太陽と鐵』は、1968年10月に刊行された三島由紀夫の自伝的エッセイである。

それより20年前に書かれた 『仮面の告白』の Part II だと云う文芸評論家もいる。

 

この著書では、三島は陽明学の文武両道の問題を語っているが、肉体と精神の乖離

に就いて、説明をしている。 

現実の生活上での行為、即ち肉体を通じての価値基準、そして芸術や言葉を通じて

の精神上の価値基準を如何にして融合させるかに就いて述べている。

 

これに関連して、三島文学の翻訳者の一人である 英国人のJohn Bester(1927-2010)

が1970年2月19日に三島にインタビューをしている、それが『告白、三島由紀夫未公開

インタビュー』 という本になって実に、47年後の2017年に講談社から発刊された。 

何故死後半世紀も経ってからの公開になったのか、実は当時TBS記者だった小島英人氏

が2013年、放送局倉庫の放送禁止テープ群の中から偶然に見つけたのだ。

      

 【”放送禁止扱い”の三島由紀夫の未公開インタビュー本 2017年講談社

 

そのテープのタイトルには 『1970年自決半年前の三島由紀夫の思想、三島由紀夫と

ジョン・べスターの対談』 と記してあった。

 

そのテープの中で三島曰く、『べスターさんが ”太陽と鐵” を訳して下さったので非常

に嬉しかったのは、あそこにみんな書いてあるのです、あれを本当に分かって呉れた人

は僕がやることを全部分かってくれる、と信じています

      

         【"太陽と鐵" 1968年講談社より発行

 

そしてこの三島の発言に呼応する如く 『太陽と鐵』 にこんな一文があるのだ、

18歳の時、私は夭折に憧れ乍、自分が夭折に相応しくない事を感じていた。何故なら

私はドラマチックな死に相応しい筋肉を欠いていたからである”  

 

要するに此処で三島は卑近な言い方で文武両道の神髄を言っている。兎に角『太陽と鐵』

は、三島由紀夫自身が語っている通りで読めば読む程に彼の行動原理が成程、成程と

理解出来る ”感じ” はするのだが。

 

(参考文献:告白、三島由紀夫未公開インタビュー/太陽と鐵/三島由紀夫研究年表/

     三島由紀夫全集/越境する三島由紀夫/評伝三島由紀夫)