として継続出来るかは不透明な状態となった。北青鵬は2月22日に既に引退届を提出し、翌日に受理された。

臨時理事会での調査結果報告書に北青鵬が行った暴行内容が詳細に記されているが、その内容や痛がる反応を見て面白がった等その動機についても卑劣極まりないものであった。

また、13代宮城野もその事態を知っていたものの、何ら改善させることはなく、それが師匠の監督責任として処分される形となった。

13代宮城野は現役時代も過剰なパフォーマンス等で協会から注意を受けており、年寄襲名する際も誓約書を書かされたという異常な状態となっていた。

協会内には13代宮城野を良しと認めない親方連中も数多く、この機に排除しようとする動きもあろう。

今後部屋が閉鎖される恐れもあるが、当面は玉垣(元小結・智ノ花)が師匠代行として宮城野部屋を指導する形となった。

筆者もそして、多くの方も脳裏に浮かんだのは過去の貴乃花事件であろう。

しかし、それ以上に根が深い問題だという気がしているので、この問題は別途コラムでもまた機会を設けて述べたいと思う。

北青鵬という力士の筆者の印象についてだが、ファンサービスをすごくする力士でいつもニコニコとしているものの、長年力士たちを見ていた筆者には漠然とした違和感にしか映らなかった。

ニコニコというよりもニヤニヤ、ヘラヘラ???

ふてぶてしいとも無表情とも言い切れない、何だかとらえどころのない、それでいて危うさのある顔つきは、こういった結果を招いた精神性の稚(いとけな)さの現れであったのかと思う。

 

恵まれた体や肩越しからの強引な上手(うわて)などに頼るばかりで、決め手を欠く冗長な相撲が多かったのも、厳しい稽古を経て鍛えられたものではなく、序の口から三段目まで連続優勝を重ねてきたように素質で勝ててしまうがゆえの結果だったと思うし、それが故に相撲を舐めていた感じもする。

稽古をよくサボっていたのがそれを物語っている。

名探偵コナンは「体は子供、頭脳は大人」であったが、北青鵬は正に「体は大人、頭脳は子供」だった。

この事件が勃発する前、最近になって北青鵬ヤバイやつらしいゾ!の噂を聞くようになったので、筆者もやっぱりか!という腑に落ちた感じであった。

しかし、その内容は活字にするのも悍ましいような想定外の内容であった。

この22歳の青年が今後の人生をどう送るかはわからない。

しかし、少なくともこの挫折を教訓にして少しでも真人間になっていってほしいと願うばかりである。

同じように兄弟弟子にイジメを行っているもう一人の力士の噂も絶えない。

今後芋づる式に発覚していくのだろうか。

今回の事件が元で入門予定の子も保留にしていると聞く(そらそうだろうな…)。新弟子激減となると相撲協会自体の運営も危ぶまれていく。発覚いや、八角理事長にきちんとした対応を求む。

 

さて、前置きが長くなったが今場所の番付に目を移してみるとしよう。

先場所、横綱ここにありき!の存在感で9回目の優勝を果たした照ノ富士は変わらず東の正横綱

今場所どうするかはまだ見えていないが、優勝したので少し休んでもいいと筆者は思うが、どうだろう?

本人は二桁優勝を目指しているので、次も万全な状態で場所を迎えたいであろうが、無理はしなくても良いと思っている。

 

さて、琴ノ若の新大関昇進によって今場所から4大関となった。

大関・霧島は綱とりに失敗したものの大関としての責任は果たした形となった。

師匠の定年により、4月以降の部屋の去就が気になるところだと思うが、今場所からまた仕切り直しで頑張っていきたいところだろう。

豊昇龍も最後はいろんな意味で残念な休場となったが、ここから巻き返しを図れるか!?

大関・貴景勝は昨年九月場所以来、実に8度目のカド番となる。

たびたびケガに泣く大関だが、なんやかんやで大関の地位を守っているのは大したものだ。

そろそろその努力が報われてほしいとは思うが、まずはケガなく場所を取り切ることだろう。

琴ノ若が新大関として番付に名をのせた。

佐渡ヶ嶽部屋としては、平成23年の琴奨菊以来久々の大関誕生となる。

「琴ノ若」の四股名としての大関は今場所だけのようだが、「琴櫻」となって次の地位へと進んでほしい。

4大関の中で横綱に一番近いのは現時点では琴ノ若だと筆者は思っている。

 

大栄翔は6場所連続の関脇で三役も7場所連続となった。

もはや三役の顔になっている大栄翔だが、いかんせん勝ち星にムラがある。

先場所も9勝に終わったので、二桁勝ち星を安定して出せるようにしていきたいところだ。

 

若元春は昨年十一月場所以来の関脇となり、阿炎も同じくで小結となり、同時に手の合う(仲が良い)

