名探偵コナンから、平和×新蘭×CHを
過去作品改訂で


東西名探偵とスイーパーの遭遇_7仮題


第2章 オンナってやつは


(くっそー、和葉の奴)

自分の目の前で、何の躊躇いも無く他のオトコに
抱きついた和葉を見て、オレは我を忘れて発狂し
そうになった

余計な虫がつかないように、オレなりに大事に、
それはもう全力で大事にして来たつもりや

それやのに

オレの知らんところで、抱きあげられて運ばれ
た事でさえ、どうしようもなく許し難いのに、
オレの目の前で堂々と冴羽に抱きついた和葉に

オレは怒りを隠し切れんかった

ほなオマエはオレがキスさせろ言うたら、褒美
にさせてくれるんか?

オレが抱かせろ、言うたら、素直に抱かれてく
れるんか?

泣いてしもうた和葉に、触れてええんかどうか
躊躇するオレの目の前で、冴羽はあっさりと抱
きしめて、慰めた

一瞥された時の瞳は、マジで怒ってたし、その
瞳は、オレを軽蔑しとったのも十分、理解した

めちゃくちゃ、悔しかった

和葉の前で、オトコとしてのプライドをぐっち
ゃぐちゃにされたみたいで

思わず和葉をリビングに置いたまま、客間に引
き籠ってしもうたけど、今更出て行くのも何や
か恥ずかしくて、不貞腐れてベッドに転がった

「オメー、今回の外出の目的、すっかり忘れて
んじゃねーか?」

少し後から部屋に入って来た工藤は、吐き捨て
るようにそう言うた

「和葉ちゃんを天然に育てたのは、オマエだ
オマエが中途半端に箱入りにするから、あんな
危なっかしい面があんだよ」

それ、いい加減自覚、しろよな、と

言われなくても、もう気が付いてる

虫よけするたびに、オトコ達からは、オマエは
ただの幼なじみの分際で、何様なんだよ、とは
何遍も言われたし、時には殴られそうになった
事もある

オレなりに、大事にしてきたつもりや
ほな、どうすればよかったんや?

寄ってくる奴と付き合わせて、やっぱりオレの
方がええやろ?って言うんか?

そんなん、相手にも失礼やし、和葉も失礼やし
和葉も無駄に傷つくだけやんか

「ばーか、素直に、オマエが好きだって言えば
終わる話だよ」

オマエが好きだ
他のオトコの所になんか、行かないでくれって
言ったら済むだけの話じゃないか、と言う工藤

「それが簡単に言えたら、こんなに苦労、して
へんし」

くるり、と身体を反転させて、工藤に背を向け
て横になった

「だったら、和葉ちゃん、突然誰かに浚われた
としても、同じ事、言えるんだ?
オマエにとって、和葉ちゃんはその程度の相手
だったって事か」

「それとこれとは話が別や」

「いいや、別じゃないね」

工藤はやけに絡む

「あの冴羽ってオトコ、絶対に和葉ちゃんの事
を出逢う前から知ってた」

「何やて?」

思わず飛び起きたオレ

工藤はベッドに腰掛け、脚を組んで考えこんで
いた

「最初から、蘭に見せる視線と、和葉ちゃんに
向ける目線が全く違うんだ」

最初は気のせいかと思ったけど、今は確信して
いる、と

和葉ちゃんの父親を知っているだけではなく、
恐らく、和葉ちゃん自身を知っている、と

どこをどう思い返しても、オレが記憶しとる中
で、冴羽と遭遇したんはコレが初めてやし

他の連中も、今回初めて見た

オレが一緒や無い時の和葉と、遭遇、しとるっ
ちゅう事か??

和葉の口から、訊いた事は無いし、和葉の方は
初対面と言った様子やった

アイツは嘘は吐けん

と言う事は、冴羽の方が、一方的に和葉を知っ
とるっちゅう事や

「あぁ、オレもそう思う」

「それも、おっちゃんからその存在を聞いて知
ってると言うよりも、和葉本人をどこかで見た
か何かした感じや」

あぁ、そうだろうな、と言う工藤

(どう言う事や?)

