2017/08/10 服部の日記念企画

平和×ふるあず×新蘭でお届けします!

本館であるAmeと、別館であるPixiv で連動
するお話になります

10日間限定の連載です

後日、入れ替えて読めるようにしますが、
Ame 和葉ちゃん視点、Pixiv 平次視点で同時
進行します

海外ドラマの君たちは包囲された!を、平和
バージョンに大幅にアレンジしたパラレル話
ですので、苦手な方はスキップを


You're all surrounded Side A 8


第八章 Requiem

2017年8月某日 ~遠山和葉の記憶

目まぐるしい1ヶ月だった

平次を取り戻し、様々な困難にぶち当たり、
宮野一課長が事故死して、警察葬が行われ

同時に、池波ホールディングスが揺れた

会長と副社長の逮捕と解任騒動
そして、後継者と見られていた春人氏の
電撃結婚と渡米

現社長が会長に就任し、後3年のうちに、
会社を立て直したら、後は後進に譲ると言
う引退宣言

平蔵氏は、平次を訪ねて来て、親子鑑定を受
けても良いと言ったけど、本人がそれを拒絶
自分の父と呼ぶべき人は、遠山銀司郎ただひ
とりでええ、と言い切ったんや

平蔵氏には、私が説得すると言い、既に鑑定
は密かに行われていて、結果も出ている事を
伝えた

でも、待って欲しいと
平次にも、気持ちの整理をつける時間を与え
て欲しいと

事件が一気に動いて、平次は気が抜けたんか
少し体調を崩していた

京極家が与えた家の方に帰る、と言う平次に
ついて行って、無理矢理寝かせると、高熱を
出したんや

昔と違って、成長して身体も大きい平次をひ
とりで面倒見るのは大変で、私はお母ちゃん
にSOSを出した

平次が、病院を頑として嫌がったからや

「アンタなぁ、お母ちゃん呼んでどないす
んのよ」

「え?」

「お母ちゃん居ったら、平ちゃんアンタに
手を出せへんやんか、ホンマアホやなぁ」

「・・・・えええっ!」

仰天する私を、お母ちゃんは呆れた顔で一
瞥した後、平次に言うた

「何や、ホンマ、鈍感な娘でごめんなぁ」

「そんなん、昔からやん」

「せやった、せやった」

「・・・おばちゃん、苦しい」

「せやなぁ、こんなに高かったら苦しいと
思うわ」

素直に甘える息子とその母、ってところや
ろうか?

あれこれと、世話を妬くお母ちゃんの手伝
いをして、熱に浮かされて、お母ちゃんや
私をじっと見つめる平次を見ていた

お母ちゃんは、平次だけやなくて私の事も
めっちゃ甘やかし倒した

桃を剥いて食べさせてみたり、顔を撫でて
みたりして

私の事も、平次の事も抱っこして寝たりも
したんや

平次と私に平等に接してん

「近日中に、大滝ハン連れてまた来るし」

平次の熱が落ち着くのを待って、そう言うと
私と平次にハグとキスをして帰って行った

台風みたいな人やと思う

いっつも、突然やって来て、嵐のように人を
巻き込んで、あっと言う間に帰って行く

お母ちゃんが平次を散々甘やかしたせいで、
その後の私はめっちゃ大変やってん

おばちゃんがやってくれたんやから、和葉も
してくれるんやろって言われて

(絶対、お母ちゃんわざとや)

きっと、平次がこうなるんをわかってて、
めっちゃ甘やかしたんや

宣言通り、お母ちゃんが再来襲する日が予告
される少し前、平次が全快したのを見て、私
は平次に言うた

アンタのお父ちゃんの事、少しずつでええか
ら受け入れてやれ、と

最初はめっちゃキレて、怒った
何で、オマエがそんなん言うんやって

オマエが一番、オレの気持ちわかってるクセ
にって

「せや、アンタの気持ちも、おばちゃんの気
持ちも、一番わかるから、言うてんねん」

アンタは男やからこの先もわからんと思うけ
どなぁ、女の人が子供を10月10日、腹の中
で育てて、それを産み落とすんは、めっちゃ
大変な事やねん

おばちゃんが、そんな大変な思いして産んだ
って事、アンタは死んでも忘れたらアカン事
や、ちゃうんか?

