現実は映画を超えた 韓国映画「ビニールハウス」 | あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

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 韓国でも話題沸騰の社会派ドラマがやって来ました。第59回大鐘賞映画祭主演女優賞受賞など2023年の映画賞を総なめにした話題作「ビニールハウス」(비닐 하우스)(イ・ソルヒ監督 2022年)です。名女優キム・ソヒョン渾身の演技は震えるくらいすごいです。

 

 ポン・ジュノ監督「パラサイトー半地下の家族」(2019年)は半地下という劣悪な空間に住む貧困家族の実態で話題を呼びました。そのディストピアぶりには驚かされました。しかし今回は「パラサイト」の世界がまるでユートピアのように見えるすごさ。もはや現実は映画を超えているのかと思わせます。

 

 

 

(内容)

 今回の住居はビニールハウス。農地に野菜などの栽培に立てられているあのビニールハウスです。

 

 ビニールハウスに暮らす女性ムンジョンの希望は、少年院にいる息子と再び一緒に暮らすことにありました。生活資金を稼ぐため盲目の老人テガンと、認知症を患う妻ファオクの訪問介護士として汗水垂らしています。ある日、ファオクは風呂場で突然暴れ出し、ムンジョンとの揉み合いで床に後頭部を打ちつけてしまいます。悪いことにそのまま息絶えてしまいました。予想外の展開に驚いたムンジョンは、認知症の自分の母親を連れて来て、ファオクの身代わりにします。盲目のテガンの目はなんとかごまかせたのですが、意外なところから事態は破綻します。さてどうなるのでしょうか。

 

 「パラサイト」同様に、一瞬の選択が取り返しのつかない破滅に追い込まれるサスペンスです。貧困、老人の孤独、認知症、介護など、現代の切実な社会問題に注目した社会派サスペンスです。住居問題、知的障害者の問題、生活費の高騰、少年犯罪など考えさせる問題の多い映画です。「パラサイト」の場合は肩を寄せ合う家族がいました。でもムンジョンの場合は頼れる家族もなく、悲劇性は一層強いです。こういう社会問題を扱いながらも娯楽性豊かなのが、韓国映画の素晴らしさですね。