名探偵コナンから、いつもの平和ではない平
和な2人を
※設定が原作/映画設定を無視してます※

ふたりは二人 -3

制服も夏服になった頃には、もうすっかりと
家にも学校にも馴染んでしもうた和葉

和葉が好きな男っちゅうのが気になったけど、
オレはとにかく、和葉と隔たれていた時間を
取り戻すべく、バイクに乗せてどこにでも行
ったし、よう一緒に遊びもした

好きな音楽、映画、食べ物

違うところもあれば、結構似てるところもあ
ったりして
特に、和葉の料理の腕前は、オカンのコピー
みたいやった

「そらそうや、おばちゃんにずっと遠隔でい
ろいろ教わってたんやもん」

英国でも、大阪で食べた味が忘れられへんか
ったんやー、と言う和葉は、オカンとは工藤
のオカン経由で連絡を取っていたらしく

こと料理に関しては相当教えてもろうた、と
笑っていた

実際、オカンが居っても居らんでも、服部邸
の食卓にはそれなりに料理が並ぶようになっ
とるし、宴会なんかの時は、オカンの力強い
助っ人にもなっとる和葉やった

「ほなオカン、何でオレの手紙は握り潰した
んや???」

意味、無いやん、と思うたんやけど
その辺は深くは追求せん事にしたんや

大事なんは、今や、今、と思うてな

「和葉」「平次」と呼び合うせいか、学校で
も早々にカップル扱いされたけど、オレが特
に否定せんかったせいか、今となってはもう
騒ぐやつも少なくなって

工藤や姉ちゃんと仲がええ和葉のおかげで、
オレも心置きなく探偵業にも力を入れられる
ようになった

ただ、マスコミへの露出は、意図的に減らし
ていたんや

和葉の事、目をつけられると困るからな

それに、元々興味本位の取材が好きやない

プライバシー根ほり葉ほり聞いておいて、そ
のくせ言うた事とちゃう事を平気で載せるそ
の手法が嫌やねん

怒涛の前期が終わり、試験も終わって、楽し
みにしとった夏休みが来た 

夏祭りに一緒に行きたい、と言われていた

オカンがそれを聞いて、張り切って浴衣を新
調したのも知っている

終業式を終えて帰宅したオレと和葉は、半ば
強制的に着替えさせられた

紺地に向日葵の柄の浴衣をしゃっきり着こな
した和葉は、髪を結い上げていて、普段より
ずっと大人っぽい

子供の頃は、金魚みたいなふわふわの帯をし
て、色違いの揃いの浴衣着て飛んで歩いてた
んやけどなぁ

オカンには、再三、必ず無事に連れて帰れと
念を押されて、祭りの会場へと向かうたオレ

10年振りの夏祭りにはしゃぐ和葉を連れて、
わたあめだ、金魚はダメや、とか大騒ぎをし
ながら一緒に歩いた

オレ自身、夏祭りに最後に来たんは、中3の
時やった

当時、男女のグループで祭りに来るんが流行
しとって、オレは晃が翠に告白したいと言う
のを知ってて、付き合いで来たんや

ところが

晃とオレが揃うんやったら、ナンパがうまく
行くかも知れへんと騒ぎ出したやつらに利用
されて、偉い目に遭ったんや

他校生が仰山来て、一緒に回ろうとか色々言
い出して、晃も告白どころやのうなってしも
うて

更には、オマエらちゃらやらして目障りやと
いんねんをつけられて、あわや乱闘沙汰にな
りかけてん

オレと晃と翠は何とかみんなを撒いて、逃げ
帰ったんが最後やった

晃は無事、翠を送り届けた時に告白して、彼
氏に昇格したんやけどな

オレは特に彼女が欲しいとかも思うてへんか
ったし、探偵として動き始めた頃やったから、
そっちの方に夢中やってん

告白はようされたし、その中には気になる子
が居らんかったとは言わへん

でも、何やOKしたいとは思わんかったし、試
しに付き合う言うんも嫌やってん

今になって思う
自分の気持ちに従って来てよかった、と

翠に予言された通り、この数ヵ月でオレは完
全に、和葉に惚れてしもうてたからな

付き合うんやったら、和葉がええ

そう思うようになっとったんや

「きゃっ」

どん、と誰かとぶつかったらしく、和葉が尻
もちをついた

大丈夫?ゴメンね、と手を取ろうとした男の
手をのけて、オレが手を出した

お、おおきに、と言うて重ねられた手は、も
う幼い頃の小さな小さな手ではない
女の手やった

危ないから、と、腕に手をかけるように言う
て、花火が見やすい場所まで歩いた

浴衣の襟足の艶っぽさ、暗がりでもわかる、
滑らかな肌と大きな瞳

もう、どんぐりの背比べをしとった頃の子や
ないと言うのが、少し寂しくもあり、嬉しく
もあった 

どーん、どーんと打ちあがる花火を見上げる
キレイやねぇ、と笑う和葉に言うた

オレと、付き合うてくれへんか、と

え?というて驚いた顔をした後、一気に真っ
赤な顔をした

「…平次、彼女が居るんとちゃうの?」

「は?」

せやかて、晃くん達が言うてたから、という

??? 

アンタに、好きな人が居るって、と言う和葉
を、オレはびっくりして見ていた 

「それ、オマエや
それ言うんやったら、工藤らに聞いたんやけ
ど、オマエが好きなやつって誰やねん」

オレ、そいつと勝負、せなアカンやろ?

「…それは、無理やと思う」

「何でや」

「せやかて、アンタやもん、10年前の」

そう言うと、俯いた和葉

オレ??10年前の???

「それは、10年前のオレの方がええって事な
んか???」

「ちゃうって、どっちにしろアンタやから、
勝負、出来へんでしょ、言う事で」

その、と言う和葉を抱きしめた

ほな、承諾、言う事でええか?と言うたオレ
に、頷いたのを確認して、ガッツポーズをし
たいんを必死に堪えたオレ

和葉と2人、打ち上げ花火の下で、ガキん頃
以来のキスをした

とても幸せな気持ちで一緒に帰宅したオレ達
は、その後に再び離れる事になるとは、まだ
知らんままやった

to be continued