「それだけの命を削るような事しても、ど
んなに周囲に父親の事を責められても、口を
閉ざしてひとりで産んだんや
それって、どう言う事か、わかる?平次」

「わからん」

「おばちゃんにとって、アンタの父親は命
かけて護りたい程、大事やって事や」

生まれて来るアンタに対する愛情と同じくら
い、めっちゃ大事な人やったんやと思う

「お父ちゃんも、お母ちゃんも、それを理
解しとったから、アンタん事、私と同じくら
い、時には私以上に大事にしたんや」

アンタに、父親の事聞かれるたび、おばちゃ
んが淋しそうな顔しとったん、アンタは知ら
んやろ?

でもな、私は見てたんやで?

せやから、おばちゃんに言うたんや

私もお父ちゃんはもう居らんけど、きっと、
お母ちゃんと同じくらい、平次ん事もおば
ちゃんの事、好きやったはずやでって

せやから、平次のお父ちゃんは、私のお父
ちゃんと一緒でええやろって

「そう言うと、おばちゃんはいっつも私の
事、抱き締めてくれてん」

堪忍やで、って言うて

「アンタも、私も親と過ごした時間は同じ
くらい短い
でも、他のどんな家庭より、濃い時間を過ご
させてもろうたんやと思うてる」

アンタも、いつまでも拗ねてないで、いい加
減おばちゃんの事、安心させてやったらええ

おばちゃん、自分が愛した人達が距離置いて
付き合わんようにしとる姿なん、見たくない
と思うてるよ、きっと

そんな風にするために、ひとりで頑張って育
てたワケやないって、言うてると思うよ

「アンタもいつか、親になるんやろ?
そん時、自分の子供に、自分の親は嫌いやっ
て言うつもりなん?」

今からでも遅く無い
ちょっとずつでええから、認めてあげ?

人間誰しもいつかは死んでまうんや
生きてる間に会えたんやで?アンタは

それ、大事にせんようなオトコ、私は嫌いや

そう言うた私を置いて、平次は部屋を出て行
ってしもうたんや

アイスかって戻って来た時、ゴメン、と小さ
な声で呟いてん

(その様子が、めっちゃ可愛ええ思うたんは
内緒やで)

