FOCUSスパコンと京 | 散策日記Ⅰ

散策日記Ⅰ

美術館&博物館で開催された展覧会の記録、それにまつわる散策記です。

 京コンピュータを見た後、理化学研究所の近くにある計算科学センタービルに入りました。

 

 FOCUSスパコンのミニ説明会がありました。FOCUSはFondation for Computational Scienceの略で、計算科学振興財団という、法人に産業用のスパコンを貸している公的団体です。FOCUSスパコンはネットワークを介して外から使用できます。2011年4月から稼働し、川崎重工業、神戸製鋼所、シスメックス、神戸大学など現在156法人、累計265法人が利用しているそうです。

 

 FOCUSスパコンの処理速度は344T FLOPS。T(テラ)は10の12乗、FLOPS(フロップス)は1秒間に実行できる浮動小数点演算の回数を表す単位で、1秒間に331兆回の演算をします。京の演算処理能力はFOCUSの29倍ですが、性能が良い分扱いが難しく、京を使用する前のスパコンと位置付けられているそうです。

 

 蓮舫議員が事業仕分けで「2番じゃダメなんですか?」と発言して物議を醸したスパコンですが、事業仕分けが行われた2009年11月、理化学研究所は「京」を開発している最中でした。

 2005年に文部科学省が「2012年までに世界最速10ペタフロップスのスパコンを完成させる」次世代スパコンプロジェクトを立ち上げ、理化学研究所を中心に、富士通とNECと日立の共同で開発が始まりましたが、2009年5月にNECと日立が撤退。システムの変更を迫られ、プロジェクトは決して順調とは言えない状態だったそうです。

 

 「2番じゃダメなんですか?」この言葉だけ聞くと、スパコンに理解の無い人の発言に聞こえますが、「仮にスピードが世界1になってもすぐに他国に抜かれるであろう、それよりも利用者が使いやすいスパコンを作ったほうが良いのでは?次世代スパコン開発に1000億以上の税金が投入されているのに、成果が全く見えないのは改善すべきではないか?」という考えが背後にあり、蓮舫議員だけでなく、スパコンを利用している研究者からも同じ意見が出ていました。

 結局、2010年度の予算は、文科省の要求額(268億円)の半額以下の110億円で落ち着きました。

 

 「京」は10ペタフロップスの速度を達成し、2011年にスパコン性能ランキング「Top500」で世界1に輝きましたニコニコ これで1番になれなかったら、どうなっていたでしょう?「京」は2012年6月末に完成。9月から運用を開始しました。

 

 スパコン性能ランキング「Top500」は、毎年6月と11月に発表されます。2017年6月も中国が1位と2位を独占しました。1位は「神威太湖之光(しんいたいこのひかり)」。93ペタフロップスとダントツに速く、2016年6月から1位をキープしています。2位は「天河(てんが)2号」。33ペタフロップスで2013年6月から2015年11月まで1位でした。

 

 日本のスパコンは「京」が8位、7位に「オークフォレスト・パックス(Oakforest-PACS)」が入っています。

 オークフォレスト・パックスは、京の約3分の1の消費電力で、2倍以上の計算能力(25ペタフロップス)を持つスパコンです。東京大学情報基盤センターと筑波大学計算科学研究センターが共同で開発し、富士通が製造しました。東京大学柏キャンパス(千葉県柏市)に約8200台設置されていて、宇宙物理学や大気、海洋、地震などの地球物理学、飛行機の強度解析などの研究に活用されているそうです。

 

 来月スパコン性能ランキング「Top500」が発表されます。「神威太湖之光」を超すスパコンは誕生するのでしょうか?