ROKKO森の音ミュージアムで見た「牧野富太郎のみちくさ~音楽、書、人々との交流」最終回です。以下の文章は展示パネルから引用しました。
牧野富太郎の気になるきのこ
牧野博士の随筆『植物一日一題』では、博士が長年の研究で培った植物を中心としたウンチクが100題綴られています。その中にいくつかきのこが話題に登場します。
植物の話題については一般的な名称をタイトルとして書いているものが多いですが、何故かきのこの話題については図鑑に掲載した和名ではなく古名や地方名で書き、読者の目を留めるようなタイトルになっています。
『植物一日一題』掲載のきのこたち
和名:アミガサタケ(アミガサタケ科アミガサタケ属)
地方名(東京):カナメゾツネ
和名:カラカサタケ(ハラタケ科カラカサタケ属)
古名:ニギリタケ
和名:オニフスベ(ハラタケ科ノウタケ属)
古名:キツネノヘダマ
和名:マンネンタケ(タマチョレイタケ科マンネンタケ属)
古名:万年芝
「ニギリタケ握り甲斐なき細さかな」
上記の句は、牧野博士が武州飯能の山地でカラカサタケを採った時に詠まれました。カラカサタケは古名でニギリタケと呼ばれていましたが、牧野博士は名前にしては柄が細く握り甲斐がないとがっかりしたようです。
実は「ニギリタケ」の名前の由来は、傘に弾力があり、やさしく握ると潰れず元の形に戻るという特徴からでした。
牧野博士のきのこの図
マツタケ(キシメジ科キシメジ属)
牧野博士はマツタケがお気に入りだったようです。
神戸で交流があった川崎正氏にマツタケを御馳走になっていたようで、マツタケについて書いた手紙が何枚か残されています。当時は現在よりマツタケの価格が安かったことでしょう。
こちらは、牧野博士が描いたマツタケの図です。
コウタケ(マツバハリタケ科コウタケ属)
コウは香のことで、独特の良い香りがする人気の食菌です。シシタケはコウタケの古語ですが、現在では、コウタケとは別種の似たきのこの和名で使用されています。
また、シカタケは今日ではタマチョレイタケ科の別種のきのこの和名になっています。シシタケもシカタケも上記以外に他のきのこの地方名としても使用されているので非常に紛らわしい名称です。
こちらは、牧野博士が描いたコウタケの図です。
マイタケ(タマチョレイタケ目所属 科未確定)
牧野博士が存命の頃はマイタケの栽培技術が確立していなかった為、野生ものを見て描いたのでしょう。
マイタケの名前の由来は一説に「見つけると嬉しくなって舞い踊るから」と言われたりします。
ハツタケ(ベニタケ科チチタケ属)
図にハツタケの特徴の環紋と密なヒダが細かく描かれています。モノクロの図ですが、左上にはきのこの色や傷つくと青色になることも補足されています。
傷をつけると暗赤色の乳液が出て、後に青緑のシミに変わるという変わったきのこです。
ノウタケ(ハラタケ科ノウタケ属)
脳のような見た目が名前の由来です。牧野博士が描いた図は幼菌で、もう少し成長すると大きくなって皺が寄り、脳のような見た目になります。
けぶだしのおや(秋田)、けぶりばったけ(愛知)、ばくはつ(秋田)など、成熟すると内部がほこり状の胞子塊になることから付けられている地方名が面白いです。
牧野博士は草花のイメージが強く、こうしてきのこの観察もしていたとは意外でした。
それにしても、展示の仕方がもうひとつでしたね。空いている所にパネルを並べているだけで順路も定まっておらず、しかもコンサートの合間をぬって1~3階まで右往左往しました。
特に、きのこの記事は目立たない所にあり、見落とした方もいたのではないでしょうか?
おわり