或る文芸評論家が三島由紀夫に、一番嫌だと思っていることは何ですか、と訊いた
其れに応えて、三島は 『人間関係の粘着きです』 と答えたので更に続けて、其れ
では人間関係上で、しばしば言及される義理と人情に就いては、どうお考えですかと
質問した。
三島はこう答えた、
『義理はマナーであって、モラルではないと思います。 私の場合で云うと、
一度でも恩義を感じた人、 親しくした人の悪口は、口では言っても
文字にはしません。 私は物書きだからね。 人情はほどほどが良いと
思っています。心の底から湧き出て涙が零れるといった事はありません』
又、三島は人と会って、別れる時は 『またお目にかかる日を楽しみに』と云う事に
していると、此れは押し付けがましくない、約束を強いない、再会を必ずしも約さない。
人生でもう二度と会う日は無いかも知れないのだからだと、語っている。
そう云えば、私が商社の現役時代に北アフリカの回教国に駐在した事があるが回教徒
の人たちと会議後、私が『其れではまたお会いしましょう』 と別れの挨拶をした際、
彼らは 『インシャッラー！』 と応えるのが常だが、此のアラビア語の意味は、
『神の思し召しのままに !』という事。
此れこそ正に、三島由紀夫が ”押し付けがましくない、約束を強いない” と云う気持に
通じるのだ。
蛇足だが、ベルギーの歌手、アダモ（S.Adamo）は、40年程以上前になるが、
来日公演もしている、彼のヒット曲で『インシッャラー』がある、他には
「ブルージーンと皮ジャンパー」、「サントワ・マミー」や「雪が降る」等。
【アダモの ”インシャッラー” は1967年のヒット曲】
