名探偵コナンから、平和な2人を
2018年になりましたが、変わらず紡いで行く
所存です


オレ「と」和葉について考える

オレの名は、服部平次
西の高校生名探偵として、順調にその名を
広めている

マスコミにも顔を晒している事もあって、最
近ではちょっと色々と困る事もあるけれど

取り敢えず、文武両道、頑張ってるっちゅう
事で

まぁ、事件に絡んでとか、そうでなくて、とか
有名になればなる程、色々なトラブルもそれ
なりに増えて来るもんで

現在、オレは史上最大のピンチっちゅうやつ
に直面しとるワケや

和葉と普段通り下校しようとしたら、雑誌を
手にした変な姉ちゃんらに取り囲まれてしも
うてな

「誰、このオンナ」

と来たワケや

和葉も慣れたもので、ただの幼なじみやと言
うて立ち去ろうとしたんやけど、今日の姉ちゃ
んらはしつこうてなぁ

アンタが未だに服部くんの傍をうろちょろしと
るって女?と来てな

さすがの和葉も、いらっと来たみたいで

「私と平次はただの幼なじみや
それ以上でも、それ以下でも無いし、アンタ
らに関係あらへんやろ!」

そう言って、颯爽と立ち去ってしもうてん
オレが、一言も口を挟めない間に、やで?

魂が抜けかかる程脱力したオレに、一緒に
真をとか、サインくれとか、デートしようと
か何とか騒ぎまくる連中に、オレがキレたの
は仕方ないと思うねん

今日はオレ、和葉に最近約束破ってばっか
やったから、お詫びに甘いもん食べに連れ
行って、買い物も付き合うって約束やったん
から

オレもオレなりに楽しみにして、誘ったんや
和葉も嬉しそうにしとったし
何よりも、久しぶりの2人の外出やったし

オレの怒りに怯えた面々が道を開けたんを
ええ事に、ダッシュで逃げたオレは急いで
和葉の携帯を鳴らした

「どこや」
「アンタの家、おばちゃんの前」
「あ?」

ひとりで帰るところを、外出先から戻るオカ
ンの車に拾われたらしい

おだんご食べたい、買うて来てーと言う声に
反論する余地も無く、なじみの団子屋に立ち
寄るオレ

「あれ、平ちゃん、和葉ちゃんは?」
「あぁ、家でオカンと一緒に待ってんねん」
「あらそう、最近和葉ちゃんの顔見てへんか
ら、逢いたかったわぁ」
「今度は一緒に来るし」
「そう?ほなオマケしとくさかい、和葉ちゃ
んにもよろしゅう伝えてや?」

おおきに、と言うて、包んでもろうたモノを手
に帰宅するオレ

歩きながら、ふと思う

普通、高校生の幼なじみが、家でオカンと
待ってるって聞いたら、もっと違う反応やな
いんかって

何せ、オレと和葉がおむつが取れるかどう
かってくらいから知ってる人やから、多分、
オレと和葉は兄妹くらいの感覚なんやろな

ほな、一緒に来ると言うても、それがええと
言うて笑うおばちゃんの中では、オレと和葉
はワンセットなんやろな、きっと

「ただいまー」
「「おかえりなさい」」

やったー、とだんごに喜ぶ和葉に、浮かれる
様子を見て笑うオカン

おばちゃんが、和葉の顔見たい、言うてたで
と言うと、ホンマに?と嬉しそうに笑う

着替えて手洗いを済ませて席につくと、お茶
を差し出されて、何となく居間で3人でだんご
を食べ始めた

相変わらず、美味そうに食うて喋る和葉につ
られて、今日の服部邸は賑やかだ

オレとオカンだけやと、静かやからなぁ

お茶を飲んで、さ、夕飯の支度と言うたオカン
を和葉が座らせた

「おばちゃん、無理したらアカン
発作が出る前に、ゆっくりしとった方がええよ」

私が夕飯、適当に作るしと言う和葉に、オカン
自身も目が点

喘息持ちのオカンの微かなラッセル音をちゃ
んと聞いていたんや、和葉の奴

予想通り、夕飯後からぜいぜい言い始めたの
を、和葉の指示で加湿器炊いたり寝床の準備
をしたりとオレも手伝った

早めに手当が出来たから、さほど発作に苦し
む様子もなく、眠り始めたのを確認して、オレ
達は念のため2階のオレの部屋やのうて、今
日は居間で宿題したりテレビを見たりして過
ごす事にした

和葉が親父に連絡したらしく、珍しく午前様よ
りだいぶ早いご帰宅をした親父

和葉に世話を焼かれて飯を食うと、早々に寝
室へと入ってしもうた

「おっちゃん、何だかんだ言うてもおばちゃん
の事、めっちゃ心配なんやで?」

愛されてんなぁ、おばちゃん、とのんきに笑う
和葉を横目に、平たい目になってしまう自分

(そういうオマエかて、結構、愛されてると思う
んやけどなぁ)

やいやい言いながら宿題して、テスト勉強し
て、テレビ見て、そうこうしとる間に眠り始め
た和葉を、ソファに寝かせ、自分ももう一辺
に寝ようとしたタイミングで、親父が出て来た

氷枕を交換してやりたいと言うので、オレが
代わりに作ってやって手渡すと、親父はすう
すう眠る和葉を眺めて、目を細めていた

「まぁ、秘宝として隠すばかりが護る事には
ならんよなぁ」

??

