名探偵コナンから、平和な2人を


2017/09/10(工藤の日)記念作品で描いた作品
を描き直し

名探偵コナンから、いつもの平和と新蘭コンビ
と、CHの遭遇してはならない面々が交差する
お話


東西名探偵とスイーパーの遭遇 1 仮題

序章 交差点


人生と言うのは、時として不思議な縁を運ぶ

探偵やって、小さくされて、いつしか大阪から
乗り込んで来るようになった服部と、その家族
や彼女と知り合うようになって

気がつけば、最初は1人遊びの延長のようだっ
た探偵稼業も、その難易度も規模も大きくなり

1番、調子に乗っている時に、オレは、あの組織
と接触しちまったんだ

今ならわかる

好奇心だけでは、踏み込んではならない世界が
この世の中にはある、と言う事を

自分の前を、蘭と和葉ちゃんが腕を組んで楽し
そうに歩いている

それを見守るように、いつでも手を差し伸べら
れる距離を保って歩く服部の背中も視界に入る

高2の終わり、急転直下、事態が動き、オレは
元の身体と生活を取り戻した

まだ無理は出来ないし、定期的に検査も受ける
し薬も飲んでいるけれど、漸く蘭の元へと正々
堂々、帰ることが出来た

まぁ、コナンの秘密は諸事情により、蘭にはま
だ打ち明けてはいないが

「どないした、工藤」

身体、しんどいんか?と言う服部が振り返る

「オマエ、むかつくくらい、背、伸びたな」

「あ?背?あぁ、せやな、この半年で一気に
伸びたんや」

和葉には、袴やら制服の裾出しが大変やって言
うて怒られたけどな

出逢った頃は、170cm半ばくらいで、同じくら
いの身長だったのに、もう奴は180cmを突破
したらしい

「これでもまだ、親父達には足りんのや」

口惜しそうな顔をした服部に、思わず苦笑する
しかない

大阪府警トップの親父さんと服部の関係性は、
うちの父息子の関係性とは少しだけ違う

超スパルタとも言える、厳しい対応にもかかわ
らず、底辺にはちゃんと愛情があるから不思議

それに

和葉ちゃんの初恋相手は、服部の親父さんらしく
服部以上に和葉ちゃんを溺愛している

しかも親父さんは、実父以上に心配していると言
うから驚きだ

息子が恋心を自覚したのも察しているらしくて
最近では和葉ちゃんを連れての遠出は、親父さ
んの方が躊躇するようになったと服部がボヤく

春休みに入る少し前、本格的な受験生生活を開始
する前にと、服部から相談を受けた

はっきりとした事は告げてはいないものの、
和葉ちゃんとはいい感じで来ている、と服部は
言っていた

「進路を考える時、オレにとっては、和葉との
事は、絶対に避けては通れ無いと思うんや」

これを機に、ちゃんと告白して、進路について
2人で良く話し合って最終決断したいと言う服部

実は、オレもその事を考えていたんだ

無事に蘭の元に帰れたものの、まだ日常生活には
色々制約もあって、完全に元通りと言うワケでは
なかった

それも、数年単位で治療は続く予定で、その間、
いくつかの禁止事項もあったりする

はっきり言うと、子作り禁止、だ

投薬治療を終えて、身体から毒素が抜け切るま
では、絶対にダメだと言われているのだ

相手にも、害を与えるリスクが高過ぎるからと

それだけでは無い
ディープキスも、当然NG項目に入っている

つまり、蘭と普通の恋人同士であればごく自然
と出来るそう言う事を、オレは、どれもする事
がまだ出来ないのだ

帰還して、数ヶ月は隠し通せても、さすがに年
単位で隠し通せるワケは無い

隠したところで、蘭を不安にさせるだけだしな

服部は、この事実を知っているし、実は、和葉
ちゃんも知っている

