今年は三島由紀夫の没後50年と云うことで様々な催しが企画されているが目下、

ドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』が上映中だが、

三島自身がこの映画の舞台となっている昭和44年5月の東大全共闘との討論集会

に招待された時の思い出を書いているのでこの映画鑑賞の参考に供したい、

 

『東大教養学部900番大講堂は満員、開場入口には“近代ゴリラ”と書いた

漫画仕立ての私の肖像画が掲げられ、その飼育料百円以上と謳って“葉隠入門”

等、私の著書からの引用文が継はぎしてあった。パネルディスカッションの

2時間半は必ずしも世上伝わる様な、楽な和やかな時間であったとは言えない。

イライラする様な観念の相互模索があり…….』(中略)

 

そして、三島がパネルディスカッションの為に用意した論理の幾つかを箇条書きに

したものが下記、(参考文献:三島由紀夫研究年表)

 

      1) 暴力否定が正しいかどうかと云う事である。

      2) 時間は連続するものか非連続のものかと云う事である。

      3) 三派全学達は如何なる病気に罹っているのかと云う事である。

      4) 政治と文学の関係である。

      5) 天皇の問題である。

 

当時の三派全学連の一部には暴力的な学生もいた為三島の周囲の人たちは東大

全共闘からの招待は断るべき、又ボディーガードを同行すべき等々反対意見が出たが

三島はいざと云う時の為に護身用に「鉄扇」を持参し臨んだのだった。 

正に陽明学の「知行合一」を実践した形だ。 因みに、三島は江戸時代の陽明学者、

大塩平八郎の言葉『身の死するを恐れず、ただ心の死するを恐るるなり』に感銘を受けた

と書いている。