おっちゃんには敵意を持ってる感じはせえへん
かったし、20歳以上やないと、射程圏外と言
うてたし

何よりアイツは多分、パートナーの香さんを、
愛しとる

オレのその勘は、外れてへんと思う

隙の無い身のこなし、あの体躯
冴羽の職業は、おそらくただの便利屋では無い

工藤には言えんが、新宿には、禁忌のエリアが
存在すると言う噂を警察で聞いた事がある

その一画で起きた事は、警察では解決出来ない
事件ばかりだと

密かにオレは、その禁忌に触れて、遭遇してし
もうてると言う予感がしとった

工藤の正義には反するやろうけど、世の中には
工藤の正義だけでは解決出来ひん問題も、仰山
ある

オレは、そう言う問題に、何度もぶつかっとる

犯罪者を庇おうと言う気は無い

過ちを犯したやつは、必ず償うべきやし、そう
やないとアカンと思うてる

でも、この世の中には、白か黒かで決着を迎え
られへん事件も山のようにあるのも事実、や

「オレらの仕事に余計な首、突っ込むな」

そう凄んだ時の瞳は、独特なダークアイで、
とても堅気の雰囲気では無かった

ただ、その手の業界人の匂いは全くせえへんし
ダークヒーローの香りもせえへん

でも、深淵を覗いてしまった人の匂いは、する

それは、香さんからも、冴子っちゅう例の刑事
からも、

もっと言うならば、姉ちゃんに言い寄っていた
あの金髪野郎からも、喫茶店の夫婦からも、同
じ匂いがした

喫茶店で、犯人が飛び込んで来た時の、ほんの
一瞬、あの場に居った連中の気で判ったんや

「探るなとは言われたけど、探偵としては、こ
れは探らねえワケには行かねえ」

「…やめとけ、工藤」

「は?」

「約束したやろ、触れ無いって」

工藤の瞳が厳しくなる

「工藤、また、同じ過ちを繰り返すつもりなん
か?今度は、この間みたいなラッキーは、もう
二度と無いで?」

オレも、工藤を見返した

「探偵やからって、人のプライバシー、何でも
かんでも暴けばええっちゅうもんや無い
今度、余計な真似したら姉ちゃんの事、確実に
巻き込む事になるで?」

「犯罪者を、見逃せって言うのか?」

「そうは言うてへん
その前に、冴羽達が、犯罪者かどうかもわから
んやろ?」

事件は起きてへんし、オレと工藤は、ピンチを
助けてもろうただけやし

「でも、あの攻撃技、絶対に素人ではねーぜ?
傭兵やってたとか言うならわかるけど」

「その可能性の方が、高いやろ
冴羽のあの乱闘の時の身のこなし、喫茶店のあ
のデカイマスターに、後、あの金髪」

元傭兵と言われれば、その方が納得、だ
殺し屋と言われるよりもな

工藤には言わへんけど、オレは、後者の匂いを
感じとる

犯罪現場を抑えん限りは、余計な事は、言えん
けどな

今日、赤色灯を追いかけたオレと工藤は、ちょ
っとヤバいエリアに突っ込んでしもうてん

新興宗教と、新興勢力のヤクザと暴力団と暴走
族の間みたいな奴らの合体版みたいな集団が起
こしたトラブルで

警察の中にも、おなじみの顔が無かったんも、
災いしたんや

警察からは、集団の一味と思われて、集団から
は、どこのよそもんが首突っ込んで来たかと思
われて

そこからは、追いかけっこや

とにかく逃げながら、工藤に馴染みの刑事達に
連絡させて、まずは警察の追手を撒く事を図っ
たんやけど

何か別の事件で出ているらしく、中々、連絡が
上手くまわらんで、追ってを半減させるだけで
も大騒ぎ

おまけに、工藤は攻撃には向かんから、接近戦
は、ほぼオレひとりで二人分をカバーしなけれ
ばならず、さすがのオレも疲弊して

そろそろヤバい、ってタイミングで、現れたん
が冴羽やってん

「若いのが2人揃ってこのザマかよ、現代っ
子はか弱くて困るなぁ」

そんなんじゃ、女の子、浚われちゃうよ?

