京都御苑には何ヶ所か井戸があります。
縣(あがた)井
昔この井戸のそばに縣宮(あがたのみや)という社があり、地方官吏(かんり)として出世を願う者は、井戸の水で身を清めて祈願し、宮中にのぼったといいます。
この付近は江戸時代まで五摂家の一つ、一條家の屋敷地内となっており、井戸水は、明治天皇の皇后となった一條美子のうぶ湯に用いられたとも言われています。
大和物語(平安時代に成立した日本中古の物語)では病気を治す水とも紹介されました。
祐(さち)ノ井
1852年明治天皇は、中山忠能(ただやす)邸で生まれました。井戸はその庭内にあります。
天皇2歳の夏、日照りが続いて殆どの井戸が涸れたため掘られたものです。天皇の幼名、祐宮(さちのみや)にちなんで名付けられました。
染殿井
この付近一帯は、平安京当時の北端にあたり、平安時代前期に臣下として最初の摂政に任じられ、その後の摂関政治の礎を築いた藤原良房邸「染殿第」があった場所とされています。
出水の小川
1992年まで御所には防火等のための「御所水道」が引かれていました。明治に開かれた琵琶湖疎水を三条蹴上(けあげ)で分水した専用水路です。
そのうち、御所周りの流路「御溝水(みかわみず)」から導水して作ったのが「出水の小川」です。
御所水道を閉鎖した今、井戸からの地下水を循環ろ過して流れを維持しています。
出水の小川の周りは遅咲きの里桜が植えられています。恐らく今行けば満開だと思います。