名探偵コナンから、平和な2人を

走り書き


走る



あぁ、こんな時に限って、何でや

ホンマ、ついてない


必死に街を駆け抜けて、病室に飛び込んだ


あ、あれ?


ベッドの上で病衣を着てはいるものの、

しっかり座って起きている


意識不明の重体と聞いて、必死に走って

来たオレは、状況が全くわからへん


へえじ?と言う声に、腰が抜けそうになる


が、取り敢えずは意識、あるらしい様子

だが、いつもはせえへん消毒薬の匂いに、

布団を捲った


いきなり背後から扇子で殴られた


「何をいきなり襲ってんねん!あほっ!

物事には、順序って言うのがあるやろが

まずはちゃんと許可を得なさい!」


真っ赤な顔をした和葉を前に、オレは汗だ

くのまま、オカンに説教を受けるハメに


オロオロする和葉は、学校帰りに事故に遭

いそうなベビーカーの親子連れを助けた時

に、ベビーカーの下敷きになったらしく


脚を骨折してもうたみたいで、転倒した所

がアスファルトやった事と、頭も少し打っ

たから、大事をとって、一晩入院すると


幸い、赤ちゃんと子供は無事やって言うて

先程まで、赤ちゃんの両親がお見舞いに来

ていたとか


「和葉ちゃんが搬送された時、意識不明や

ったんはホンマの話や」


嘘は吐いてへん、と言うオカン


明日退院すると言う和葉に、今夜は付き添

うようにと言うて、さっさと帰ってしまう


個室でシャワーもあると言うので、借りて

補助ベッドに座り、和葉の話し相手をする


「ホンマはね、怖かったんや

目が覚めたら、いきなり病院やったし」


緩やかな傾斜がある道で、ベビーカーの中

の赤ちゃんが身を乗り出してしまい、手を

引いていた上の子が転びそうになったんを

母親が引き上げた一瞬やったと言う


和葉は、助けなきゃの一心で走ったと言う


「オレも和葉も走ってばっかりやな

まぁオマエは暫くは大人しくせんと」


大人しく、が一番難しいわ、と嘆く和葉を

宥めながら、過ごす時間は平和な時間


まぁ、痛みに苦しむ和葉の気を紛らわせる

ために、オレは置いて行かれたんやろなと

は思うたけど


ケガはしてしもうたけど、命は無事で

ホンマに良かったと思う


早よようなれや、和葉


オレはそっと呟いた