名探偵コナンから、平和な2人の平和な話
を、今回は、初めての平蔵さん視点で描い
てみますw


愛娘と愛息子 2


「ほな、またな、頑張ってや!」

静と一緒に元気よう帰る姿は、いつもの和葉
やと思うたけど

「遠山、和葉、痩せたか?」

「ん?あぁ、と言うより顔立ちがなぁ、変わ
って来たんや」

大人になって来たんか、段々しゅっとして来
てしもうてなぁ
まあるいほっぺたが可愛ええ子やったのに、
と苦笑する遠山

確かに、ぐんと大人びて来たような気がする
ひまわりのような笑顔は相変わらずやし、よ
う喋るのも、いつもと同じやけど

雰囲気が、変わった、言うか
大輪の花が開花する直前のような、微妙な空
気の変わり目を感じた

それはきっと、父親である遠山が一番感じて
いて、一番、複雑なんやろな

「オレもなぁ、和美の事、ご両親から取り上
げるみたいにして攫ってしもうたから」

偉そうに言える立場やないけど、あの時、も
しかしたら和美の両親もこないな気持ちやっ
たんやろか、とため息を吐いた

それは、ワシも同じや

自分が静と知り合うたんは、高校生の時で、
付き合い始めたんは、大学に合格してからの
事やった

ちょうど、もうじき平次らがその年齢に達す
るんや

そう思うと、何とも言えん気持ちになる

一通り、愚痴を吐いて、飯を食って満足した
んか、はたまた愛娘の顔を見られて充電完了
したんか、ご機嫌で遠山は部屋を出て行った

今日は、さっさと片づけて、帰ろうと思うて
いたタイミングで、意外なやつが顔を出した

平次や

「忙しいんはわかってんのやけど」

と言うて、入って来た平次
何を言うんかと思うたら、今週は家に帰って
来るんか、と言う

「誤解の無いように言うておくけど」

ワシ、一応帰宅はしとるで??
毎日、とはいかんでもな

「それはわかってんのやけど、オレとあんま
り合わんやろ?」

ソファに座る息子も、何や暫く見ん間に、ま
た背が伸びた様子

まだ抜かされる程には無いが、静に似た顔は
またさらに目元が似て来たような気がするし
無駄に手足も長い

コイツも、大人になったんやな、と思う

「珍しいな、オマエがワシの帰宅を気にする
やなんて」

小遣いならやらんぞ、和葉にならやってもえ
えけどな、と言うと、差別や、と言う息子

「ほな、何や、ワシに叱られるような真似、
どこぞでして来たんか?」

「そない、人聞きの悪い事言わんでええやろ
オレは、品行方正、めっちゃ礼儀正しゅう生
きてるっちゅうねん」

突っ込みどころは、満載だが、拗ねる息子を
見るのも久しぶりなんで、華麗にスルーして
やる事とする

「ほな、品行方正な息子は、何で親父の帰り
を気にしてん」

小遣いでもない、何かの尻拭いでもない、
オマエ、最近オレにそれ以外の用事、無いや
んか、と言うと、そんな事も無い、と言う

今更、一緒に風呂にと言う年齢でも無いし
まだ一杯どうや、と言える年齢でも無い

「オマエがそこまではっきりせんのは、和葉
の事か」

的中やったらしく、ま、まぁ、と言う

「和葉がどうしたって?」

「オレ、和葉と結婚したいねん」

書類にサインしていた文字が歪む

今、息子は結婚、と言うたよな
和葉と結婚、な、さよか

「ちょ、ちょっと待て、平次」

「何や」

「オマエ、和葉と付き合うてたんか?」

「いや、まだや」



付き合うてへんけど、付き合うてるようなもん
やんか、と言う息子
学校でも、もう夫婦扱いやし、と平然と言う

いやいやいや、まてまてまて

この調子やと、こいつ、和葉に何も言わんと、
既成事実だけ先に進める気とちゃうか?

