今回は、福田美術館で見た「日本画革命」第3章「故郷の風景」を振り返ります。以下の文章は展示室のパネルから引用しました。
この展覧会は旧 山本憲治(1946~2020)コレクションから構成されています。
山本氏は、家業であった海運事業を伸展させ、世界の海上輸送を担う外航海運事業や、我が国の物流を支える国内フェリー事業や、内航海運事業へ進出し、晩年は里山再生を志して農業にも取り組んだ起業家であり、美術蒐集家でもありました。
瀬戸内海に面した港町の広島県呉市出身の山本氏は、生まれ故郷である中国地方の画家の作品や、海を主題とした絵画などを多く蒐集してきました。
パノラマギャラリーでは、岡山県笠岡市に生まれ、生涯故郷の風景を描き続けた小野竹喬(1889~1979)と、広島県出身の日本画家・奥田元宋(1912~2003)の作品を見ました。
小野竹喬《麗春(1945~55頃)》
満開の山桜が描かれる春の風景。まだ弱い日差しは、強い色を照らし出すわけではありませんが、だからこそ「麗しい春」が広がっています。
小野竹喬《浜辺(1958)》
日本画の白い絵具である「胡粉」を用いて、日差しを照り返して眩く輝く白浜を見事に表現。砂浜を歩く時のザクザクという音や、寄せては返す波の音、潮風の匂いまで感じさせるような臨場感に富む作品です。
小野竹喬《四季屏風(1924)》
一扇ごとに違う図を描いた「押絵貼屏風」。12図すべてに工夫を凝らし、季節ごとの風趣を区別しながら、日本の風景として構成する着想が極めて斬新です。
小野竹喬《爽雲(1973)》
熱気によって地から天へと育っていく積乱雲。清々しい緑色の竹も、夏の印象を強めています。わずかにそよぐ竹とは対照的に、風にのって流れている上空の雲。高度の違いで微風から強風へと変化する自然の様相を描き上げています。
小野竹喬《秋(1957)》
秋を迎えて色を変え始めた木々の葉、日差しの変化で刻々と移ろう雲の色を、厚塗りと新岩絵具で繊細に描いた作品。竹喬が努力の果てに完成させた戦後の画風の魅力が溢れています。
奥田元宋《山雲紅樹(1970頃)》
朝日を受けて、朝霧が晴れゆく中、ひときわ美しく照り輝く紅葉した木々。それを映した水鏡も、金と赤に満たされています。実在しない景色。山雲と紅樹だけでなく、実景と心象風景を織りなすことで天然の美を超越した、美的世界がこの絵にはあります。
奥田元宋《遠山早雪(1970頃)》
盛秋の候、色を深めた木々を、元宋は空や水で挟み込み、反対色である赤と青との対比として構成し、印象を強めています。遠景の山は、富山県上市町と立山町にまたがる名峰、剣岳。森の彼方に積雪する山頂が望めます。
奥田元宋《日照雨(1981)》
「日照雨」とは、日が照らす雨。一般には「狐の嫁入り」などと呼ばれる天気雨のこと。元宋は、自身の代名詞である赤をより美しく表現するために、この稀な気象が生む、特別な景色を描きました。
展示物を一通り見た後、カフェで休憩しようと思いましたが、満席で入れず。午後3時過ぎだったのでメニューも品切れが多く、この展覧会の人気を物語っていました。
ガラス壁から見た嵐山の景色。満開の枝垂れ桜が綺麗です。
さて、あと1時間半で嵯峨嵐山文華館の展示物を見れるでしょうか?
2館セット券を買ってしまった上、日を改めるわけにはいかず、早足で向かいました。
つづく