和葉ちゃんには、オレは、とんでもない負担を
かけてしまったんだ

あの組織との対決の直後、末端組織の残党の一部
が、オレと服部へ報復するために、蘭が匿われて
いた服部邸に乗り込んだんだ

真夜中の侵入者に気付いた和葉ちゃんが、乱闘の
末、大怪我を負った

蘭と服部のお袋さんが駆け付けた時には、和葉
ちゃんはもう、かなり危険な状態だったらしい

報せを受けて、オレと服部が病院に駆け付けた
時には、集中治療室に居た和葉ちゃん

服部は、和葉ちゃんが退院するまで、その傍を
離れなかった

最初、服部は認めなかったが、和葉ちゃんの身体
には、足首に小さな傷跡と、脚と肩に負担がかか
ると痛みが出ると言う後遺症が残されたのだ

だから、蘭と腕を組んで歩く和葉ちゃんは、実は
つい先日、杖を手放したばかりなんだ

今日は、リハビリと言う事で、杖無しでの外出

和葉ちゃんは、コナンの秘密に気付いていて、
灰原とも通じていて、オレや服部のフォローを
して、対決の時は色々と活躍してくれた

だから、オレが今、どんな治療を受けていて、
どんな制約を受けているか、知っているのだ

「工藤、ホンマに大丈夫か?」

「あぁ、ちょっと、考えごとをしていただけだ
から」

ならええけど、と言うと、また視線を前方へと
向けた

オレも、元に戻ってからちゃんと蘭に告白して
はいない

あの、ロンドンで思わず言ってしまってから、
ちゃんと告白していないのだ

服部が言うように、オレだって考えている

将来を考えた時、蘭との事は避けては通れ無い
と言う事も、わかっている

向日葵のような笑みを浮かべる和葉ちゃんと
それを優しい笑みで受けとめる蘭を見つめる

「あぶないっ!」

和葉ちゃんと蘭に突っ込むようにして、男がい
きなり、転がり込んで来た

服部が2人を抱き寄せ、かわすと、男に脚をひ
っかけて転倒させた

難なく服部が取押えると、背後から赤毛の美人
が追いかけて来た

「すいません!大丈夫でしたか?」

この野郎!と言って、服部が取押えた男には鬼
の形相を見せた美人は、服部や和葉ちゃん達に
は申し訳無さそうな顔をした

どこかに電話すると、すぐにパトカーが現れて
犯人は連行されて行った

「和葉!大丈夫か?」

蘭と一緒に騒ぎから少し離れた場所に立ってい
た和葉ちゃん

服部が近寄ると、和葉ちゃんの身体がぐらりと
揺らいだ

倒れ込んだ和葉ちゃんを抱き上げた服部に、先
程の赤毛の美人が声をかけた

「私の知り合いの喫茶店が近くにあるの!」

ついて来て、と言う彼女に、オレ達は急ぎつい
て行く事に

落ち着いた雰囲気の喫茶店内は、不思議と人が
少なく、静かだった

服部に担ぎ込まれた和葉ちゃんは、奥の席に横
にされて、蘭や喫茶店の女店主、先程の美人に
介抱されている

服部は、少し離れたところからその様子を不安
そうな顔で見守っていた

「ごめんなさいね、巻き込んじゃって」

槇村香と名乗った赤毛の美人
170cmはあるよな、と思える長身に色白な肌に
チョコレート色の瞳が印象的だった

「貧血みたいだから、少し休ませてあげて」

喫茶店の女主人は、そう言うと、奥からタオル
ケットを持って来ると和葉ちゃんに掛けてくれた

服部は、和葉ちゃんの手を握り、すぐ傍に座り
オレ達はその隣のボックス席に座った

「ごめんなさいね、本当に」

「いや、大丈夫や、和葉もちょおびっくり
しただけやと思うし」

香さんは、ひったくり犯を追いかけていたらし
くて、あの交差点に差し掛かかったと言う

便利屋をしていると言う香さんは、途中、どこ
かへ電話をかけに行った

「和葉、少し寝かせなアカンし、オレら飯でも
