カマキリに春の手紙を渡されて
とまどい揺れるオオイヌフグリ
オオイヌフグリちゃんは、体のちっちゃな春の花です。
このオオイヌフグリちゃんは、桜の根元に住んでいます。
いつも、桜を見上げては、
「桜さんは大きくていいなあ。私も大きくなりたい。」
と思っています。
どうしてって？
だって、みんなが見てくれるもの。
オオイヌフグリちゃんはちっちゃいから、なかなか気づいてもらえません。
「わたしも見て見て。」
って背伸びをするのだけれど、みんな桜を見上げてばかりで、根元のほうなんて、ちっとも見ません。
だから、
「桜さんはいいなあ。」
と思うのです。
そんなある日、カマキリさんがとことことこっとやってきました。
そして、
「はい、どうぞ。」
と言って、一枚の花びらを渡してくれたのです。
「えっ、これはなあに？」
オオイヌフグリちゃんがとまどっていると、カマキリさんは言いました。
「桜さんからのお手紙だよ。」
「え？」
花びらをよくよく見てみると、それは桜の花びらでした。
そして、こんなことが書いてありました。
『オオイヌフグリちゃん、ボクはオオイヌフグリちゃんがうらやましいです。
なぜならとてもちっちゃいし、お友達がたくさんいるから。
ボクは背高のっぽで恥ずかしがりやなので、お友達がほとんどいません。
ボクは、オオイヌフグリちゃんとお友達になりたいです。
手紙をあげたりもらったりしたいです。』
オオイヌフグリちゃんは、とてもびっくりしました。
わたしのことがうらやましいだなんて！
オオイヌフグリちゃんはすごくうれしくなって、
『とってもうれしいです。
ありがとう！』
とお返事しました。
