一番最初に下書きしたお話を見つけたので、こち
らを改めて描き直してみます  


Start line-02 @平次side


部活を終えて帰ろうとした時、和葉と一緒に帰っ
たはずの和葉の友達を見かけた

まさかアイツ、1人で帰っていないだろうなと
に不安になって携帯を鳴らしたけれど、電話には
一向に出えへん

慌てて走って自宅に向かう途中の公園で、急発進
する黒いバンとすれ違った

嫌な予感がして先を急ぐと、倒れている小さな男の子の姿と

黒いライダースーツを着た男がセーラー服の女に
馬乗りになっとる姿を見つけた

飛びかかり、ライダースーツの男を引き離してから渾身の力で殴りつけ、一気に制圧した

防具を入れていた巾着の紐を外して男を縛り上げ
て道端に転がす

「和葉、しっかりしろ、和葉!」

全く意識の無い和葉を、慌てて脱いだ学ランに包
み、起き上がって来た男の子を片手に抱いた

「お姉ちゃん、お姉ちゃんが」

「大丈夫や、大丈夫やから」

ひっくひっくと泣き出した男の子を片手に、全く
意識を取り戻さない和葉を片手に、オレは救急車
の到着を待つ

男の子には、大丈夫やと言うたけれど、焦ってい
たんや、ホンマは

和葉の首にはしっかりと締められた跡がくっきり
しとったし、抵抗したんか胸元も開かれとって、
白い肌には血も滲んでんのがちらっと視界に入っ
ていたから

脚にも擦り傷やら引っ掻き傷のようなもんもあっ
たんや

到着した救急車に乗り込んで、病院に向かう車内
でも、和葉は目を覚まさへんかった

男の子を病院の職員と駆け付けた警官に預けて、
オレは和葉に付き添うた

和葉は診察室から手術室へ搬送されてしもうた

「上腕に骨折があって、ボルトで固定した方が早う治るさかい」

女の子やし、傷跡も目立たんようにすると言う医師に頼んで、ストレッチャーを見送った

駆け付けた親父には殴られた
何遍同じ過ちを繰り返すんやって

おっちゃんは、約束を破ってひとりで下校した和葉が悪い、平ちゃんの部活終わりを待つか、静さ
んに連絡すればええのを、勝手に帰ったんやから

そう言うたけど
オレは一発殴られた方がマシやった

オレも、油断しとったんや

今日は念押し、せえへんかったから
せやから、和葉も油断したんやと思う

手術が終わり、医師が説明のためにとおっちゃんを呼んだ

「平ちゃんも、来いや」

おっちゃんに連れられて、オレは一緒に医師から
の説明を受けた

右腕上腕部の複雑骨折はボルトで固定手術をし、
同時に右肩に10cm程縫合したことを手短に説明
された

首筋に強く締めあげられた跡と、鎖骨から胸元に
かけて、後は脚にも強く引っ掻かれた跡がある事
も知らされた

「身体に受けた傷もそうやけど、心に受けた傷も
ケアした方がええと思うんやけど」

カウンセリングを受けさせた方がええかもと言う
医師に、おっちゃんは意識を回復した娘の様子を
見て決めると言うた

オレは、医師にこれから先、気を付けるべき事や
注意点を聞いた

「悪いけどオレ、暫く仕事で和葉の側には居られ
へんのや」

嫁さんも今、特捜の手伝いに飛んで歩いてて、こ
っちに来られへん

「大丈夫や、オレとオカンで和葉に張り付いとる
さかい」

でもおっちゃん

ホンマに、すんませんでした
二度と同じ間違いはせえへん、約束する

そう言うたオレをじっと見た後、おっちゃんは笑
うたんや

「せやなぁ、そう何度も失敗されたら、いくら平
ちゃんでも、これ以上預けられへんからな」

頼んだで?