食うか!」

店の人にも悪いし、と言う服部に、気にしない
でと笑う女主人だったけど、丁度腹の虫が盛大
に鳴ったオレらの注文に応じてくれた

途中、買い出しから帰って来たと言う、規格外
に大きな店主と2人、オレらの注文を届けてくれる

「「美味い」」「美味しい」

オレと服部には、ちゃんと大盛りで届けられた
それは、意外にも美味かった

「でしょ?美味しいのよ」

そう言って豪快に笑う香さんは、オレらと同じ
大盛りをペロリと平らげる

「姉ちゃん、豪快やな」

「えへへ、つい💕」

美人だけど、チャーミングな人だと思った
くるくる変わる表情や明るい雰囲気は、どこか
和葉ちゃんに通じるものがある、と

「和葉?」

服部が抱き抱えるようにして、和葉ちゃんを起
こすと、そっと椅子に座らせた

寝かせた時、服部がリボンとゴムを解いていた
ので、和葉ちゃんは髪をおろしている

青白い頬をした和葉ちゃんの前に、規格外に
大きな店主が、どん、と置いた

「しっかり食え」

びっくりした顔をした和葉ちゃんは、ありがと
う、おおきにと言うと、とびっきりの笑顔を見
せた

「いただきます」

まだふらつく身体を、支えるように、隣に座る
服部と、差し出されたフレッシュジュースと
スープに手を出す和葉ちゃんを見て、香さんが
言った

「最近のカップルは、美男美女揃いね💕」

ぶっ、と和葉ちゃんが吹き出しそうになるのと
隣で服部が慌てるのを見て、オレと蘭は思わず
顔を見合わせた

案の定、ただの幼なじみや、と言う2人を見て
唖然としていた香さんは、すぐに笑い出した

でもお似合いよ?ねぇ、美樹さん、と言って

「ええ、とってもお似合い💕」

妖艶な人妻な顔もちらっとする女主人もそう
言った

和葉ちゃんも食べ終える頃には血の気も戻り
漸く、みんながほっとしたタイミングで、また
ガタイの良い2人のオトコが現れた

「「うわぁお💕モッコリちゃんがいっぱーい」」

「己らは、見境いが無いのか!💢💢」

どこから出たのか、和葉ちゃんや蘭に飛びかか
ろうとしたオトコ2人をハンマーで軽々と撃退
した香さん

服部は和葉ちゃんを抱き抱えたまま唖然として
その様子を見ていたし、オレも蘭を背に、呆然
とした

「もうっ!びっくりさせないでよ💢」

香さんは、2人には鬼の形相を見せ、オレ達に
は申し訳無い、と言う顔をした

「ところでカオリ、若い彼氏に乗り換えること
にしたの?」

イケメンだけど、タイプが違う、と笑う外国人
は、すっと蘭の手を取ると手にキスをした

「Is there love in the air?」
(これって、恋の始まり?💕)

そう言うと、端正な顔に妖艶な笑みを浮かべて
蘭に微笑む

テメー、何しやがる!💢と怒鳴るオレに被せ、り
ように、力強い声が隣から飛んだ

「What are you talking about?💢」
(何抜かしとんのや、ボケ)

流暢な発音に、オトコ2人が口笛を吹く

「へぇ、やるじゃん、西の名探偵」

黒髪の方のオトコが不敵な笑みを浮かべて服部
に言った

一気に服部の気が変わるのがわかった

「何や、おっさん💢」

和葉ちゃんを背に、隙の無い殺気を見せた服部
に、オトコはニヤリ、と笑った

「へぇ、中々いい目、してんな」

「リョウ!」

高校生相手に何、脅してんのよ!💢バカっと
言う香さんに、スパーンと頭を叩かれたオトコ
は、痛えっ、少しは手加減しろよ!と涙目で香
さんを睨む

和葉ちゃんは服部の背中から顔を覗かせてその
様子を見てクスッと笑った

その様子を見て、黒髪のオトコが、ほんの一瞬
だけ、頬を緩めた

(なんだ?アイツ)

