明治の工芸 | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

「令和3年度第3回コレクション展」第3弾。今回は「明治の工芸」です。本文は京都国立近代美術館のHPから引用しました。

 

 

明治の工芸は近年、「超絶技巧」というキャッチコピーで語られ、急激に人気が高まっています。確かにそれらの作品は緻密で細密な装飾性、実物そっくりの迫真性を有しており、工人たちの感性と技量には驚かざるを得ません。しかし明治工芸は長年、美術史においてほとんど顧みられることがなかったものです。

 

 

その主な理由としては、それらの多くが万国博覧会や美術商を通じた海外向けの輸出品であり、優品が国内にそれほど残っていなかったこと、そのために装飾過剰で技巧主義的で、本来の日本的な美観や特性を有していないなどの先入観を払拭できなかったことなどが挙げられます。

 

 

しかし、近代美術史の研究が進むにつれて、海外からの作品の買戻しが進み、第一級の作品を目にする機会が増えたことで、それまで否定される大きな理由であった過剰な装飾性や技巧性が実は前代からの技術体系の継続性を持つものであること、そして海外からどん欲に情報を収集するとともに、最新技術、様式を吸収し、作者自らの意図の下で改良していったものであることなどが明らかになってきました。

 

 

そもそも明治工芸は、明治維新により幕藩体制が崩壊したことで、それまでの藩の保護がなくなり、自身が身につけた技巧を新しい時代に即して活用していく必要に迫られたことから始まります。そして工人たちは技巧それ自体を視覚的に作品化していくという明治工芸における一つのスタイルを確立していくのです。

 

 

そのために現在、明治工芸は前近代と近代とをつなぐ重要な存在として美術史に位置づけなおされています。

 

 

以下、展示室で見た作品です。

 

作者不詳

《北極熊図刺繍壁掛》

絹、刺繍

 

 

迎田こうだ秋悦しゅうえつ(1881-1933)

《山海四季蒔絵重箱》

漆、銀、蒔絵

 

 

江馬長閑(1881-1940)&大橋荘兵衛(1839-1905)&豊斎(生没年不詳)

中川浄益 9代(1849-1911)&10代(1880-1940)

《高台寺蒔絵冠卓かんむりしょく

桐、漆、銀、絹、蒔絵

 

 

象彦ぞうひこ(八世西村彦兵衛)(1887-1965)

《源氏物語蒔絵飾棚》

漆、蒔絵

 


右下の部分を拡大。源氏物語のワンシーンが描かれています。

 

 

海野うんの勝珉しょうみん(1844-1915)

《龍虎図対花瓶》

朦銀おぼろぎん、金、彫金ちょうきん象嵌ぞうがん

 

 

七代錦光山きんきうざん宗兵衛そうべい(1868-1927)

《花鳥図六角花瓶》

陶器

 

 

素山そざん(生没年不詳)

《楼閣唐人とうじん図花瓶》

陶器

 

 

錦雲軒稲葉(生没年不詳)

《四季花鳥図花瓶》

有線七宝

 

 

小伝治こでんじ(1831-1915)

《樹木に雀図花瓶》

有線七宝

 

 

並河靖之(1845-1927)

《藤図花瓶》

有線七宝

 

 

石川光明みつあき(1852-1913)

《仔犬図硯箱》

桑、象牙

 

 

作者不詳

つば煙管きせるひさげ箪笥》

漆、蒔絵、芝山細工



それにしても、普通の提箪笥なのに、側面に煙管が描かれているのはなぜでしょう?

 

 

今日はここまで。次に続きます。