名探偵コナンから、平和な2人を
過去作描き直し




服部家には、様々な逸話があるが
その殆どが、事実である事を

実は、多くの人は知らへん


[chapter:CASE 1]


「おばちゃーん!居る?」


慣れ親しんだ幼なじみの家

もちろん合鍵も持ってるし、留守番頼まれる事
も多いけれど、一応、礼儀として声をかける

誰も居らんの?と思うくらいに静かな邸内に、
「お邪魔します」と言うてあがったんやけど

ひいいっ!!((((;゚Д゚)))))))

思わず飛び退いて、お届けもんに持って来たお
重をひっくり返しそうになった

せやかて、フルメンバー、全員、居るんやもん
おっちゃんも、おばちゃんも、平次も

超〜険悪なムード満載で、みんな揃ってこめか
みに「💢」が浮かんでんの


「な、何や、お取り込み中みたいやから、私は
ちょっと、出直して来るな」


ジリジリ後ずさりして、バックダッシュで逃げ
ようとしたんやけど

「待ちなさい、和葉ちゃん」
「「待て、和葉」」

3人同時に声が飛んで来た

「和葉ちゃんに、ジャッジしてもらいましょ」
「「せや、和葉、オマエが決め」」

???

さっきから、父と息子の声がユニゾンで揃って
るんやけど、気のせいやろか??

そこへ座れ、と指差された位置に、おそるおそ
る、ちょこんと座ってみる

それまで三角形になっていた構図が、四角形に
なったなぁ、なんて暢気に構えていた私の前に
ばさっ、と大量の写真の束が置かれた


「んなっ!なんやのん!コレは!?」


思わず、立ち上がってしまうほどに驚いた私


「一体これはどう言う事なんか、説明、しても
らいましょか?」


おばちゃんは、すっかり夜叉の顔

べっぴんさんやから、怒ると更にオーラが出て
何か妖艶で、めっちゃ凄味があんねん

おっちゃんも、平次も正座して、何やようわか
らんけれど、ちょこんとお座りしてるみたい

どっちが説明するかで、無言で押し付けあいを
しとる2人に、私は、早うせんとおばちゃんの
怒りが頂点に達すると、焦りまくった

おばちゃんから、消しようもない怒りのオーラ
が立ち上るのを見て、パニックになった私は、
思わず立ち上って叫んでしもうたんや

「どっちでもええから、さっさと話して!!
潔く白状しいやっ!!」

思わず叫んでしもうた後で、しもうた!と焦る
けれど、おばちゃんは、よう言うたと笑う

「和葉ちゃんの言う通りやわ
ホンマ、情けない人達や」

今更、浮気のひとつやふたつで、いちいちガタ
ガタ言うつもりもありません

まぁ、当然、その生命はいただきますけどなぁ
結婚した時の、約束やし?

浮気したら、服部家所有の真剣のうち、どちら
か好きな方で始末してええ言うて、お義父さん
とお義母さんから、真剣の扱いもきっちり教え
てもろうてあります

毎年、真剣を稽古しとるよって、教えてもろう
た腕前はしっかり維持しとるさかい、安心し?

「で、平蔵さんはどっちの真剣がええです?
それとも、私が選んでええのかしら」

それと、平次、死ぬ前に言いたい事があるなら
今、この場でさっさと言うたらええわ

平蔵さんと平次、どっちを先に始末しようか、
どうやら私は今から悩まなアカンみたいやから

すっと立ち上がったおばちゃんに、飛びついた
んは、もう殆ど条件反射やった

「おばちゃん!待ってや!!私、まだ話、何も
聞いてへんし、判断してへんよ?!」

まずは、この証拠物件について、事情聴取から
最終ジャッジは、話を聞いてからや、な??

懇願する私に、おばちゃんは甘い

和葉ちゃんがそう言うんやったら、まずは話、
聞かせてもらいましょか?

ピシッと座り直したおばちゃんに、声も上げら
れない程にドン引きしとったおっちゃんと平次
が、慌てて座り直した

「まずは平次、アンタからや」

「は、オレ?親父からやろが」

「煩い!アンタがまずは話すんや
平次とおっちゃんには、選択権は無し」や

ぶつぶつ文句を言いながらも、私の隣に座って
いるおばちゃんを見て、平次は表情を改めて話
を始めた

最初は、恐る恐る喋っていた平次は、案の定、
途中から「超ノリノリ」で話してくれた

私とおばちゃんの怒りのボルテージがどんどん
上がり、おっちゃんが、どんどん紙みたいに真
っ白になって行く事にも全く気づいてはいない

ペラペラ、ペラペラ、綺麗なお姉さんがたくさ
んいるお店で、どれだけチヤホヤされたか、ど
れだけモテたか、まぁ、ようけ喋る平次

「は?お父ちゃんやない、コレ?
こっちは、工藤くんやん!蘭ちゃんのお父ちゃ
んも!!」

平次の武勇伝を聞き流し始めた私は、写真の山
の中に、あってはならん写真を見つけた

写真の山から見つけた一枚を握りしめ、私は平
次の話を手で制して、すぐに、珍しくこの場に
居らん、お父ちゃんに電話した

今すぐ服部邸に来ないと、お父ちゃんが大好き
な、東都で頑張ってるお母ちゃんには二度と会
わせへんからね、と言うと、あっと言う間に現
れたお父ちゃん

「お父ちゃんは、そこや」

異様な空気に、お父ちゃんが静かにおっちゃん
の隣に座る

私は一枚の写真をその前に叩きつけた

「説明、してもらいましょか?」

お父ちゃんは、オロオロし始めたし、完全に目
が泳いでる

「わかった、もう何も言わんでええわ」

私は振り返り、おばちゃんに言うた

おばちゃん、世の中には、かっこええオトコの
人らが仰山居る店もあるらしいで?

「せやなぁ、まぁ、そんなとこ行かんでも、和
葉ちゃんにはええオトコ、沢山紹介してあげら
れるしな」

まずは、おばちゃんとデートして来ようか?

「請求書は、全部、平蔵さん宛てにしておきま
すよって、負担金の按分は、皆さんでどうぞ」

さ、行きましょか

私は、おばちゃんに促されて、立ち上がった

「お父ちゃん
お母ちゃんにバラされたくなかったら、おっち
ゃんと平次、ちゃんとしばいといてや?」

せやなかったら、お父ちゃんも家に入れへんし

私はちゃんと、証拠の品を持って、おばちゃん
の後を追った

和葉!と言う平次に、にっこりと笑う

「証拠が大事」なんやろ?

平次の大事な証拠や、私がちゃんと、大事に、
保管しとくさかい、安心してや

あ、そうそう
蘭ちゃんと蘭ちゃんのお母ちゃんのところにも
報告せなアカンね

工藤くん、余計な店に連れて行った事について
蘭ちゃんから鉄拳制裁、あるかも知れへんから
遺書、書くなら準備しとった方がええよ?

まぁ、「ただの幼なじみ」として、線香の一本
くらいはあげさせてもらうな?

ほな、さいなら

あわあわ言うて、青くなったり赤くなったり、
ギョッとする顔色の平次と

オマエのせいやで?と責任の押し付け合いを始
めたお父ちゃんらを服部邸に残して、私とおば
ちゃんは、さっさと服部邸を後にした