二人が共に2場所ぶりの三役復帰となった。

やはり若元春は大関を目指してほしい逸材だと思っているし、阿炎も亡き師匠の為にさらに上を目指していけると思っている。

ベテラン錦木も昨年九月場所以来の小結再昇進となった。

(※上写真 左=若元春、右=朝乃山)

東西の平幕筆頭は小結から降下の宇良と朝乃山。

宇良は1場所で三役の座を追われたものの、またチャンスはある。

朝乃山もついにこの地位まで戻ってきた。

出来れば今年中には大関復帰を目指してほしいところだ。

 

そして平幕上位には成長著しい熱海富士や、実力者の明生らが名を連ね、東3枚目に元横綱大鵬の孫、王鵬があがってきた。自己最高位だ。ここのところいい相撲が見られるのでこの地位でどこまで頑張れるか期待して見てみたい。

他に西5枚目に将来の横綱候補、大の里が一気にあがってきた。

先場所の横綱、大関戦が組まれたのはいい勉強になったと思う。

今場所も上位とは当たってくると思うので、大の里の相撲にも注目だ。

東4枚目の翔猿、東5枚目の翠富士など小兵力士も目立つ。

小兵力士が上位で暴れまわるのは痛快だ。活躍を期待したい。

平幕前半戦に登場するであろう中位以下では東西の十枚目に正代、御嶽海の元大関コンビ。

ここ数場所はチカラを出しきれていない感じだが、老け込むにはまだまだ。もっと頑張ってほしい。

関取になって躍進していた湘南乃海もここ数場所は負け越しが続いており、今場所は手の合う島津海と二人仲良く?前頭12枚目。

特にケガとかではないようなので、立ち合いをもっと磨いてにここから巻き返しを図りたいところだ。

 

そして、新入幕には伊勢ケ濱部屋期待の尊富士。

先場所新十両であったが、見事に躍進して1場所で新入幕を果たした。

新十両で翌場所に新入幕を果たしたのは過去には直近の遠藤を含めて6人しかおらず、7人目の快挙となった。

また、初土俵から所要9場所での新入幕は元小結・常幸龍と並んで1位タイとなっている。

この尊富士の相撲にも注目だ。

再入幕には、昨年十一月場所以来の錦富士、北の若、狼雅ら。

大奄美は令和四年七月場所以来の再入幕となった。

 

長年、幕内力士を務めたベテラン宝富士が十両に降下。同じくベテランの碧山、そして武将山も1場所で十両に逆戻りとなった。

後述する再十両の北磻磨と共に現役としては残る5人の「花のロクイチ組」のうち3人が奇しくも同じ十両にいるという形になった。昭和61年生まれなので37歳、今年は38歳を迎えるのでよく頑張っている。

友風も久々の幕内となっていたが、十両からの仕切り直し。

途中休場して十両3枚目に降下した北青鵬だったが、前述の通り引退。

 

今回、新十両は誕生せず、4人の再十両となった。

ケガで降下していた若隆景は昨年九月場所以来、對馬洋は昨年七月場所以来、ケガで休場していた

伯桜鵬は昨年十一月場所以来、1場所で戻ってきた。

そして北磻磨だ。

(※右上写真 新しい締め込みを披露する北磻磨)

実に令和二年九月場所以来、21場所ぶりの十両となった。

37歳6ヶ月29日での再十両は、昭和時代の大潮についで戦後2位の

高齢昇進であり、9度目の十両昇進は希善龍と並んで史上1位タイとなる。

 

東十両12枚目の琴恵光はあとがなくなってきた。

結婚したばかりなので、頑張っていかないとね。

同じく新婚さんの千代丸は残念ながら幕下への降下となった。

千代栄とどちらが降下か?というところであったが、

千代栄が皮一枚で残り、千代丸が幕下へ降下した形だ。

東の筆頭なので、1場所で戻れる可能性は高い。頑張らないとね。

天照鵬、勇磨、栃武蔵らも幕下への降下となった。

天照鵬は部屋が揺れる中、実力が発揮できるだろうか。

栃武蔵も部屋の関取存続がかかってきている。早く関取の地位を安定させ、更にその上を目指していかないとね。

 

幕下上位には筆者期待の阿武剋(おうのかつ)や二所ノ関部屋の嘉陽、立浪部屋の北大地らの名前が連なる。みんな新関取候補だ。

西3枚目の塚原も幕下上位での足踏みはこのあたりにして、そろそろ関取狙っていこうぜ。

 

事件勃発で騒がしい中での三月場所となるが、そういったものを吹き飛ばすくらいの相撲を期待する。

横綱の出場はどうなるのか、新大関・琴ノ若は大関として初優勝を果たせるか。

躍進の力士はどこまで活躍できるか。

ちょっとヤジの汚い大阪での三月場所ですが、いろいろ期待して待ちたい。

                    2024/2/29

(文・呼出 民男)