名探偵コナンから、平和な2人を走り書き

下書きなし、書き下ろし



それは、突然に



こんなに気まずい帰り道も久しぶり


隣に座った和葉は、窓の外に顔を向けたまま

こちらを向こうともせえへんのや


飛行機の中、みんな荷物をしまったり座った

りバタバタしとると言うのに、一足早く搭乗

したオレらは、席に着いてシートベルトまで

しとるが、会話するきっかけすら掴めへん


最近、出先まで行ったものの、事件絡みで何

も出来ひんまま帰るハメになるんがずっと、

続いていて


行く時ははしゃいでいた和葉が、帰りには明

らかに落胆しとると言うのが繰り返されとっ

たんや


見かねたオカンが、このままやったらオレが

和葉に捨てられてしまう、と、今回の遠方へ

のお使いを無理矢理予定してお膳立てしてく

れたんやけど


案の定、お使いを終えて、ほな観光でも、と

思うたタイミングで、事件に巻き込まれて、

更には何故か紅葉と伊織が現れてん


プライベートジェットで一緒に帰ろうと言う

のを何とか断って、振り切り空港で和葉を捕

まえたオレは、ギリギリやったんや


アイツ、伊織から連絡を受けたらしく、オレ

の分のエアチケット、キャンセル手続しよう

としとった所に滑り込んだからな


何か余計な事を吹き込まれたんやろうけど、


オレは和葉に顔向け出来ひんような事はして

へんし、むしろ何事も無くかわして来たから

オレとしては後ろめたい事は何も無いんやけ

どなぁ


和葉が行きに楽しみにしとった観光名所は、

ひとつも一緒に行ってやれへんかったばかり

か、土産を買うチャンスも無かったんや


帰ったら、オカンから説教は確実やし


ため息を吐きそうになって、慌てて止めた

和葉に、これ以上誤解させたくないしな


気付いたら、窓側のシェードを下げてしもう

てて、ガラス越しに表情を伺う事も出来ひん

ようになって


離陸が始まり、キャビン内のライトもあって

和葉の顔を見る事が出来ひん事に気付いた


よし


滑走路を移動し始め、揺れる機体

オレは、意を決して和葉の手を取って、指先

をしっかり絡めて握り締めた


「何処も連れて行ってやれへんで、すまん

でも、オレかて楽しみにしとったんや」


リベンジは必ずする

せやから、許せ


怪訝そうな顔をした和葉に、顔を寄せた


「約束や」


涙が滲む目尻に唇を寄せ、吸い寄せた


何するん、と抗議する和葉の唇を塞いだ時、

機体は空へと向かうて一気に上昇した


続きは家で、と言うオレに、唖然とした顔を

した和葉に言うた


家族もツレ達もみんなオレの気持ち知っとる

っちゅうに、何でオマエだけスルーやねん


って思うたんやけどな、考えてみたら、オレ

のそう言うところ、和葉だけ見てへんのやな

って


「せやったら、見てもらおうと思うてん」


これから、和葉が理解してくれるよう、毎日

手も繋ぐし、ハグもチューもする


和葉がもし、オレより好きなやつが居るのな

ら、教えてくれ


ちゃんと、勝負して、勝つし


真っ赤な顔して、あわあわしとる和葉を見て


不思議と腹が据わったオレは


よし、これからガンガン行ったるで!

と決意を固め、繋いだ和葉の手にチューもし

て、目を伏せた


この時のオレはまだ知らん


機内の様子を撮影されとって、到着後、オレ

がかっちり和葉の肩を抱いて歩く姿が報道さ

れる事になるとは