名探偵コナンから、いつもの平和な2人に
チョコレートの甘い魔法をかけてお届け

チョコレートマジック 5

バレンタインデーは、平次、呼び出されま
くるから、お弁当をゆっくり食べる暇はな
いやろな、と、最初から途中で捨てられる
ようにして用意してん

案の定、朝から呼び出されていたんやけど
何故か手ぶらで戻って来る平次

まぁ、お昼に大滝ハンらからヘルプが入り
飛び出してしもうたんやけどね

その時も、戻れなかったとしてもチョコは
とっとけ、とか、家に居れ、とか念押しさ
れてん

学校では、泣いてる子が多くて、何故か、
睨まれたりもしたけど、おばちゃんがわ
ざわざ学校に迎えに来てくれて、一緒やっ
たから何もされんかった私

「平次がな、和葉ちゃん、家に連れて帰
ってくれ、言うもんですから」

わざわざゴメンな、自分で行けるっちゅう
のに、と言う私に、おばちゃんはせっかく
やし、お茶して帰りましょ、と言う

美味しい緑茶を使ったお菓子が食べられる
お店に行って、抹茶パフェを一緒に食べて
おばちゃんとおしゃべりしてから帰った私

夕飯も一緒に作って、宿題やっとる私の隣
でおばちゃんは編み物をして、何やかやと
時間をつぶしてたけど、平次は中々帰って
来ない

「お部屋で寝て待ってたらええわ」

そう言われて、私は自分用にといつもつか
わせてもろうてる、平次の隣の部屋へと入
った

もう寝てしまおうかな、と思うけど、何か
バタバタしながらも何度も待ってろと言う
てたからなぁ、と起きていた私

日付変更線を超えるちょっと前に、平次が
戻って来た

夕飯を出してあげて、片づけようとしたら
自分がやる、待ってろと言うんで待ってい
たら、めっちゃ香りのええ紅茶を淹れて来
てくれてん

「ええ匂いやね」
「せやなぁ」

工藤くんからおすそ分けされたと言う紅茶

ミルクティ好きの私と、ストレートが好み
の平次にって選んでくれたみたいやけど、
めっちゃええ香りで美味しかった

私があげた瓶のラッピングを外すと、平次
はひとつ取り出して、ぽいっと口に放りこ
んだ

「ん、んまい」

むぐむぐ食べて、そう言うた平次が、ひと
つ私にも差し出した

隠し味で足したマーマレードが効いて、確
かに少し甘いけど、爽やかで、我ながら上
手く出来たかも、と思う

珍しく、平次がそのまま2個目に手を出し、
食べていた

そういえば、と思うた

昨年は、この服部邸にも大量のチョコが
届いてたはずやねん

でも、今年はその影もない

今年は、どうしたん?と言うと、平次が
むせだした

慌てて咳き込む平次の背中をさする私

「…今年は、全部、断った」

「は?」

服部邸に贈られて来たものは、手紙類を
抜いて、あとはチョコだろうかそうでな
いものだろうが、全部、寄付した、と

学校に届いたのも、と言う平次

「はい??」

「せやから、和葉と一緒にどうぞと言う
てもろうたもの以外、全部断ったんや」

そう言うと、3個目に手を付けた

「オレがもろうたんは、オマエからのコ
レだけやねん」

ぼりぼり食べる平次を、見ていると、も
うひとつ、包みを開いて、私の口に押し
込んだ

「美味いやろ?」

ぽり、と噛んだ私

当たり前やん、私が作ったんやもん、と
言うと、せやなぁ、と笑う平次

「ひとつでええねん」

いっぱいもろうても、食べるのに限界は
あるし、それに

「それに?」

「オレが欲しいんは、最初から1つだけ
やし」

そう言うと、またもうひとつ取り出して
口に放り込んで笑う

「平次、それって」

どう言う意味?とは言えんかった

物凄く近い距離に、平次の髪があって、
それよりも近い位置で唇が触れたから

「オマエんだけでええ」

他は、要らん

そう言うと、今度はしっかり抱き寄せら
れて、ぐっと唇を押しつけられた

チョコレートと紅茶の香り

ベッドを背に座っていた私は、平次とそ
のベッドに挟まれている

首に回された平次の腕の中で、手で頬や
髪、耳を撫でられながらキスを受けた

初めてやって言うのに、何度も重ねられ
る唇に、ぼーっとしてしもうた私

そっと、平次の身体に腕を回した

そうでもしとかんと、自分の身体やのに
支えられへんかったから

「かずはー」

首筋に顔を埋めた平次が突然言う
眠い、と

「ね、眠いって」

「んー、だって、オマエめっちゃ柔らか
いし、温いんやもん」

こうしとると、黒猫抱っこしとる気分や
と言うと、私をぎゅっとした

さすがにこうして寝たら、オレの理性も
ぶち切れるけど、離れるのも嫌やから、

そう言った平次は、私を担いで、自分の
部屋へ行くと、平次のベッドに私を寝か
せて、客間の私の布団を引きずって来て
下に敷くと、横になった

なぁ、平次
何でちゅーしたん?