香さんと、喫茶店の主人に抑えられたオトコ達
は、よく見るとエラいイケメンだ

1人は金髪の外国人で、モデルか?と言う容姿
だが、さり気なくしている手袋が気になる

黒髪のオトコは、スケベな顔をしていなければ、
きっと半端なくモテるんだろうな、と言う容姿
だが、何かひっかかるモノがあった

隙が一切、無いのだ
こっそり写真を撮ろうとしても、邪魔をされる
上、凄まじい視線で刺された

ミックと言う男は、ある海外有名紙の特派員で
あると言う名刺を差し出した

リョウと名乗ったオトコは、便利屋だと言う

パートナーのカオリにこき使われてるんだと
笑った

「あのなぁ、この平和な日本で暮らしていて、
ここ最近の時事ネタチェックしてたら、オマエ
らの事くらいわかるってーの💢」

ふんっ、とそっぽを向くリョウに、まだ警戒を
解かない服部

「あれ、もしかして」

香さんは今気がついたらしい

美樹さんと言う女主人も、あぁ、やっぱり、と
言う顔をした

「東の名探偵、工藤新一くん」
「西の名探偵、服部平次くん」

実物の方がイケメンねぇ💕と言われ、思わず
へらっと笑いそうになったオレらの背後から、
ひょっこり顔を出す

「毛利蘭です」「遠山和葉です」

かっわいー💕と言われ、へらっと照れ笑いす
る2人を引っ込めた

「何、東西名探偵揃い踏みで、また事件?」

コーヒーを淹れなおしてくれた女主人

「いや、今回は完全にプライベートや」

「そんなん言うても、わからんやん
アンタと工藤くんが揃うてんのやで?なぁ、
蘭ちゃん」

「そうだね、和葉ちゃん」

何やと?と言う服部を制した

「すいません、お騒がせして」

そう言うオレに、香さんらはぶんぶんと頭を
振った

「これくらい、冴羽さんと香さんの騒動にく
らべたらねぇ、ファルコン?」

「あぁ、そうだな」

「私とリョウの騒動は、参考にしちゃダメ
でしょ〜」

「そんな騒がしくした覚えねーぞ?
暴れるのは、香だけだ」

ばきっ、と言う音と共に、香さんの手がリョ
ウの頬にめり込んだ

「平次と工藤くんが揃うと、いっつも事件に
遭遇するんで、死神やっちゅうコンビ名が付
いてるみたいなんや」

「そうなんです」

死神ねぇ、と言って、香さんらは、何故かリ
ョウの顔を見ている

きゃあー、と言う悲鳴が外で響く

「「そう、こんな感じ(や)!💢」」

喫茶店の扉がバンっ、と開くと人が転がりこ
んできた

銃声と悲鳴が交差する店内

乱入して来たオトコとオンナにみんなが警戒
態勢になる


「もう、一体何なのよ💢」

待て!蘭!と思った時には遅かった

軽くオレを飛び越えて降り立った蘭は、驚き
固まったオトコに一撃喰らわせると、銃を叩
き落とし、さらに身体を翻すとその男を撃沈
させたのだ

その早業に、追いかけ乱入して来た警察も唖
然呆然

しまった、と言う顔をした蘭に、ど偉いセク
シーなオンナが近寄った

「ありがとう、蘭ちゃん💕」

助かったわ、と言うと、妖艶な笑みを浮かべ
店内を見回す

「あら、貴女は」

「さ、冴子さん?」

服部の背中に居た和葉ちゃんがそう言った

すぐに外から刑事達の声が飛び交う

「ゴメンなさいね、お騒がせして💕
あ、美樹さん、この子達のお代と修理費、私
にツケておいて」

リョウ、香さん、オイタはダメよ〜💕
未来ある青少年の前ではねっ💕

バイバイ、と投げキッスをして去って行った

唖然としている間に、嵐のように去って行く

「ファルコン、今度はどこに行く?」

「そうだな、冴子にはいくらか盛って請求し
てもお釣りが来るだろうからな」

喫茶店夫婦はそんな会話をして、ため息を吐
いてるし、香さんらは、冴子と言う先程の女
の件で言い争いをしている

何なんだ、ここは?

絶対に、堅気では無いと確信した
先程の悲鳴と騒ぎにも、乱入されてからも、
気を乱した人がひとりも居ないのだ

ミックも、リョウも、喫茶店夫婦も

何者なんだ?

「You're so awesome! 
You stole my heart 💕」
(君ってサイコー!
君にハート💕を盗まれたよ)

はっ、として振り返ると、跪き、蘭の手の甲に
恭しくキスをしようとしているミックの姿が
見えた

「だーかーら、蘭はオレのだっつーの💢」

「Are you doing that on purpose?💢」
(アンタのそれはワザとか?💢)

オレが蹴りを入れるのと同時に、服部がおし
ぼりを投げつけた

「ミック、さん?蘭ちゃんに蹴り入れられる
前に離れた方がええよ?」

服部が暴れ出さないよう、腹に腕を回して抑
えていた和葉ちゃんが言った
蹴られたのが蘭ちゃんだったら、今頃ケガし
ている、と

「蘭ちゃんは、何者だ?冴子も知り合いみた
いだけど」

「和葉ちゃんも、冴子さんと知り合い?」

蘭は、父親が元刑事で現在は探偵だと言う事
と、幼少期から空手をやってる事を話した

和葉ちゃんも、父親が府警の刑事部長である
事と、合気道をやってると言う

「オマエ、ホンマは剣道も出来るやろ?」

「え、和葉ちゃん、剣道も出来るの?」

それは初耳だった

「チビの頃は一緒に練習しとったし」

服部はそう言うと、どさり、とソファーに座
り込んだ

「で、和葉」

「な、何?」

「オマエは、あの姉ちゃんとどこで知り合う
たんや?」

オレの記憶には無いけど、と
服部は、厳しい視線で和葉ちゃんを見た

和葉ちゃんは、ちょっと困った顔をしてから
ため息を吐いた

「野上冴子さんは」

お父ちゃんの、お見合い相手や

「「「「「冴子(さん)が⁉︎」」」」」

「「「お見合い⁉︎」」」

ごちゃごちゃな喫茶店は、さらにごちゃごち
ゃな雰囲気に包まれた


to be continued