名探偵コナンから、平和×新蘭×CHを
過去作品改訂で

※ストーリー展開都合により、和葉ちゃん母は
不在の設定です


東西名探偵とスイーパーの遭遇_3仮題


「ヤローはそっちな」

そう言われて、客間に通されたオレと服部

さすがに、和葉ちゃん抱えて6階までの階段を
登り終えた服部はぐったりして、和葉ちゃんを
香さんに言われた客間へ運んだ後は、案内され
た客間のベッドに暫く伏せていた

ま、すぐに起きたのは、日頃の鍛錬の賜物なん
だろうけど

「簡単で申し訳ないけど、食べて」

そう言って、信じられない量の食事を出されて
びっくりしたけれど

何より信じられなかったのは、リョウの食欲だ

気持ち良いくらい見事な食べっぷり

「香さん、こんだけ食べてもらえたら、作り
甲斐があるやろ」

「そうだね」

和葉ちゃんと蘭は、驚きながらも嬉しそうな顔
で見ていた

まぁオレも服部も、食が細い方では無いものの
大食漢と言うワケじゃねーからな

食後のコーヒーも上手くて、蘭と和葉ちゃんは
ドリップのコツとか何かを香さんを捕まえては
訊きまくっていて

食の話題で盛り上がる女性陣を置いて、一服す
ると言うリョウに、服部は少し身体を動かして
おきたい、と言うと、屋上に案内された

適当なサイズの棒を借りて、無心に素振りをす
る服部を眺めながら、オレは何とは無しに転が
っていたテニスボールでリフティング

少し離れたところで、煙草を燻らせていたなと
思ったら、手すりに凭れて、真向かいのビルに
居るミックと何やらじゃれているリョウを見た

「ニンジャくんは、高校生らしからぬ体躯、
ダネ」

流暢だけどどこか変(きっとわざとだろう)な
日本語が、ビルの向かいから飛んで来た

素振りをしている服部は、上着を脱いでいる

あぁ、と思った

鍛えているものの、無駄な筋肉の無い締まった
体躯、肩と腕に裂傷の跡、腹に銃創

隠してはいるものの、手にも傷があるからな

「堅気の高校生、には見えないな」

リョウもそう言って笑った

「あ?あぁ、コレか?まぁ、確かに、世間一般
にようある傷跡ですーとは言えへんな」

服部は、汗を拭いながらこともなげにそう言う

「和葉ちゃんのあの脚、この間の?」

服部を振り返る事も無く、ミックの居るビルの
方角を見ながら、リョウが尋ねた

「…せや」

今度は腕立て伏せを始めた服部

「まだ、退院して半月も経って無いんだ」

オレがそう言うと、そうか、と言ったリョウ

「大阪の、本部長宅に、強盗が入ったと言う
ニュースを見たもんでね」

第一報では、居合わせた女子高生が重体だと
言っていたのに、そのうちその情報は不自然
なくらい掻き消えた

「親父が、警察が報道規制をかけたからや」

匿っていた毛利蘭の所在を明かさないため、
報道規制は速やかに、迅速に行われた

そして、幼なじみとはいえ、年頃の女子高生が
同級生の男の家で襲われたと言う話が興味本位
で騒がれないため

また、本部長宅の自宅には、大勢の警官が出入
りしていたタイミングだった事もあった

この件で、親父は進退伺を出したが、当時、
本部長宅を警護しとったんが、府警以外の他県
からの応援部隊やった事もあって、親父には何
もお咎めが無かったんや

「なるほどね、そう言う事か」

「カズハちゃんには、一体何が起きたんだ?
あの事件は、海外でも話題になってる
当然、君達の事もね」

ビルの向こう側でミックは窓に座って話かけて
て来ていた

服部は、腕立てを終えると、手すりに脚をかけ
腹筋を始めた

「オレも、工藤も、その場に居ったワケや無
いんや」

オレ達が凱旋した直後に起きた襲撃やった

おそらく、警備も手薄と言うか、みんなが油断
した隙を突かれたんやろ

「ただ、和葉だけは、警戒しとった」

出入りする警官の中に、そうじゃない人らが混
ざってる気がする、言うて

隠しカメラを服部邸内に設置して、出入りする
警察関係者の顔写真を毎日、府警の親父宛てに
送ってチェックしていたと言った

あの事件の夜

オレの部屋の隣で、オカンと姉ちゃんと一緒に
寝てたらしいねん