暗くなったから、聞いてみた

「はい???」

いきなり、がばっと起き上がる音がした

「オマエ、まさか誰かとあんなコト、し
た事あるとか言わんやろな!」

「あ、あんなコトって」

するわけないやん、初めてやってん、と
言う私に、それは嘘やと言う平次

「せやかて、オレ、オマエとしたで?」

「はいいい????」

思わず飛び起きた

い、いつ?
私、記憶ないんやけど

「オレの初めても、オマエんも、お互い
やからおあいこや」

「おあいこって」

しかも、初めては同じ、チョコをもろう
た日や、と言う

????

「覚えてるワケ無いやろが」

オマエもオレも、3歳やってんから、と
言う平次

確かに、平次にチョコをあげた記憶はあ
るけど

「証拠もあるで」

思わず声をあげそうになったんを、平次
の手で塞がれた

「あほ、オカンらが起きるやろ」

慌てて頷いた

どさっ、とベッドに座る平次も、つい最
近、その事実を知ったらしい

「だって、おばちゃんのコレクションに
無かったで?」

「オマエの親父に、オレやオマエが殺さ
れたらアカンって、オカン、隠しててん
オレも片づけ手伝って、初めて見てん」

チョコのお礼やって、平次が私にしたら
しいねん

もっとも、平次はほっぺにしようとした
らしいんやけど、私がくるん、と向きを
変えたらしく、口にしてしもうたって

お互い、びっくりして泣き出したらしい
んやけどな

そのすぐ後、仲良う手を繋いで遊んでて
とおばちゃんが証言しとったらしい

「あの日も、今日も、きっかけはチョコ
やな」

平次はそう言うと、幼なじみやからした
んとちゃうでー、と平たい目で言うた

「惚れてるからに決まってんやろ、あほ」

そう言うと、そのまま覆いかぶさって来
て、キスをした

信じてもらえてへんみたいやから、と言
うて、その後はめっちゃぎょうさんキス
されて、中々解放してもらえず

「んうっ、わ、わかったって、へーじ」

ゴメンなさい、ちゃんと、信じますと言
うて、漸く解放してもろうた私

「わかればええねん、わかれば」

どや顔で、笑う平次は、おやすみ、と言
うと布団へ潜った

和葉ちゃんに信じてもらえへんみたいや
から、これからは、毎日せんと、と言う
楽しそうな声に、激しい眩暈を覚える

ほ、本気なんかな、と

チョコに媚薬を混ぜた覚えは無いんやけ
どな

翌朝、寝起きにいきなりちゅーされて、
平次の覚悟が本気やって気付いた私は
登校して、さらに驚くことになる

「ええええっ!!」

昨日、チョコを拒否した平次は、私に
告白して付き合うつもりやからと断っ
ていたと言うんや

私が知恵熱を出したんは、言うまでもな
く、看病してくれるおばちゃんが、平次
をぺしぺし扇子でたたきながら説教して
いる内容に、更に倒れそうになった

「初心者相手に、何を全開で迫ってるん
ですか!こういうのはなぁ、ムードとか
女の子の都合とか、よう考えて…」

お、おばちゃん、あなた、息子に向かっ
て何の指南、してはるん??

素直に聞いて、しゅんとしとる平次も平
次やけど、真面目に、女の子の口説き方
のマナーを教えるおばちゃんに、私は卒
倒しそうになった

「可愛ええ和葉ちゃん、傷つけたら許し
ませんえ」

まったく、平蔵さんに指導がなってない
って言うて来なくちゃあきませんな、と
ぷりぷり怒って部屋を出て行った

あの、あのな、おばちゃん
嬉しいんやけど、わ、わたしはどないし
たらええの??

平次を指導する前に、私にもしてくれへ
んやろか

めちゃくちゃ甘やかす平次とおばちゃん
に、私の熱は中々下がらんかった

Fin