アカンアカンアカン

ホンマに遠山に父子揃って殺されるで、そん
な事態になったら

「あぁ、ちゃんと説明、するよって」

まぁ、落ち着き、と言い、お茶を淹れてくる
息子は、どこか静と行動まで似てるところが
ある

「ちゃんと、和葉にプロポーズする前に、
おっちゃんとケリはつける」

オレも、和葉の気持ちを確かめずに強引に
あれこれ進める趣味は無い

ただ、オレの意思表示をはっきりさせとかな
アカン事態になってんねん

そう言うと、息子は腰に差していた雑誌を広
げて見せた

「彼女は確か…」

「あぁ、大岡紅葉や」

クイーンの座を手にした彼女が、皐月会の再興
に尽力すると宣言した時のインタビュー記事

初恋の相手と再会して、その相手が素敵に成長
しとったとか何とか、運命を感じたとある

名前ははっきり書いてへんが、書いてある内容
を読めば、息子やとはっきりわかる

「紅葉に悪気はない
でも、紅葉を取り巻く周囲には、悪気があるの
も居るんや」

この雑誌が、明日、流れてしまうと言う

どうやら、紅葉本人から、息子に申し訳ないと
事前に連絡と、雑誌社から提供された発売前の
本が送られて来たと言うのだ

「沖田っちゅう奴が居るんやけど、そいつから
気をつけやって言われてん」

数日前、交流試合の時に、直接対戦はなかった
んやけど、ちょっと話す機会があって、と言う

沖田と言う子は、大岡家とも懇意にしとるらし
くて、その大岡家で、近日中にお家騒動が起こ
ると言われたらしいねん

それに、平次は必ず巻き込まれる、と

「何やて?!」

「いや、オレも沖田から話を聞いた時は、この
雑誌のインタビューの事は知らんかったんや」

せやから、どうせ大した事無いやろってな、
聞き流してしもうて…

「オマエはアホか!」

アホって、と言う息子を怒鳴りつけた

「静とワシを、その騒動に巻き込むっちゅう
のは、仕方ない」

でも、平次、遠山や和葉を撒き込むのはアカン
どうしてその時点で静に言うておくなり何なり
せえへんで、のんきにしとったんや!

「いや、せやからな、沖田から言われた時に、
オレが和葉にちゃんと言うたらええだけや、と
思うてしもうてん」

でも、この記事を見たら、アイツ、絶対にまた
オレから逃げると思うねん

紅葉に悪い、言うて、と言う息子に、わかるよ
うに話せ、と言うた

紅葉と出会った時の事、誤解させたまま自分は
すっかり忘れていた事を話す息子に、違和感を
感じた

「オマエ、まだワシに隠し立て、する気か?」

今の話に、抜けていた部分を話せ、と言うた

「実は…」

自分も知ったのは、つい最近やと言う

ホンマは、直接会った半年以上前、春の剣道の
大会会場に、紅葉と執事が顔を出していたらし
い事と、

毛利探偵事務所の下にある喫茶店で遭遇した事
件の時も、執事が居たらしい事を

「話を整理すると、オマエがのほほんとしとっ
ただけで、春先からずっと、接近する機会を伺
われていたっちゅうワケやな」

困ったような顔をした息子に、盛大にため息を
吐くしかない

「オマエなぁ、この話をもみ消すために、和葉
にプロポーズする気なんか?」

「いや、そう言うワケとちゃうねん」

戎橋での件から、ずっと、和葉への告白の機会
を狙っていたけれど、中々邪魔が入ったりして
出来てへんと言う息子

「平次」

悪い事は言わん、今はやめろ、と言うた
とにかく、今は、和葉にちゃんとこの記事が出
てまう事をまずは説明しろ、と

「おそらく、数週間はマスコミのええ餌食にな
るやろな」

問題はそれだけやない

大岡家で内紛が起きている以上、事実上の跡取
娘である紅葉には、それなりの伴侶をとか何と
か騒ぐ連中も出てくるやろな

自分らが懐柔しやすいやつを夫候補に立てるた
めに

世間をわかってるようで、わかってへんうちの
愚息など、カモがネギ背負って、鍋とつゆまで
持ち込んだようなもんや

「帰るで、静にも協力してもらわんと、始末が
出来ん可能性がある」

急ぎ連絡し、車を回してもろうて、息子共々
帰宅した

あぁ、何でこう、どいつもこいつも

ため息を吐くまいと思いつつも、止められへん
夜は長くなりそうやった

to be continued