先日の続き、後半。本文は京都国立博物館のHPを参考にしました。
第3章 皇室の至宝
我が国の文化財保護において、行政と共に大きな役割を果たしてきたのが、京都にゆかり深い皇室でした。
明治維新に伴う混乱の中、危機に瀕した東大寺や法隆寺といった古社寺が、その最も重要な伝来品の数々を皇室に献納し、援助を受けながらその姿を今日まで保ったことはよく知られた出来事です。
ここでは、歴史と文化の守護者である皇室ゆかりの至宝を見ました。
玉泉帖 小野道風筆
平安時代(10世紀)宮内庁三の丸尚蔵館所蔵
国宝 春日権現験記絵
鎌倉時代(14世紀)宮内庁三の丸尚蔵館所蔵
藤原一門の氏神である奈良の春日社に奉納されたもので、京の公家文化の高みを鮮やかに示す。流出などの受難を経つつも今日、20巻全てがそろって残る。
国宝 黒漆七絃琴(法隆寺献納宝物)
中国・唐時代 開元12年(724)東京国立博物館所蔵
製作の年と場所が明らかな世界最古の琴として、アジアの音楽史に名高い逸品。法隆寺の伝来品で、皇室の所蔵を経て、現在は東京国立博物館に収められ国宝となっている。
第4章 今日の文化財保護
文化財を後世まで守り伝えるためには、様々な課題があります。ここでは、文化財保護に欠かせない様々な取り組みについて知りました。
《1》調査と研究
文化財をよく知り、その価値を守っていく上で、専門家による調査と研究は欠かせません。全国では日々、各方面の関係者の連携のもと、膨大な品々の所在や状態などが確認、把握されています。
日本の文化財はその長い歴史の中で、素材や伝来の事情に応じて様々な伝わり方をしており、今なお知られぬものが各地に眠ってもいます。また科学技術と学術の進歩が、既知の文化財について新たな価値を明らかにすることもあります。
調査と研究を通じて状況の把握に努めることは文化財保護の第一歩であり、毎年行われる新たな重要文化財、国宝の指定もまずは調査から始まるのです。
ここでは、次のような展示物を見ました。
国宝「刀金象嵌銘天正十三年十二月日江本阿弥磨上之(花押)/所持稲葉勘右衛門尉(名物稲葉江)」
鎌倉~南北朝時代(14世紀)山口・柏原美術館所蔵
戦後最初の国宝指定を受けた名刀。いつしか行方不明となり捜索されていましたが、平成28年(2016)に所在が届けられ、再び世に姿を現しました。
白磁金彩鳥鈕蓋付馬上盃《金琺瑯》
中国・清時代(18世紀)(公財)陽明文庫所蔵
《2》防災と防犯
各種の災害や犯罪への対策は、文化財の保全にとって極めて大きな課題です。過去に発生した文化財をめぐる数々の痛ましい悲劇は、私たちの社会に、防災や防犯に対する重大な警鐘を鳴らしてきました。
今なお文化財の損失が完全に無くなることはありませんが、事故を未然に防ぎ、万一の場合も被害を抑えられるよう、設備の導入や日々の点検、組織の整備などが図られています。
文化財の詳細な調査記録や修理技術の研鑽もまた、こうした脅威への備えとして大切な役割を果たしています。
特に昭和24年(1949)の法隆寺金堂壁画の焼損を教訓に、文化庁では事故のあった1月26日を文化財防火デーに定めています。
ここでは、次のような展示物を見ました。
国宝 花下遊楽図屏風 狩野長信筆
桃山時代(17世紀)東京国立博物館所蔵
近世初期風俗画の名品として名高いが、修理中であった大正12年(1923)9月1日、関東大震災で右隻の中央部分を失った。
金銅鳳凰
室町時代(14世紀)京都・鹿苑寺
《3》修理と模造
日本に残る文化財の多くは、非常に脆弱な素材で出来ています。劣化が避けられないゆえに定期的な修理が不可欠で、修理事業は近代以来、文化財保護の柱石として重視されてきました。
ものの価値を損ねることなく、責任もって将来に伝えられるよう、修理にあたってはその時点で最も適切な技術と素材が注意深く選ばれています。またそうした技術や素材を活かし、精巧な模写や模造を制作することも出来ます。
最後に、文化庁所蔵、令和2年(2020)製作の模造品「法界虚空蔵菩薩坐像」を見ました。原品は神護寺所蔵のものです。
特別展「京の国宝」について
平成29年(2017)開催の「国宝展」と昨年秋開催の「皇室の名宝」から人気のものを再展示し、今年の年明けに開催した企画展「文化財修理の最先端」を再編成したような展示でした。
そう考えると、「京の国宝」展には目新しいものが無く、この空き具合も納得できます。今日が最終日ですが、特に混むこともなく、静かに閉幕したのではないでしょうか?
おわり