名探偵コナンから、平和な2人を、たまには
この人の視点から

2018年になりました
本年も、変わらずゆるゆるとマイペースに進
む予定です

ふらり、とお立ち寄りいただけたら嬉しいな

どうぞよろしくお願いいたします!


西の名探偵と和葉さん


「哀ちゃん、大丈夫?」

ぐるぐる回る視界に、ひょっこり顔を出して
安心させるような笑顔が浮かんだ

西の名探偵の想い人だ

柔らかな冷たいタオルで顔を拭ってくれる

「ごめんなさい、大丈夫」

そう言おうとして、咳こんでしまう私の背を
優しくさすってくれる

「安心し、無理せんでええから
私と、哀ちゃん以外、今ここには誰もおらん
博士は、どうしても外せない用事があって、
さっき出かけてしもうたから」

平次とコナンくんは、事件やし、蘭ちゃんも
毛利探偵と用事で出かけてしもうて

せっかく作って来た差し入れもったいないな
思うてな、あ、博士んとこ、と立ち寄ってな
博士に頼まれてん

にっこり笑うと、私に温いほうじ茶を出す

「無理、したらアカンよ、哀ちゃん」

博士、ホンマに心配してたんやで?と

洗濯するから着替えて、と言うと、氷枕を
交換してくるな、と部屋を出て行く

加湿器も炊いてあって、ベッドサイドには、
体温計やら何やら、私の世話を焼いてくれて
いた跡があった

戻って来た彼女は、洗濯をして、掃除もして
くれたばかりか、鼻歌を歌いながら私にお粥
やらリンゴを食べさせてくれて、眠る私の傍
でアレコレと、西の名探偵との昔話をおもし
ろおかしく話してくれた

お腹が痛くなるくらい、笑いそうになって、
別の意味で苦しかったけど、病気の苦しみか
らは解放された私

「そう言えば、差し入れって何だったの?」

あぁ、水羊羹やねん
時期外れやって、平次にはバカにされたんや
けどな、暖かい部屋で食べるの、好きやねん

そう言った彼女に、食べたい、とリクエスト
したら、嬉しそうに持って来てくれた

確かに、暖められた部屋で食べるひんやりと
した柔らかな甘さは、心地良い

「おばちゃんがな、美味しい小豆、たくさん
もろうたから、って言うから」

服部くんのお母様と一緒に、大量に作ったと
言う彼女は、楽しそうだ

水羊羹も、甘さ控え目で美味しい

作り方を教えてもらい、ついでに博士のため
のダイエットメニューもいくつか教えてもらっ
た私

料理上手な彼女は、和食は得意だけど、洋食
のレパートリーが少ない、と言うので、お礼
にいくつか教えてあげて

ファッションやら何やらの話で盛り上がり、
パソコンの事とか、研究の事でも盛り上がっ

意外だった

西の名探偵の彼女は、もっとこう引き出しの
少ないタイプの子かと思っていた

でも、彼女の興味のアンテナは多方面にわた
っていて、色々な引き出しを持っていて

何を話していても、けらけら楽しそうに笑い、
楽しんでいた

お喋りに花が咲いて、和やかな時間に癒され
気がつけばすっかり回復した私

そんな時、大慌てで西の名探偵と工藤くんが
文字通り、転がり込む勢いでやって来た

「どうしたん?平次、コナンくん」

「あ?か、かずは??」

オマエ、無事やったんか

腰を抜かした2人に、私と和葉さんは唖然と
するしか無い

どうやら、事件が終わり、毛利探偵事務所へ
戻ろうとした2人は、蘭さんらが和葉さんとは
別行動だと初めて知ったらしく

大阪にも戻っていないと大騒ぎになったらし
いのだ

「オマエ、電話は?」

「充電切れてしもうて、充電させてもろうて
て、身近に置いてへんかったんやもん」

携帯も応答が無いと、半ばパニックになった
様子

ほっとしたら、腹減った、と言う2人に、和葉
さんは苦笑しながら夕飯の支度を整えた

体調の悪い私に配慮して、梅粥に煮物、お味噌
汁と並び、物足りないであろう2人には、出汁
巻きたまごに、肉野菜炒めが追加された

あらら、と思うスピードで食べ尽くす2人に、
もう笑うしかない

リンゴをすりおろし、絞ったジュースを私にと
差し出す彼女に、小さい姉ちゃんだけずるいと
拗ねる西の名探偵

その様子に工藤くんが爆笑
オマエ、灰原にまでヤキモチか?と

大いに不満そうな顔をした西の名探偵は、わざ
わざ作って来てくれた彼女に、半分飲ませると
満足そうな笑顔を見せた

あぁ、そうか
彼の原動力は、このキラキラな癒しの天使なの
ねぇ、と思う

なんだかんだと言いながら、彼女の笑顔に一喜
一憂する西の名探偵

なんとなく、惹かれる理由はわかった気がした

不思議な和やかな雰囲気は、彼女特有の爽やか
さを伴って、何とも言えない魅力がある

またね、哀ちゃん、と笑顔で大阪に帰って行っ
た彼女と、この後、長い付き合いになるとは、
この日の私はまだ知らない

彼女が大学生になってからは、一緒に研究をす
るようになり、また私が出産をする時には、西
の名探偵の実家に世話になることになるとは、

まだそんな未来に気付いても居ない頃のこと

Fin.