▪️07:00 Summer festival /side Kazuha

「和葉ちゃん、ちょっと」

「なあに?おばちゃん」

なんやようわからんのやけど、色々
事情があるみたいやから、行って
話し聴いてあげて、くれへん?
と言うので、私は指定された京都の
ホテルにひとりで向かった

おばちゃんに言われた通り、
手土産を持って、お気に入りの新し
いワンピースも着て来た

「はい」

部屋をノックすると、よく通る
キレイな声が聞こえて来た

「お久しぶりです
これ、おばちゃんからです」

通された部屋には、見慣れた人影

「お父ちゃん!毛利のおっちゃん?
え、何で?」

父親にハグをした

「相変わらず可愛ええな、さすが
オレの娘やな」

「ちゃうでー?お母ちゃんの娘や」

あはは、と笑う父は、元気そうや

「やっぱり、遠山さんも娘の前だ
と違いますなぁ」

「それはそうよ、当たり前よ?」

「しかし、和葉ちゃん、キレイに
なったなぁ、一段と」

「イヤやわー、お世辞言われても
何にも無いで?」

冷たいお茶を出してもらって、
部屋のソファに座った

「お前に頼みがある」

「何をしたらええの?」

お前、何で自分が呼び出されたか
わかっとんのか?とお父ちゃんが
驚いていた

「平次に内緒、と言う事は、工藤
くん絡み
そして、蘭ちゃんのご両親が一緒
に現れた、言う事は、蘭ちゃんの
事で、私にお願い事がある、
そんなとこやな?」

ほう、伊達に平ちゃんの後ろ、追い
かけてないなぁ、とお父ちゃん

「でも、心配ないで?
平次、私が蘭ちゃんのことで動く
こと、ちゃんと知っとるし、それに
それでええよって言うとるから」

平次と工藤くんとした約束を
教えてあげた

「ありがとう、和葉ちゃん」

蘭ちゃんのお母ちゃんは、そう言っ
て泣いた

お父ちゃんから、今後の予定を
聞いた
お父ちゃんは、私の予想通り、例の
組織が、絡んだ事件を追っている

そして、蘭ちゃんのご両親は、
これから順番に、その姿を意図的
に隠すことになる

最初は、おっちゃん
次は、妃弁護士

蘭ちゃんの受験が終わるその日を
合図に、作戦が動き始める

平ちゃんには、それまでは組織に
絶対、近づくな、そう伝えろと
言われた
それは、工藤くんにも、と

蘭ちゃんのご両親は、お父ちゃん達
の捜査に協力するのだ
工藤くんを、娘のために取り戻すと
決めたらしい

「お前と平ちゃんの方が、少し前
に結果、わかるんやろ?」

そう、私達は、あと2ヶ月足らずで
結果が判明する

「相変わらず、仲がいいのね」

私を見る妃弁護士の瞳は、鋭いけど
優しい、おばちゃんと似とる瞳

「それはもう、当たり前やで?
だって、もう夫婦やし」

「「ええ‼︎」」

まだ、形式上だけですけど、と言い
私は自分の生徒手帳を見せた

唖然、とする2人は、どう見ても似合
いの夫婦

「お父ちゃんらと平次が何やら約束
したせいで、ちーっとも夫婦らしい
ことは、してもらえへんけど」

半目で父を睨む

「でもな、ちゃんと、大事にして
もろうとるよ?
私の将来やりたいこととかも、全部
言え、言われて、それを叶えるため
にどうしたらええかも、一緒に考え
てくれたん」

「あのボウズらしいな」

「平蔵と静さんの息子やしな」

「じゃあ、もしかして」

「はい、蘭ちゃんにあげたブーケは
正真正銘、私と平次の初めての
結婚式で使ったもんや
ちゃんと、ホンマもんを託したん
せやから、大丈夫
蘭ちゃんは、必ず、幸せになる
私と平次が証人や」

「そんな大事な物、蘭に譲ってくれ
たの?ありがとう、和葉ちゃん」

妃弁護士にハグをした
いつも、蘭ちゃんにしてあげるよう

「私が平次と一緒に歩いて行くって
言うの、背中押してくれた大事な
大事な友達やから、ええの」

必ず、蘭ちゃんの元へ帰って来てね
約束、してや?

「約束するわ」

私の背中を優しく撫でてくれた

「あ~、なんか、蘭に逢いたくなっ
ちゃったなぁ」

「そうだなぁ」

蘭ちゃんが自慢していた通り、素敵
なお似合いの夫婦

私は大事な預かり物をして、3人と
別れた

「頼んだで?和葉
平ちゃんのこと、我儘言うて困らせ
たらアカンで?」

別れ際、お父ちゃんはそう言った

家に戻り、蘭ちゃんのご両親から
お預かりした大事な物を、私は
おばちゃんに預けた

そして、お父ちゃんらと話したこと
おばちゃんに説明する

険しい表情を見せたけど、わかり
ました、と言うてくれた

おばちゃんにぎゅっとした

「大丈夫、平次が居るから
何も心配することないし、私は絶対
諦めへんよ?」

「せやね、平次と和葉ちゃんが居る
平蔵さんらも
でも、和葉ちゃん、十分気をつけな
アカンよ?」

「うん、おばちゃんと約束や」

子供の頃、ようした指切りをする
おばちゃんも、蘭ちゃんも
必ず守る、守ってみせる
そうココロに誓って

お父ちゃんのことは、心配で仕方
ないし、早う帰って来て欲しい
平次が居らんかったら、泣き叫んで
いたかも知れん

でも、頑張る

みんなが、動き出したのだ
私も、その時に備えて、覚悟を決め
たんやから