4月19日土曜日晴れ。暑くなりそう。
今日は、飼育の日(勝手な命名)。
ファーッ フワーッ フワーッ
濁った空気の中、体が宙を舞っている。
「重力?」
「感じない。」
「俺、死んじゃったの?」
「死んだ覚えはない。」
「じゃあ、俺どうしちゃったの?
足の骨折は、どうなっちゃったの?」
足を上げてみる。
「重力を感じる。」
無意識の中の出来事じゃない。
問答を繰り返したりして、
少なくとも途中から意識はあるはず。
目を開ければブラインドの隙間から
陽射しが漏れている。
朝だ。
看護師さんが検温に来るぞ。
入院しているんだと言う現実に
自分が置かれていることを認識。
ブラインドを開ける。
いつもの景色が目に飛び込む。
今日で入院23日目だ。
俺が居なくとも世の中は回る。
居なくなっても変わりはしない。
駄目だよ、駄目だよ。
まだ終活をし始めたばかり。
今俺が急に居なくなっても、
残された家族が困るだろう。
少なくとも必要な書類と
必要でない書類くらい区別しないと。
それに書類の置いてある場所と、
その内容の説明もしないとね。
親父みたいに急死したら、
分からないことだらけで大変なことに。
ドタバタは俺だけで沢山だよ。
生きている間に迷惑ばかり掛けたんだ。
死んでまで掛けたくないからね。
”立つ爺あとを濁さず”だよ。
随分長い間、娑婆で遊ばせてもらった。
そろそろ立たないと。
勘違いしないで。
骨折した足のことだよ。
よっちんでした。