でも、オレの部屋から物音がした、言うて和葉
はひとり抜け出したみたいや

凱旋の報せを受けて、服部邸には来客やら何や
らが殺到して、オカンも姉ちゃんも連日対応に
追われて、疲れて寝入ってしもうたらしいねん

せやから、和葉が抜け出したんも気がつかんで
和葉と侵入者の争う物音で飛び起きたって

「ひとりで対峙したのか?」

「あぁ」

何て事を、とリョウは吐き捨てた
窓に腰掛けたミックも、まさか、と言う

「和葉は、相手がどれ程のモノか、知らんで
対峙したんや」

合気道や剣道の嗜みはあっても、オンナや

格闘技経験や、特殊訓練を経験した事のある
オトコ達を相手に闘えるには限界がある

そう言うと、服部は今度はうつ伏せになり、
背筋を始めた

「それも、相手は複数や」

簡単につぶせると思うた和葉が、案外抵抗した
もんやから、邪魔やと思うた男らは、投げ落と
したんや

…階下へな

「幸い、和葉は、意識朦朧としながらも長年の
クセで、受け身を取れた」

頭をかばえたから、骨折や打ち身程度で済んだ

それに、姉ちゃんやオカンが応戦する頃には、
さすがに騒動に気付いて、泊まり込んでた刑事
達も参戦したからな

「それでも、和葉ちゃんのケガは出血が酷くて
危なかったんだ」

オレが口を挟んだ

オレが大泣きしてた蘭から訊き出した
目覚めて、犯人達と格闘して、駆け付けた時

本当は、一瞬、和葉ちゃんが死んだと思ったと
蘭は言ったんだ

血の海の中で倒れている和葉ちゃんは、身動き
ひとつしていなかった、と

僅かな呼吸も途切れ途切れで、救急車で搬送さ
れる時も、不安で仕方が無かった、と

無言でトレーニングを続ける服部を見ていた

「オレと服部が駆け付けた時には、和葉ちゃん
は手術を終えてICUに居た」

何度も不安定な音とアラームが鳴り響き、生き
た心地はしなかった

それでも、服部は涙ひとつみせず、じっとその
様子を見守り、入室を許可されると、眠る和葉
ちゃんの手を握って目覚めを待っていた

トレーニングを終え、ストレッチを始めた服部
は、漸く口を開いた

「オレは和葉を信じてただけや」

「服部」

「和葉の傍を離れる時、約束したんや
オレの事、殺したくなかったら絶対に生きろ
何があっても、最後まで諦めるなってな」

どうしてもの時は、どうあっても生きられない
って時は、オレがオマエを殺すって言うてあった

「どっちか一方が生き残っても意味が無いねん
オレと和葉の場合は」

せやから、最後の最後まで、2人で生きる方法
を追いかける

「でも、どうやってもアカン時は、一緒にお陀仏
になるんはしゃーないし、ええかって思うてん」

話している内容は穏やかではないが、服部の顔は
恐ろしいくらいに穏やかで

これで告白はまだ、とか言うから困ってしまう

生死を握りあってるクセに、まだ恋人では無い
と言うのだから不思議としか言えない

服部はうるせーと言ったが…

「ノンノン、そう言うカップル、ボクもとって
も良く知ってるョ」

窓に座るミックは、そう言うと、リョウを見て
軽くウインクした

「「えっ??」」

「うるせーよ」

そう言うと、ガキははやく寝ろ、と言って、
ミックに後ろ手で手を振ると、一足早く室内へ
と戻って行った


眠りに落ちる直前、いつも夢を見る
目が覚めると、また、身体が縮む夢だ

でも、今日は不思議と見なかった

すぐ傍で、服部が爆睡しているからだろうか?

それとも

その夜の夢は不思議だった

オレ達みんなが、どこかの交差点で色々な方向
を向いて立っていた

今日、出逢った面々も、そして、もうこの世に
はいない面々も

その表情は見えないけれど

みんなが何かを見上げていた
それが何なのか

オレも懸命に見上げたけれど、まだ厚い雲が立
ち込めていて、その先は見る事が出来なかった

翌朝、蘭と和葉ちゃんが一宿一飯の恩義やと言
って朝食を用意してくれて、みんなで食べた後、
オレ達は香さん達に見送られてアパートを後に
したんだ

まさか、その夜、そこへまた戻る事になるとも
知らずにね

to be continued