タオルたちの運動会
春です。
ぽかぽかとあたたかい陽を浴びながら、5才の女の子、チカちゃんは、おうちの庭でお絵かきをしています。
「次は何を描こうかな。」
お人形さんの絵をかくのにあきたチカちゃんは、まわりを見まわしました。
「タンポポを描こうかな、ツクシを描こうかな。どうしようかな。」
そう言いながらきょろきょろしていると、ふと、何かが聞こえたような気がしました。
「うん?」
チカちゃんはちょっと首をかしげて、耳をすましてみました。
「・・・・・・。」
やっぱりなにか聞こえる!
チカちゃんは耳に手を当てて、もっとようく聞いてみました。
「いちについて、ようい、ドン!」
吹きだした風を合図に、ハンガーにかけられた青色ティーシャツが叫びます。
パラソルハンガーにかけられた緑や黄色のタオルがいっせいに回り始めます。
「ええい、負けないぞ!」
「ボクだって!」
「わたしが一番よ!」
パラソルハンガーがくるくるくるくる回り、タオルがひるがえります
「黄色のタオルちゃんがんばれー!」
「緑のタオルくん負けるなー。」
ピンチハンガーにかけられた靴下やハンカチが、やんややんやと声援をおくります。
その時、風がピタッとやみました。
「ゴール!」
青色ティーシャツはパラソルハンガーに袖をかけ、競争を止めました。
青色ティーシャツの袖に最も近いタオルが一番です。
「一番は、緑のタオルくんです!」
「う~ん、くやしい!」
「次は負けないわよ!」
「わたしも負けない!」
さっきからタオルたちの声に耳をすませていたチカちゃんが叫びました。
「チカちゃんだ!」
「チカちゃんだ!」
「とうとう見つかっちゃった!」
洗濯物たちは大さわぎ。
そんなことにはかまわず、チカちゃんは叫びます。
「みんなの運動会に、わたしも入れて!」
こうなったらしょうがない。
「いいよ!」
洗濯物たちの運動会は、チカちゃんも入れての運動会になりました。
また風が吹いてきました。
それを合図に、青色ティーシャツが叫びます。
「いちについて、ようい、ドン!」
タオルたちはいっせいに回り始め、チカちゃんもその回りを走り始めました。