おおきに、と言うて、氷枕を手に寝室へと戻
る親父

ふと、机の上に広げていた取材申し込みの
紙が目に留まった

「秘宝、ねぇ」

のんきに眠る和葉の頬をそっと、撫でて、
額にキスをして布団をかけ直してやった

(隠すばかりが護る事にはならん、か)

その夜、オレはオレと和葉について考えな
がら眠りについた

そのせいか、夢の中で白いドレスを着て逃
げる和葉を追いかけまくると言う非常に疲
れる夢を見たオレ

和葉の隣に、どこぞの馬の骨なんぞ立たせ
てたまるかっちゅーねん

オレは、次週取材を受ける人に、返信をした

「オカン、頼みがあるんやけど」

病み上がりのオカンに、あるお願いをした

和葉と、オレの日常を何枚か撮影して欲し
いってな

和葉はオレと同じ、幼い頃からオカンに撮影
されまくっとんので、オカンがカメラを向ける
事に関しては、全く気にしたりせえへんのや

事情を説明すると、わかりました、やってみま
しょ、と言うて、本気であれこれまわしてくれた

「で、どの辺にします?」

「こ、こないに撮ってたんか!」

山のようなデータの中から、オカンと2人で超
厳選した5枚をピックアップした

1枚目は、朝陽の中、学ランとセーラーの2人
が楽しそうに話しながら歩く背中が映るもの

オレの横顔はばっちり映ってるけど、和葉の
顔はギリギリ映ってへんけど、しっぽが揺れ
るから、すぐにわかるやろ

2枚目は、居間でテスト勉強に励む2人を隠
し撮り(風味、やな、オレは知ってたから)

和葉もオレも普段着姿で、参考書やら教科
書やプリントが散乱しとるのが映る

和葉は髪を降ろしてて、斜め後ろやから顔
は映ってへんけど、オレが見惚れてるのは
ばっちり映ってた

3枚目は、服部邸の中庭で、掃除をしなが
らじゃれあう2人を映したモノ

コレもオレはばっちり映ってるけど、和葉は
ギリギリ顔が映ってへん

4枚目は、ホンマはアウトなんやけど、オカ
ンもオレもこれがええと選んだ1枚

正装して出場したかるた大会で、和葉が優
勝した時の1枚やねん

紅葉は別の試合に出ていたんやけど、強豪
校がひしめく予選をあっさり勝ち抜いた和葉
と未希子やった

凜とした横顔、緊迫した試合の空気
和葉の本来の勝負師の顔が映るものや

札に集中しとる和葉の横顔は美しい

1/3だけ映るその横顔は、オカンも一押しで、
これだけは事前におっちゃんに承諾を貰い
提供する事にした

5枚目は、オカンの力作で
愛車に乗って、走り去るオレと和葉のフォル
ムだけが朝焼けに映る1枚

5枚の写真を提供して、オレはインタビュー
に応じたんや

その雑誌には、事件がらみでも何度か世話
になっていて、どうせ公表するならお世話に
なったところに、と言うオカンの勧めもあって
選んだ媒体やった

有名人の「宝物」拝見と言う特集に、オレに
も出てくれ、と言う話やってん

実物を見せるワケにはいかんから、写真で
ええか?と事前に話をつけて、提供したんや

「びっくりしました」

とおおらかに笑う編集長は、ちゃんとオレの
一言一句を曲げる事なく掲載してくれた

「オレの宝物を持ってるのは、コイツや」

生まれてから今日までの記憶を分け合って
生きている相方の頭の中、心の中に、自分
にとってかげがえのない瞬間、かげがえの
い思い出がちゃんと在る

「唯一無二の存在やねん
誰にもその不在は埋められへんし、誰にも
代わられへん」

和葉の、存在そのものが、宝物
っちゅうわけや

選んだ写真にも、総てに意味がある

オレが過ごす日々には、必ず傍らに和葉が
必要で、オレが目指す先には、必ず和葉が
居る

まっすぐに、真摯に物事を吸収してそれを力
に変えて進んで行く和葉の姿は、オレに慢心
してはならんと警鐘を鳴らしてくれるし

オレが走り過ぎた時、ブレーキをかけて癒し
てくれるのは、和葉と過ごす何気ない時間や
ったりする

和葉を背に、愛車を駆ってる時は、どこへで
も行けるような気がするから

アイツは、この意味を正しく理解してくれるや
ろうか?

発売日前日、オレは和葉へ1冊、工藤へ1冊
発売前の刷り上がったばかりの雑誌を贈っ
たんや

走って来て、途中、転んでしもうたと言うぐっ
ちゃぐちゃな和葉を抱き上げて、その頬にキ
をした

当然、待ち構えていたオカンにばっちりと証拠
を抑えられたけどな

オレと和葉の携帯がじゃんじゃか鳴ったのは、
そのすぐあとの事

これからも、どうぞよろしゅう、と笑ったオレに
真っ赤になって、涙を浮かべる和葉がしがみ
ついた

Fin