わかっとる

平次にとって、受け入れ難い事実ばかりが並
んで、気持ちの整理がつかんのも

でも、私や平次は誰よりもわかってる
普通に訪れる明日など、どこにも保障が無い
って事を

当たり前の幸せは、ある日突然、消える事も
あるんやって事を

だったら、ぐずぐず立ち止まってる時間は、
もう無いと思うてん

平次には、ここから先は服部平次として、少
しの後悔もして欲しく無い

まっすぐに、想うままに生きて欲しい

いろんな我慢を重ねて、苦しい事を超えて
ここまで来たんやから

それくらいのご褒美、あってええと私は思う
てんのや

アイスを半分して食べながら、くだらない話
をして笑いあう

ごくごく当たり前の日常を、私も平次も思い
っきり楽しんでいた
もちろん、仕事は仕事で全力やったけどな

平次は、最初は難色を示したけど、冴島さん
とお父さんの事を話したら、少しだけ前向き
に考えてくれるようになって

平次は、平次なりに、現実を受け入れようと
し始めて

そんな中、お母ちゃんらが再度来るとわかっ
て漸く重い腰を上げてくれてん

自分ひとりで行く、言うて、冴島院長と平蔵
氏を宴会に招いたんや

ちゃんと、迎えに行って

その日の宴会は、大盛り上がりやった

冴島院長と、冴島さんの和解
黒羽くん念願やった青子ちゃんの帰還
そして、志保さんと、降谷係長の大阪赴任と
降谷元夫妻が、夫妻に戻ったお知らせ

あとは、平蔵氏に、お母ちゃんが唯一、隠し
通した写真が手渡された

「後は全部、静華が、自らの手で処分して
しもうてん
万が一、コレが知られたら、平ちゃんと和
葉が危険な目に遭うから、言うて」

その写真だけは、お母ちゃんが万が一に備
えておばちゃんの元から隠して保管しとっ
たと言うんや

「これは、台湾で最後に逢った日の写真」

平蔵氏はそう言うて、これを最後におばち
ゃんとは2度と逢えんかった、と涙を落し
ていた

平次がそれを見ないようにしとったんは、
私もお母ちゃんも気が付いてた

その夜は、みんなお酒も入って、後は一課
長との想い出話しやら大阪の話で盛り上が
ったんや

驚いたんは、翌朝の事や

工藤くんが、直訴してん
自分も大阪府警に研修に行きたい、って

「悔しいじゃねーか
服部は、大阪でも捜査経験があって東京で
もあるなんて
東西制覇、服部と和葉ちゃんだけして、オレ
だけしてねぇとか、何か悔しい」

蘭ちゃんは、私はついて行かないよ、と言う
たけど、それでも行ってみたい、と言うんで
蘭ちゃんまで、ええ経験になるから、と後押
しして

結局、降谷係長とセットで府警に赴任する事
が決まった工藤くんやった

でも私、聞いちゃったんや
工藤くんが、蘭ちゃんに、関西でデートも出
来るな、と嬉しそうに言うたんを

工藤くん、言うてたもんね
蘭ちゃんと、色々な土地、行ってみたいって

私は志保さんはええ、言うてくれたんやけど
東京で家を捜す事にした

そして、平次らは、同居解消となる事になり
そこには新たに特殊任務に就く人らが拠点と
して使う事になったんや

家を捜していると言う話をどこで聞きつけた
んか、京極家の当主が突然現れて、平次の部
屋の隣を貸してくれる、言うてん

「さすがに、同居してまうと一緒の部署言う
ワケにはいかんようになってまうやろ?」

「へ?」

「嬢ちゃんのお母ちゃんとは、もう話がつい
てるから大丈夫や」

「え???」

私の知らん間に、お母ちゃんは京極家の当主
にも平次が世話になったと挨拶に行ったらし
くて、別嬪さんと楽しい話が出来たと当主は
大喜びやった

「自分も今後、東京への出張が増えるから、
そん時泊まれるように、言うてはったわ」

「あ・・ええええっ!」

私が知らん間に、お母ちゃんと平次と当主
の間で話がついているらしく、もう前の住
人が出てるから、いつでもどうぞ、言われ
てん

いつでも、言われてもなぁ

家賃も聞いてへんし
でも、平次の部屋、めっちゃ広かったよな
と思い出して、私、払えるんやろか、と、
不安になった

「オレと、おばちゃんと、和葉で折半や」

オレは家賃払ってへんし、おばちゃん、多分
あの調子やとしょっちゅう来そうやからそう
話はつけてある

その代わり、オレの飯、よろしくな、と笑う
平次

事件が終わっても、大きな地殻変動が起きて
続いているようやった

東京に来て4カ月強程の月日が流れて、それ
までの10年よりも何倍も長いような時を過
ごした気もするけれど

あれだけ捜しても逢えなかった平次と再会し
て、一緒に事件も解いて、自分らの家族に振
りかかった災難も、決着を付けた

私らを引き合わせてくれた一課長はこの世を
去って、新しい一課長が来て
あと数カ月後には、志保さんも、降谷係長も
ここを去ってしまう

色々あったけど、せっかくまとまって来たチ
ームが散開してしまいそうで、何だか酷く淋
しくなった

「和葉、どないした?」

平次は、私が体調が悪いのか、それとも勝手
に引っ越しを進めたんが、やっぱり嫌やった
か?とか、色々心配してくれた

こんなに優しかったっけ、優しかったな、と
思い出すけれど

私が一緒にいた頃の少年とはもう違うてて

私ひとり、変化について行けてへんような気
がしてた

[newpage]

