三島由紀夫が関わる映画に就いては、当ブログで何度か書いているが、彼自身が最初に
出演した映画は、1960年若尾文子が相手役の『からっ風野郎』で三島は2代目ヤクザ役
だった。そして三島最期の出演映画は、幕末の尊王攘夷派の“人斬り新兵衛”と呼ばれた
田中新兵衛役で出演した『人斬り』(1969年) 勝新太郎主演、石原裕次郎共演だ。当時、
三島由紀夫は読売新聞(1969.7.1)に書いている、
『ろくに性格描写もさえておらず、ただ矢鱈に人を斬った末、エエ面倒臭いと
ばかり突然の謎の自決を遂げる、この船頭上がりの単細胞のテロリストは
私の気に入った』 此の1年後に三島自身が自刃した。
【からっ風野郎 1960年】 【人斬り 1969年】この翌年三島は自刃した
1965年4月に三島が私費を投じて原作、監督、主演で僅か2日間で製作した映画『憂国』
はツール国際短編映画祭で入賞、日本ではATG系新宿文化劇場のみで公開され上映時間
僅か28分の映画だが好評を博した。
三島死後、多くのファンが再映を望んだが三島瑤子夫人が絶対に上映許可をしなかった。
【2006年、東宝から国内向け限定販売された ”憂国” DVD、三島のメッセージ封入】
そして、1985年には欧米で公開されたが日本では未公開の映画がある、Paul Schrader
監督、作品名は『MISHIMA, A Life in Four Chapters』、彼は小津安二郎の影響を
受けている親日家だ。そして同年度 第38回カンヌ国際映画祭の最優秀芸術貢献賞を受賞
し、映画祭翌日の新聞報道は、「三島由紀夫を始め、楯の会の軍服に身を包んだ人達の
姿が美しい。この作品には、三島というものの全てが凝縮されている」(Nice Matin紙)
当初は日本でも公開予定だったが、しかし瑤子夫人が三島自身の人物像の描き方に難点
ありとして、日本では未公開の儘だ。
【三島由紀夫と瑤子夫人】 【緒形拳主演の映画"MISHIMA"】
そして俳優陣は、三島由紀夫を緒形拳、三島の母、倭文重は大谷直子、三島の祖母、夏
を加藤治子が演じた、友情出演として美輪明宏、横尾忠則も出演している。
(参考文献:三島由紀夫全集/定本三島由紀夫書誌/年表作家読本三島由紀夫/
三島由紀夫の世界/越境する三島由紀夫)