あと2週間で三島由紀夫が45歳で自刃してから51年になるが、三島が37歳の時に、或る雑誌

に寿命に就いて語っているのだ。

 

                                        

                                   【彰武院文鑑公威居士 没後51年】

 

遮二無二長生きしなければならない” そして “遮二無二生きる他ない” と結んでいるのだ、 

厳密に修辞法が好きな三島には珍しく二度も同じ文言“遮二無二”と書いているのだ、 

これは自死への要求が徐々に強まってきていることへの自分自身に対する戒めなのかも

知れない。 そして、逡巡があったのかも知れないので参考まで全文引用する、

 

          『私も2, 3 年すれば40 歳で、そろそろ生涯の計画を立てるべき

            時が来た。芥川龍之介(35 歳服毒自殺)より長生きしたと思えば、

            いい気持ちだが、もうこうなったら、遮二無二長生きしなければ

            ならない。

            古来の人間の平均寿命は、青銅時代は18 歳、ローマ時代でさえ

            22歳だったそうで其の頃の天国は美しい若人で溢れていたろうが、

           この頃の天国の景色はさぞ醜悪だろう。人間、40歳になれば、

           もう美しく死ぬ夢は絶望的で、どんな死に方をしたって醜悪なだけ

           である。それなら、もう、遮二無二生きる他ない。』

そしてこの後、こう書き継いでいる、

         『室生犀星氏(72 歳没)の晩年は立派で、実に艶に美しかったが、

            その点では日本に生まれて日本人たることは倖せである老いの

            美学を発見したのは、恐らく中世の日本人だけではなかろうか

            ….(中略)50 歳の野球選手は考えられないが、70 歳の剣道八段

      は、ちゃんと現役の実力を持っている』 と。     

 

                   

                     【剣道五段の三島由紀夫】

 

三島は36歳の時に剣道初段を、43歳で五段を取得しているが、上述寿命に就いて語った

37歳の時には未だ自分は剣道も生涯続ける積もりで、『70歳の剣道八段はちゃんと現役の

実力を持っている』 と言い切り、そして 『72歳の室生犀星は艶に美しかった』 とまで言って

いる。 三島は、後年は老醜を嫌いを公言していたのだが、 室生犀星に就いての此の発言は

例外的で実に不思議なのだ。 

 

(参考文献:三島由紀夫全集/三島由紀夫研究年表/同時代の証言三島由紀夫悼友紀行)