そう言うて、おっちゃんは去って行った

和葉の運ばれた病室に向かうと、オカンが目を覚
ました和葉と一緒に居た

「へーじ」

ハスキーボイスの和葉は、ベッドに横たわりまだ
青白い顔をしとったけど、思うたより元気やった

家に荷物を取りに行くと言うオカンを見送って、
オレは和葉を寝かせて、自分も椅子を側に置いて
和葉が横になるベッドの端に肘をついた

和葉が、ポツリ、ポツリと学校を出てから、事件
に遭遇するまでの事を説明してくれた

オレはそれを、ちゃんと録音する

何遍も繰り返し証言させるんは、嫌やったからや

襲われた時の事も、涙を零しながら、ちゃんと全
部を証言してもろうて、オレはそのコピーを外で
待機しとった刑事に提出した

「すまんな、平ちゃん」

後は任せてや、と言う刑事に、捕まった犯人は、
今、大滝ハンが取り調べ中やと言われた

逃げた仲間は、みんなが追うてると

ホンマは、オレも犯人とっつかまえに行きたい
でも、さっき、おっちゃんに言われたんや

刑事は、身内の事件を追う事は許されへん
どんなに苦しくても、仲間を信じて待つしかない
って

そして、犯人を追うだけが仕事やない
時には後方支援に回る事も、大事な仕事やって

おっちゃんも、同じや、言うてた

和葉をあんな目に遭わせた犯人、オレかて追いた
いわって

おっちゃんは、和葉の事件を追われへんように、
別の事件を押し付けられてんのや

その心情を思うと、オレは何としても和葉の側に
居て、和葉のケガが回復するまで見守って行かな
アカン

おっちゃんの分も、しっかりな

おっちゃんには、和葉から証言を取った内容を
電話で報告して、和葉の声も聞かせてやった

「お父ちゃん、頑張ってな」

そう言うて笑うた和葉に、電話から嬉しそうな声
がした

「平ちゃんか?」

和葉には、取り敢えずカウンセリングは不要や
そん代わりに、しっかり寝かせて食べさせとけや

そう言うたおっちゃんは、後はよろしゅう、と言うて、電話を切った

嫌な話も終えて、後は和葉と2人、他愛も無い話をして、和葉がうたた寝を始めるのを待った

眠り始めた和葉の布団を引き上げてやって、オレ
もベッドの端に頭を預けて和葉の眠りを見守った


★★
Start line-02 @和葉side


目を覚ました時、私はおばちゃんに叱られた

絶対、ひとりで帰ったらダメってあれほど
おばちゃんが言うたでしょう!」

「ごめんな、おばちゃん
心配かけてもうて

どうして連絡、くれへんかったの、と言うおばちゃんに、最近あれこれと何かあるたんびに迷惑を
かけてしもうてるから、悪いと思うてん、と言う

「遠慮する仲やないやんか
私と和葉ちゃんやで?」

おばちゃんはそう言うと、私の髪を撫でてくれた

暫くして、平次が来て、おばちゃんと交代した

平次は、私に事情聴取を受ける代わりや言うて、
事件の話をちゃんと全部聞いてくれて、その音源
を刑事さんに渡すと、後はずっといつも通りで

平次は何も言わなかったんやけど、絶対に自分を
責めているとすぐにわかった

平次が悪いんとちゃうねん

私が、油断しとったんや
大丈夫、ってな

それに、私がケガしたんは平次のせいや無いし

男の子が無事やと聞いて、ほっとした

ご両親に連れられて、お見舞いにも来てくれた

めっちゃ可愛ええ子で、大したケガも無かったと
聞いて、ホンマに安心したんや

私はそん時、初めて知ったんや

意識が無い私と、男の子と、平次が両手に抱えて
守ってくれた事を

男の子が、教えてくれたんや

兄ちゃんが、大丈夫やって言うて、ぎゅーってしとってくれた、と

せやから、怖く無かったって

抱っこされて、病院に搬送されて、診察室に入る
まで、側に居てくれたって言うてた

「お姉ちゃんの彼氏、めっちゃカッコええやん」

にかっと笑うたその子を前に、私と平次が慌てた
のは言うまでもなく、面白おかしくおばちゃんに
からかわれまくったんも言うまでもない

でもな、慌てていたんやけど、平次、否定はせえ
へんかったんよ

そんなん初めてやったから、私、びっくりしてし
もうてな、私も否定、出来ひんかったんや

to be continued