笑いながら、よそ見しながら、平然と、軽々と
相手を倒して行く

武器も使わず、完全に、素手やった

確実に一撃で気絶させて行くので、どんどん人
の山が出来て、知り合いの刑事に電話していた
らしく、あっと言う間にその倒した奴らは回収
されて行ったんや

オレの言葉に、まだ腑に落ちない顔をしている
工藤に言った

これ以上、色々な方面に首を突っ込むのなら、
少しは攻撃力も身につけろ、と

暴力は好きや無いとか言うてる場合じゃないし
不可抗力で、闘わなアカン場面もある、と

「そんな時、姉ちゃんの、あの破壊力に頼るつ
もりで居るんか?そらアカンやろ」

まぁ、それは、と言葉を濁す工藤

「攻撃が向かんのやったら、防御を、覚えたら
ええ、和葉のように、合気道とかがええんと
ちゃうか?」

少なくとも、ここから先、オレらが直面するで
あろう事件は、より難解で、より複雑になる

首を突っ込むのを辞めへんと言うのであれば、
それなりの準備や覚悟が必要や

「悪い事は言わん、オマエはまだ色々な制約が
あるんやろ?自分の身体と、姉ちゃんの事を、
まず考えろ」

急に居なくなって、突然ふらりと現れて
姉ちゃんは、まだどこか疑心暗鬼みたいやし

また、いつ工藤が不在になるんかと、びくびく
しとるところもあるんや

そんなんオレでも見てたらわかる

「オレの事より、工藤、オマエかて姉ちゃんと
決着、つけなアカン事だらけやろ」

オレは、オレの手で決着はつける

そう言うて、部屋を出た

台所で水を飲んでる冴羽を見つけ、話があると
言うた

「オレは、いけすかないヤローと話すより、可
愛い女の子と話す方がいいんだけどなぁ」

と真顔で嫌な顔をされた

ついて来い、と言われて、オレは、車に乗せら
れてある屋敷に連れて行かれた

「なんじゃ、リョウ、オトコに鞍替えか?
わしゃ、可愛ええ女の子に逢いたかったんじ
ゃがなぁ」

ふぉっふぉっふぉっ

愉快そうに笑う老人の顔を見て、あれ?と思う

どこかですれ違った気がした
どこでや?

「まぁ、たまにはええやろ、こっちへ」

そう言うて、スタスタ歩く老人の後ろを歩いて、
部屋へといざなわれた


「君は確か、あのお嬢さんにくっついてた子
じゃな」


「覚えてなくても仕方無いか、なぁリョウ」

ふと、白衣のその老人の姿に思い出す

「あ?もしかして、和葉の手術ん時の…」

ほう、覚えておったか、と笑う老人は、自分を
教授と呼べ、と言うた

「あん時はなぁ、難しい手術だと言う事で、知
り合いに、手術立ち会いを頼まれたんじゃ」

で、リョウに運転させて、大阪のあの病院に向
かった、と言う教授

(あ、だから、和葉やオレは気がつかんかった
けど、冴羽の方は顔を覚えてたっちゅう事か)

