名探偵コナンから、平和の2人の平和な日常
をそっとお届けします


Winter song 1

「カウントダウンの開始、やな」

私はため息を吐いて、2人分のプリントを鞄へ
としまった

12月に入り、進路希望調査票が配られてん

今度は、ちゃんと書かないと、クラス分けにも
影響してくるしな

学校では、事件であまり姿を見せてへん平次に
ついて、平次は東京の大学に行くんやってとか
何とか、噂になっとった

先生らも、平次やったら、最難関の国立かて余
裕やろ、と言うてるから、余計にその話は真実
味を帯びていた

まぁ、工藤くんも居るし、大学を最後に刑事を
目指すんやろうから、大学4年はどっぷり探偵
やるつもりやろな、と思うんやけど

どちらにしても、私と平次の道は、もう重なら
へんの

私は、京都の大学を目指す事にしたから

そして、その大学の途中で、海外に出る事を
決めたんや

東京に行って、探偵三昧を目指す平次とは、
おそらくどんどん距離が出来る事になる

最初は、東京の自分が行きたい学部がある私
立を狙おうと思うたんやけど、諦めたんや

私が傍に居って、ちょろちょろしてたら邪魔
になるやろ、思うて

平次が、心置きなく専念出来るように、最後
の学生生活くらい、自由にしたらなアカンっ
てな

みんなは、平次にくっついて、私も東京に行
くと思うてる

学内推薦枠を狙ってる子で、東京の私大を狙
ってる子らは、それとなく牽制してくるんや
けどなぁ

まだ平次にも言うてへんのに知らん人に言う
ワケにも行かへんやろ?

今日は、親友カップルが揃ってインフルエン
ザでお休みなんで、私はひとり、マフラーを
巻きなおして校舎を出た

「和葉ちゃん」

おばちゃんやった

「どないしたん?」

出先からの帰りで、もしかしたら、と思うて
通りかかったと言う

「お茶でもせえへん?」

「ホンマに?ええの?」

ええ、と言うおばちゃんと一緒に歩き出す

平次はまだ、帰って来てへんらしい
おばちゃんは、おっちゃんへ届け物をして
来た帰りやって言うてた

おばちゃんと一緒に買い物して、お茶して帰
る途中、おばちゃんの携帯が鳴った

平次が事件絡みでケガして入院した、と言う
知らせやった

駆けつけな、と思うたけど、ふっと思うた
私の携帯は鳴ってへん
コナンくんと一緒にはずやから、平次に何か
あったら、連絡あるはずやと思うてん

もしかして、コナンくんにも何かあったんや
ないかと不安になって
おばちゃんを待たせて、私はコナンくんに電
話をした

「和葉姉ちゃん、どうしたの?」

コナンくんの返事は、のんびりとしたモノで
犯人を追い詰めてる時のような緊迫感は無い
少しだけ安堵して尋ねた

「なぁ、コナンくん、平次と一緒に居る?」

「うん、隣に居るよ」

何や、和葉か、と言う声が背後でする

私は、つい先ほど、おばちゃんの携帯に入った
電話の事を伝えた

「和葉か?」

「平次!アンタ、無事なんよね?」

「あぁ、ピンピンしとるで、寝不足やけど」

それは嘘では無いらしい
重症な人の声ではないから

「オレがそっち帰るまで、オカンの傍を離れ
んといてくれ」

「うん、わかった」

大滝ハンらには、平次から電話すると言い、
今後、おばちゃんの電話は録音しろ、と言わ
れた

「何や、うちの子息は元気なんか」

「そうみたいや」

お父ちゃんから電話が入って、おばちゃんと
一緒に私の家に行け、と言われた

「服部邸を念のため捜索するよって」

余計な仕掛けがされてへんか、確認すると言う
おばちゃんに電話を代わってもろうて、お父ち
ゃんからも言うてもろうた

「わかりました、そうしたら、私、和葉ちゃん
連れて実家の別邸の方へ行ってます」

おばちゃんが、実家の人に電話して、すぐに車
が迎えに来た

私はおばちゃんと一緒に京都にある池波家所有
の別宅へ連れて行かれたんや

「おそらく捜査に時間かかるやろし、和葉ちゃ
ん、学校お休みやろ?」

せやったら、のんびりしようや、と笑うおばち
ゃんやった

「うん、たまには羽根伸ばすんもありやね」

「せやろ?」

請求書は後で平蔵さんに送りつけようと笑う
おばちゃんは、何やら楽しそうやった

おばちゃんが、おっちゃんとの老後を過ごすん
やと気に入ってるこの別宅は、幼い頃に何度と
無く連れて来てもろうた場所

仕事が忙しくて、何処へも連れて行けんから、
言うて、平次を遊ばせるついでに私もよう一
緒に連れて来てもろうてん

「ここの中庭もな、大好きやねん」

服部邸の中庭が一番好きやけど、ここもたくさ
んの思い出が眠る大事な場所

おばちゃんと一緒に散策して、一緒にお台所に
立った

「今日はな、2人やからたまには」

炊飯器に仕込んだのは、ピラフ

炊き上がってから、ケチャップやトマトを混ぜ
てお皿に整形してから、卵をふんわり焼いて上
に乗っけた

同時に作っていたサラダとオニオンスープと一
緒に食べる

服部家の男性陣は、洋食より和食を好むから、
ハンバーグとかオムライスとか、あんまり作る
機会がないねん

せやから、子供の頃からおばちゃんと2人の時
は時々洋食やった

おばちゃんと食べながらお喋りしとると、急に
車の音がした

「おーい、オカン、和葉?」

平次とコナンくんや

「何や、うまそうなもん喰ってるな」

夕飯どころかお昼もまだやって言う2人に慌て
ておばちゃんと支度した

チキンライスは明日ドリアにしても食べられる
からと多めに炊いておいて正解やったな、と笑
うおばちゃん

「ホンマやね」

オムライスやサラダ、スープを先に出して、そ
の間に、ブロッコリーやカリフラワー、人参や
ジャガイモとベーコンを炒めて、温野菜を追加
したんやけど…

2人共、ホンマにお腹が空いていたらしくて、
唖然とする勢いで平らげた

「いや、実はな」

今回、蘭ちゃんは合宿で不在、毛利探偵と妃弁
護士は揃って地方出張、階下のポアロも改修中
で、事件に夢中な2人は、殆どロクに食べてな
かった様子

「平次、アンタはええとしてもなぁ、コナン
くんは小学生のスタミナなんよ?」

どうして連絡くれへんかったん?と言う私に、
いやぁ、すぐ終わるやろ、思うててな、と笑
う平次

おばちゃんは、コナンくんに、明日は何を食
べたいかリクエストを聞いていた

何だかんだと食べていない、お好み焼きとたこ
焼きがええ、と言う可愛ええリクエストに、思
わず私もメロメロや

おばちゃんは、任せておきなさい、と言うて、
にっこり笑っていた

to be continued