静かに席についた。
面会時間は30分。
法務教官がタイマーをセットする。
私は....
息子の顔を見るなり泣いてしまった。
息子も私達両親の顔を見るなり泣いていた。
そして、
「ごめん....」と。
このような事態になったのは、自分のどこに原因があったのか。
してしまった事の大きさをわかっているのか。
しっかり自分を見つめ直して欲しい。
そんな内容を声を絞り出しながら話したと思う。
その間も息子は、
「ほんまにごめん....」
と泣いてばかりだった。
普段はあまり怒らないし、泣くことなんてまずない主人も、
この時は声を震わせていたように思った。
そこからは、食事は摂れているか、寝れているか、とか、
息子からは、姉、弟はどうしてる?と。
姉とも仲が良く、弟とは8歳離れていることもあり、可愛がり面倒見が良く、弟も兄が大好きだった。
弟の様子を話すと、また泣いていた。
じぃじばぁばは知ってるの?と。
年老いた父母に余計な心配はかけたくなかった。
でも長期間帰れないとなると、さすがに黙っておくにも限界があるので、今晩話そうと思っていること等話した。
息子は面会時間の残りが気になるのか、何度もタイマーを見て話していた。
彼女のことも心配していた。
急に連絡が取れなくなった訳だから、不安に思ってると思うから、連絡を取ってあげて欲しい。と。
私には大きな不安があった。
その不安はしっかり伝えておこうと思い、息子に話をした。
こんな事があり、鑑別所に入っていたと聞いたら、きっと普通の女の子なら嫌になると思う。
鑑別所から出た時に、高校、彼女、友達。
(息子も彼女も友達も、いわゆる不良少年ではなかった。)
もしかしたら今までの生活を全部失うことになってしまうかもしれない。
噂話から、誰がこの事を知っているか分からない状況になるかもしれない。
周りから、腐ったヤツという目で見られるかもしれない。
でもそれも自分のした事だから、覚悟をしておかないといけないよ。と。
息子は泣きながら、
「わかってる。家族が居たらそれでいい。」
と言っていた。
「〇〇がした事は、まだ親の責任だから。
どれだけ悪い事をしてもママは見離さないから。
でも今回の次は無いからね。
今はしっかり反省して、自分を見つめ直して。
帰ってきたらこれからの事は一緒に考えよう。」
そんな話をして、30分はすぐに経ってしまった。
席を立って、息子が法務教官に連れられ出ていくのを見送った。
出て行く時、名残惜しそうに振り向きながら、
「ありがとう」と泣いていた。
頑丈な鉄の扉の向こうに消えていく息子の後ろ姿を見ながら、涙が止まらなかった。