フォックスキャッチャー
劇場公開日
2015年2月14日
デュポン財閥の御曹司ジョン・デュポンが起こした殺人事件。
彼が結成したレスリングチームは、五輪メダリストの兄弟を迎えるのだが、
兄弟は、とんでもない悲劇に見舞われる。
1996年に起きたデイヴ・シュルツ殺害事件を題材にした重厚な作品。
1984年のロサンゼルスオリンピック。
レスリングで共に金メダルを獲得したのが、「マーク・シュルツ(チャニング・テイタム)」と兄の「デイヴ(マーク・ラファロ)だった。
「マーク・シュルツ」は、統合失調症を患っており、不安定な生活を送っていた。
一方、性格が良く人望も厚い「デイブ」は、家族にも恵まれ幸せであった。
そんなある日、「マーク」の元に、アメリカ三大財閥のひとつである”デュポン財閥”の御曹司「ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)」から電話が入るのだ。
彼は、大のレスリングフアンであった。
そして自らが率いるレスリングの精鋭チーム「フォックスキャッチャー」にマークを誘ってきたのだ。
最新鋭のトレーニング器具を備えた練習場に加え、安定した生活を保証されると聞いた彼は、心を動かされ、ついにはオファーを受けることにした。
チームの目標は、1988年のソウルオリンピックだった。
新しく「マーク」を擁する精鋭チームは練習を開始する。
その一方で「デュポン」は、コーチとしても優秀な兄「デイヴ」を引き入れようと画策する。
だが、「デイヴ」は金で動くような人間ではなく、YESとは云わない。
兄に対して、コンプレックスを抱いていた「マーク」は、自分を認めてくれた「デュポン」を信奉するようになるのだ。
しかしある日、「デュポン」は、フォックスキャッチャーの練習中に拳銃を取り出し発砲したのである。
「デュポン」の奇行の裏には、自分を認めてくれない「母ジーン(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)」への苛立ちや、大金を積んでも「デイヴ」を獲得できないもどかしさがあったのだ。
しかし、オファーを頑なに拒んでいた「デイヴ」であったが、彼もまた法外な報酬に、最後にはチーム入りに同意する。彼は、妻「ナンシー(シエナ・ミラー)」や子供を連れて、「デュポン」の元にやってきた。
ところが、面白くないのは「マーク」だった。
彼は、突然の兄の合流に居場所を失ってしまうのだ。
ある日、デュポンの母「ジーン」がフォックスキャッチャーの練習を見学に訪れる。
「デュポン」は、母への「甘え」なのか、ここぞとばかりに自分がいかに優れたコーチであるかを猛アピールする。ところが、母「ジーン」は、息子を無視するかのような素振りで、その場を立ち去るのだ。
「デュポン」は、明らかに母親に拗ねていた。
「デイヴ」は、そんな彼が煩わしくなっていた。さらに、彼を自分の上に立つ存在とは決して認めたく無かった。
一方、「マーク」は荒れて自暴自棄に陥っている。
「デイヴ」は、何とかやる気を出させて、アメリカ・レスリング代表の座に据える。
ところが、1988年のソウル五輪では、彼は敗退してしまう。
フォックスキャッチャーのプロジェクトはここに頓挫してしまうのだった。
そして「マーク」は、チームを去ることに決めるのだ。
その後も「デイヴ」は、「デュポン」の元でコーチを続ける。
だが、夢を捨て切れない「デュポン」は金の力で有力な選手をかき集めるのだ。
そして1996年1月、デュポンは自らが所有する私有地の離れで暮らすデイヴ一家のもとを訪ねる。
彼は、「今日は休日だよ。家族サービスの日だ。俺と家族の時間を邪魔しないでくれ」と言い放つ。
--その”ひと言”が悲劇のゴングだとは、彼には思いもよらなかった。
「デュポン」は一旦自宅に戻り、拳銃を手にすると、部下に車を用意するよう指示した。
そして、再び「デイヴ」の自宅に向かった「デュポン」は、彼の妻「ナンシー」や自らの部下の前で、「デイヴ」に向けて拳銃を数発発砲した。
「デイヴ」は即死、屋敷に立てこもった「デュポン」は、駆け付けた警察に逮捕されるのだった。
2010年12月、「デュポン」は服役していた刑務所で獄死した。
その頃、マークは総合格闘家へと転向していた--
彼は、なぜ人格を破綻するほど、このレスリングに、のめり込んだのだろう。
過剰に裕福というのは、「小人閑居して不善を成す」のことなのか。
残念ながら、財閥の御曹司ではない私には無縁の世界ではある。