美意識の宝箱 のつづき
The Spare Bedroom
1916年以降、ブルームズベリー派とよばれる主にケンブリッジ出身の芸術家、作家、知識人が集まった
Charleston Farmhouse (イギリスSussex州)
その装飾スタイルも見事なのですが、Charlestonの人間関係もすごいです。
おもな住人:
画家 ヴァネッサ・ベル (作家ヴァージニア・ウルフの姉)と子供二人
画家 ダンカン・グラント氏 (ヴァネッサの愛人)
作家 デヴィッド・ガーネット氏 (ダンカンの愛人)
この時点でもおかしいのですが、ここに、ヴァネッサの夫で子供の父親クライヴ・ベル(美術批評家)も頻繁におとずれていて、ベッドルームや書斎まであります。
しかもクライヴは、1961年にヴァネッサが亡くなった後、自身が3年後に他界するまでダンカン←つまり奥さんの愛人とここで暮らしたそう。
Clive Bell's Bedroom
真ん中の紳士がダンカンで、左が彼とヴァネッサの娘アンジェリカ、右がクライヴとヴァネッサの息子クエンティン
この家でヴァネッサと愛人ダンカンの間にアンジェリカ↑が生まれるのですが、その出産にも立ち会ったダンカンの愛人デヴィッドは、やがてアンジェリカを妻にします。 (え?)
みんな自由だなあ。
ほかにここを頻繁に訪れたのはヴァネッサの妹であるヴァージニア・ウルフ(作家)とレナード・ウルフ(作家・出版者)夫妻、E・M・フォースター(作家)、リットン・ストレーチー(批評家・伝記作家)、ロジャー・フライ(ヴァネッサと短い関係のあった美術批評家)等々、
政府官僚で経済学者のケインズ(マクロ経済学のあの人)も常連で、ベッドルームまであります。
Maynard Keynes's Bedroom
ケインズはダンカンと関係もあったようで・・・ その後ずいぶん年下の女性と結婚します。
家中が、ヴァネッサとダンカンのキャンバスでした。
ドア、壁面、クローゼット、ベッド、暖炉、テーブル、バスタブ、本棚、そのへんで安く買った家具、テキスタイル、陶器、もちろん絵画も。
昨日紹介したダイニングルームの壁はステンシルで装飾されています。テーブルトップは、すりきれたら描き足していたそう。
色や柄の洪水なのに、なぜか落ち着く世界。4ヶ月のイギリス留学中に、ここを訪れたことは一生の財産です。シンプル極上主義だった私の美意識は、ひっくり返され、震え、恍惚の中でざわめいていました。
あまりに手の届かない、でもたまらなく素敵なものを見つけてしまったときの感じ。
自分にはとうていマネもできない多色使い、イギリスの陰鬱な天気にぴったりのやわらかくフォギーな色。
日本でこういう家に住みたいかと言われると違うし、そもそも(そして今も)シンプルモダンなインテリアが好きなのですが、なぜか私の美意識に強烈なインパクトを与えた場所でした。 ヨーロッパの奥深い魅力を感じます。
当時6千円ほどしたこの本は、いまはペーパーバック版しか取り扱いがないようです。(リンクは昨日の記事にあります) 思い切って買ってよかった><
多大な努力のもとCharlestonは修復・保存されており、中に入るのも、何も触れないように手荷物をすべて預けてから。壁の内側が朽ちてくると、壁紙の表面を何センチ四方かずつに分けてはがし、中をリノベーションしてからまた元に戻す、という血のにじむような努力がされています。
近くにある小さな教会も、壁面、天井、祭壇にいたるまで、彼らの芸術におおわれているんですよ。天使が住んでいそうなところです。
死ぬまでにもう一度行きたいな。きっと行くだろうな。




