さて、およそ30年(正確には26年)もの間、排便には悩まされていた。
『今日は普通に出てほしい。』
『出血しませんように』
『直径5cmのウンチじゃないように』
そう思いつつも、排便後に出痔になる。
下痢しても出痔になってしまうのだ。
さすがに困り果て、家族にいい医者は居ないか相談した。すると近くに皮膚科の名医さんがいて、何人も痔で苦しんでる人を緩和させているというのだ。
僕も藁にもすがる思いで通院したが、緩和であって完治させる訳ではない。それを完治できると思い込んだ。
当時は恥ずかしさから、また、度胸と意気地が無いせいか肛門科をたずねなかった。
とにかくその皮膚科の先生に症状を話してお尻を見せた。先生は男性で体育会系っぽい方だった。
『これは内側にイボも出来ていて、そのイボが無くなれば良くなるよ』
そう言われるがままに治療を受ける。指を突っ込まれ、確か5時の方向に突起物があるようで、先生は押し込むようにイボを探しそれを押し込む。その後薬を塗って行く。
これが中々痛いのだ。
先生の説明は続く。
これは手術の必要ない。
通院してれば一年後にには治るから大丈夫との事だった。
後は習慣チェック。
水分は足りてるか?
便意がお尻に感じられないのに、習慣的に排便してはいけない。
アルコールと水分を間違えるな。
とか、野菜ジュースやビールは飲めよ、等々だった。
基本は便秘だと言われ、水分補給が足りてないとの診断が下されたのである。
それよりも僕が心配してるのは出痔の直し方だ。先生曰く、飛び出た部分を下から上にかけてゆっくり押せと言うのだ。それを2ヵ所やると自然に引っ込むというので、排便の都度やったのだ。だかやってみたかい有りで、本当にスポンッと引っ込んだ。でも相変わらずトイレは鮮血してるのだが。
そして年月は経ち、今の奥さんとお付き合いが始まるのだがやはりウィークポイントは言うべきだと思い、別れられてもても構わないので彼女にカミングアウトしたのだ。
便秘は約10日から2週間、排便毎に脱肛で直径5cmのウンチ、トイレは鮮血。おれはそんな常態を抱えてると。それを聞いた奥さんはビックリして直径5cmのウンチなど有り得ないと思っていたが、本当にそれで苦しんでるんだと言うべき事は言った。
『なら見せてくれ』と言われ、『直径5cmってったら動物なみだよ。有り得ない』。そして直径5cmが出た時、奥さんは息揚々と見に行った。見てきて唖然としていた。
『これヤバいよ、専門医に行った方がいいよ』とまで言われたが、今のところ上記の直しかたを説明したら納得してくれた。これらも含め結婚の障害はクリアしたのだ。
それでも出痔は出現する。
そして結婚、子供も生まれ、子供が中学生になった頃、僕は50歳になっていた。当時ウォーキングにはまり二時間位歩いていたが途中『便意』を催してきた。公園のトイレで用を済ませたがやはり出痔がでたのだ。困ったのはその後だ。出痔がいつものやり方で全く引っ込まなくなったのである。
奥さんに症状を話すが気持ち悪くてしょうがない。そこで重い尻を上げて会社を休み肛門専門医に向かった。
心配だった。待合室では男女関係なく肛門疾患の患者が思った以上に多いのだ。そして順番がきて呼び出された。局部が局部なだけに看護師さんは男性かと先入観を持っていたが、看護師さんは女性ばかりだった。確かにそうだ。患者の半分は女性だからね。
僕の行った病院はすごい丁寧で受付から看護師さんまで丁寧でフレンドリーだった。
そして先生が現れる。
先生は男性だ。
まず今までどういう治療方法を受けたのか聞かれて、それまでこうこうこう言われたと言ったら、今は戦後の治療はしません。医療は日進月歩進んでるんです。そう言われて問診が終わった。問診のあとは触診。下着を脱いで、肛門部分が開いてるビニールシーツのようなものを体に巻き付ける。
肛門の中に指を突っ込み触診をする。
そこで言われた事が
『マットさん、なんでこんなになるまで放っといたのですか?これは手術しないとダメなレベルです』
そういわれてしまった。
程度にもよるが
① 今の肛門科治療は軽ければ飲み薬で直せる。
② 中程度なら、内視鏡を肛門から挿入し悪い所を内視鏡で切除して日帰り入院で終わる事もある。
③ 飲み薬も内視鏡も無理な状況と判断した時は重篤な状況と診断されたら手術の説明を受ける。
気になるのは手術時間。
当時の皮膚科の先生は二時間かかると言われ、それを先生や近くに居た看護師さん達に話してみると大笑いされた。
なんと重篤な状況でも、長くても20分だそうだ。
入院日が決まって、その日は男性四人手術だった。
(僕がお世話になった病院は、一週間毎に男女別に手術が分けられていた)
手術前に腸の掃除をするのだが、これが結構辛いんだ。医薬の下剤を飲むのですぐ下る。
そんで、便器に液体しか出なくなり、その液体が透明な状態になったら手術前の準備は終了だ。
手術室に案内所してくれて、呼ばれるまで待つ。僕の世話になった病院は程度の悪い人から手術するようなので、僕がトップバッターだ。部分麻酔をして手術なのだ。
僕の入院した病院は手術の時、好きなBGMを聞きながら手術を受けられるという素晴らしいサービスがあり、僕は弱気になってたから、ローリング・ストーンズをお願いした。
多分、有線かJ-COMの音楽聞き放題だろう。
『では麻酔しますね、ちょっとチクッとしますよ~』で駐車を射たれるのだが、同時にストーンズのTell Meが始まる。
なんだか、痔の手術の先入観による恥ずかしさが完全に抜けてしまった。そして先生が入ってきて、手術が始まるのだが先生もストーンズが好きだったようで、「うわ~、久しぶりだなぁローリング・ストーンズ、今かかってるのはボブ・ディランの曲じゃないですか?」
そう、当時のストーンズの新曲がライヴ盤からのシングルカットされた
“ Like a rolling stone ” だった。
手術室にローリング・ストーンズのナンバーが流れてから本当に20分……失礼、17分だった。
こうやって僕の出痔(脱肛)生活は終わるのである。
次回は手術後の自分が取ったケアについて説明する。
ではまた のちほど😄🖐️