『今夜は帰らない』そうメールを寄越した旦那。結局、その前に泊まった日から旦那が亡くなるまで一度もウチには泊まらなかった。
なかなかウチに泊まってくれない旦那に理由を聞いてみた。するとその時はまだ離婚の意思があるのでという返答。
かと思えば、どうするのがいいのか分からないというふうに言ってくることも。
旦那の中で色んな考えが交錯し自分で自分が分からなくなっていた旦那、それに振り回され続けた私だった。
時期は年の瀬、新年を迎えようとしていた時に旦那から言われた。
年越しそばを一緒に食べに行かないか?とのお誘いだった。ビックリし過ぎて言葉が出なかったが断る理由がないので了承した。
当日、大晦日。旦那は泊まってる会社から連絡してきた。今から向かうから近くになったらまた連絡すると。
まだ朝の9時くらいだった。そんなに早くやってる蕎麦屋さんは近くにない。言われた通りに準備して待って、旦那が自宅近くまで来たので連絡してきた。
車に乗り込む私。旦那の顔を見ると凄いしかめっ面をしていた。何かを話しかける雰囲気でもなく蕎麦屋まで向かった。
案の定、蕎麦屋の開店までまだ1時間以上あった。旦那から聞かれる。年越しや三が日の食べ物はあるのか?と。
全くなかったので何もないと答えると、それなら買いに行こうとスーパーまで車を走らせた。
相変わらずずーっとしかめっ面の旦那。下手な事を言って怒らせると面倒だと思い必要最低限の事しか話さなかった。
スーパーからの帰り道、赤信号に引っかかって車が停止した。そこでやっと旦那が口を開いた。
ずーっと痛いって辛くないか?今さらな質問だったが私なりに答えた。
最初はそりゃ辛かったけど、今はこれが当たり前だから別になんとも思わないと…。
どうかしたの?と聞いてみた。すると…。
今日は朝からずーっと痛くて薬も効かなくて辛い…と言ってきた。しかめっ面の原因はそれだったのだ。
それは…辛いね…そう言うのが精一杯だった。
そのまま蕎麦屋に行った。開店したばかりで一番乗りの私たち。
席に座り各々頼む。旦那に、近くにあったスポーツ新聞を取ってくれと頼まれ、それを渡すと私の顔を遮るように無言でスポーツ新聞を読んでいた。
2人の間に一切の会話はなく、まるでお通夜みたいな雰囲気だった。こんな雰囲気になるなら来なければ良かったと激しく後悔した。
でも…結果的にその時の年越し蕎麦が2人にとっては一緒に食べた最後の食事になった。
続く…