「うわぁ、東京でもこんな景色、見られる
んやね」

「おぉ」

休日、平次がバイクの背中に乗っけてくれて
平次が学生の時、ようひとりで来ていたと言
う場所に連れ出してくれた

夏の終わり、バイクでの外出はアンニュイな
気分になりそうな私を元気にしてくれる

「オマエ、何でバイクの免許取ったんや?」

「アンタのせいや」

「オレ?」

ペットボトルを煽っていた平次が、意外そう
な顔をした

「アンタは覚えてへんかも知れんけど」

その昔、いずれバイクの免許とって、後ろに
乗せてくれると言うたんは、平次やった

「でも、アンタ居らんようになったやろ?
でも、もし、平次が免許取ってへんでも、再
会した時、私が免許持ってたら、2人で乗れ
るやんって思うて」

ついでやから、と、有希子さんに勧められる
ままに大型も免許を取った私

「オレ、ちゃんと覚えてたで?」

「え?」

「せやから、真氏がバイク乗りやって知って
無理言うて免許取らせてもろうて、乗ってた
んや」

いつか、和葉と再会したら、約束通り乗せて
やらなアカン、思うてな

暑いけれど、心地ええ風が抜ける

街並みを一望できる高台は、どこか寝屋川で
よう平次と見に行った高台と似てた

「オレ、情け無いけど、まだあの街にも、家
にも、学校にも行けへんのや」

今でも時々、飛び起きる事がある

だいぶ平気になって来たけど、と言う平次

「私もそうやねん」

今でも時々、ひとりで事件を追っていた頃に引き戻される夢を見る

怖くて、どうしようもなく震えて、携帯に入
ってる平次と映した写真を見て、何とか落ち着けるんや

もう、平次は帰って来てくれたんやって

「和葉もなんか?」

「うん」

そうか、と呟くと、ホッとした、と言う平次
自分だけやと思うて、早う慣れなアカンと思うてたらしい

オレも、和葉やみんなと映した写真、見て落ちつくんや、と柔らかな笑みを浮かべた

平次とは、キスやハグは時々する

それ以上のことも、いずれはするんやろうけど、私も、平次も、まだそこまで気持ちが追いついてへんのや

いや、違う
気持ちが追いついてへんのは、多分、私の方やね

平次は、待ってくれてんのや

「なぁ、和葉」

そう言うて、平次はある提案をしてくれた

[newpage]

2017年8月某日 ~榎本梓の記憶

事件後、大阪に行くと言う決断をした零さん
は言う

本当は、遠山と服部を最初は帰そうと思った
んだけど、服部はまだ、あの街には足を運ぶ
事は出来ないみたいなんだ、と

時期尚早、と判断したと

「梓と風見に託して行くよ
服部と遠山を、2年後には、どこでも、バラ
でも活躍出来るようにしてくれ」

もちろん、沖田と冴島もな、と笑った

「了解」

「後、東京のオレの家は閉めるから」

「え?」

「えって何だよ
当たり前だろ?単身赴任の上に、別居って、
意味わかんない💢」

「あ、そう言う事ね」

あず、自覚なさ過ぎだよ、と言われた

零さんは、私の家族に頭を下げて、今度は、
私がどんなワガママを言っても、死ぬまで離婚はしません、と宣誓したのだ

証拠の書類にもサインして、その書類は両親が保管することになった

風見さんは、自分も大阪にと言ったが、零さんがそれを断った

産まれたばかりの子供と嫁さんのこと考えてやれ、と言って

「後、アイツらの事、ちゃんと育てる約束なんだよ、宮野さんとの」

だから梓と一緒に、頼む、風見と言ったのだ

わかりました、と言った風見くんに、零さんは嬉しそうな顔をした

その後、零さんは早々に家を引き払うと、私
の家で生活するようになり、私達は、一緒に
大阪での零さんの家を探してみたりと忙しい
日々を過ごすようになった

[newpage]

なぁ、梓

ん?

夜、2人でコーヒーを飲んでいると、零さん
が言った

ところで、オレ達、何かとても大事な事、忘れてる気がしないか?

そうねぇ、何だっけ?

その大事な事は、その後、思い出す事になったのだ

「係長!オレの合コン、どーなってるんですか!」

沖田に言われて思い出す私達

零さんは、東京で、私は関西で開催しなけれ
ばならない

先日、冴島が主催した看護師との合コンは、
結局、沖田が良いと思った子が、冴島狙いで
全然相手にされなかったらしい

「零さんは、アテあるの?」

「いや、適当に、と思っていて」

「じゃあ、私の方を、先にするわ」

沖田を連れ出して、ガチの合コンに行ったのは、それから数日後の事だった

ま、沖田に言わせると、アレはガチの合コンやなくて、見合い、言うんじゃー💢、らしいけどね💕

コレには、ちゃんとワケがある

沖田の両親から頼まれていたのだ

可愛いらしい幼なじみの許嫁がいるのだが、
息子が意地になっているみたいだから、2人で一度ちゃんと話し合う時間を持たせたいと

お相手にも、そう伝えてある、と

だから、仕組んだ

「で、どうすることにしたの?
リリース、するの?」

「するワケ無いやろが💢
あんなええオンナ、ほいほいいるワケないやんか」

あらら?

いずれちゃんと話す、今は放っておけや、と言う横顔は、真剣やった

最終章へ、
to be continued