「そら、偉い世話になったみたいで、すんま
せんでした」

「いやいや、あんな可愛いお嬢さんじゃ
少しでも傷跡、残さんようにしてやりたいと
ワシの知り合いがSOSして来ただけの事」

少しはようなったか?と言う声に、まぁ、とし
か言えんかった

和葉の身体には、右腕と脚にまだボルトが埋め
られとって、半年から1年後、また手術でそれ
を取りださなくてはならんのや

それだけやない

腕はキレイに傷跡も消えると、太鼓判を押して
もらえたけれど、脚の、足首付近にはどうして
も少し傷跡が残るらしい

さらに

「日常生活には、支障は無い程度には回復する
と言われたけど、無理すると痛みが戻るみたい
やねん」

強張る身体を、マッサージで解してやらんと、
かなり苦しい様子やねん

それも、いずれ、もう少し緩和されるとは言わ
れてんのやけどな

「そうか、やっぱり全部を回避する事は、叶わ
んかったんじゃな」

若い娘さんじゃったし、これから恋愛も結婚も
出産だってするじゃろうからって、みんなでな
身体の機能は出来るだけ回復するように努めた
んじゃけど

それでも、生命を繋ぎとめて、そこまで回復を
させるのが限界じゃった、言う事じゃ

後は、根気強くリハビリして、無理せんように
して、痛みとも付き合ってもらうしか無い現在
の医学では、これが限界じゃ

「でも、内臓には支障は無かったんじゃ
これはほとんど奇跡に近い」

じゃから、子作りに問題は無い

まぁ、もう少し身体が回復して、痛みを逃す術
を彼女が覚えるまで、待ってあげた方が、ええ
じゃろうけどな

ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ

「んなっ!」

思わず、自分が赤面してしもうたんが悔しいが
仕方無い

「まぁ、絶望するにはまだ早い
医学は日進月歩で進んでるし、リハビリについ
ても研究がどんどん進んでる」

まだ若いんじゃ、まだまだ改善するための余地
はあると、ワシは思うんじゃが?

まぁ、リョウには悪い事したな
可愛い別嬪さんの顔、直接は見られなかったし

その上、ワシの事を往復、車で送り迎えしたん
じゃから

「本当ですよ
可愛い子ちゃんには逢わせてもらえないし?
長距離運転手だわ、戻ったら香にどこでナンパ
してたんだってどやされるし」

でも、まぁ、借りはさっき返して貰ったんで
と笑う冴羽

「ほう、何してもらったんじゃ?」

「和葉ちゃんに、ハグしてもらいました」

まだ細いけど、将来有望なナイスバディだし
ちょっとだけ、頬にキスしちゃった、と言う
冴羽に、オレの怒りはMAXになる

「ええなぁ、ワシもしてもらいたい」

「それはアカン、アレはオレのや!」

ほほう、と言う教授は、ええのう、若いもんは、
と笑った

帰りの車の中で、オレはさらに衝撃を受ける事
になった

工藤には、絶対に言うな、と言われて知らされ
たのは

例の組織壊滅には、様々な機関が、複雑に絡み
あって作戦が遂行された
FBI,CIA,ICPOに公安、警察、検察、諸々や

ある種イレギュラーなチームが試験的に集合し
遂行された作戦で

オレと工藤だけが注目を浴びてしもうたんは、
その他の面々は、素顔を晒せへん業務上の都合
があったからやねん

もちろん、オレらにも守秘義務が課せられてて、
マスコミに言うてええ事、アカン事、事こまか
に決められてたんや

冴羽は、あの作戦の中で、動いていたらしい
…ある、特命を受けて

(おそらく、ヒットやろうな、と想像した)

せやから、最初からオレの事も工藤の事も、
オレらが連れ歩く幼なじみや家族ん事も知って
いたらしいねん

遠山さんは、元気にしてるのか?と言う冴羽に、
おっちゃんは元気に飛んで歩いてると返した

おっちゃんは、まだ、あの事件の後始末をする
ために、国内外を飛び回ってんねん

「そうか」

そう呟くと、無言で運転を始める

「あの先生から以外でも、和葉ん事、知ってい
たんやろ」

「いや」

「嘘吐いても無駄やで」

アンタん事、工藤が詮索せんようにしたるさか
い、交換条件で教えろと言うと、ガキのクセに
生意気だな、と笑う

「あぁ、知ってたぜ?
偶然だったけど、あの可愛い姿も、見た事もあ
るし?」

もっと言えば、オマエも見た事がある、と

「は?オレもか?」

「そりゃあ、彼氏でも無いのに、あんなにくっ
ついてりゃ、見かけるだろうよ、嫌でもなぁ」

オレの記憶の中は、可愛い子、キレイなお姉ち
ゃんだけでいいんだよ、と睨まれる

基本、野郎はお断りだ、と

(相当なオンナ好きやな、要注意人物やな)

「で、どんな偶然や」

全部を、偶然見かけたで片付けようとしたって
それはうん、とは言わせへんで

「ったく、オトコのクセに変に細かいと、可愛
い和葉ちゃんに、嫌われるぞ?」

渋々と言うか、面倒くせえな、と言う感じで、
冴羽は口をひらいた


to be continued