社会人基礎力の話を始めて、それを構成する12の要素だけでは不十分じゃないかという疑問を持ったうえで15の能力やスキルなどを別の要素として書いてきました。しかし、まだ少しあるようですので、残りの能力や資質について、もう少し書き続けたいと思います。
今の時代のビジネス環境で重要になるものとして、12の要素以外でもう少し考えるとすれば、「自己のキャリアを振り返る力(リフレクション)」、そして「心身の健康管理(セルフマネジメント)」といったところでしょうか。ここに挙げた3つの軸は、見方によれば「自分が生き残るために必要な資質」と捉えることも出来そうですね。その中で今回は「リフレクション」を取り上げようと思います。
リフレクションの英語の意味は「反射」「反映」「熟考」などとなっています。これが転じて、ビジネスや教育の分野では「自分の行動や経験を客観的に振り返り、思考や価値観を見つめ直すことで、新たな学びを得て次の行動に活かすこと」を指す意味で捉えられています。つまりは「内省」ですね。
「内省」ですから、「振り返り」という意味をもちますが、これは単なる反省ではありません。「反省」という言葉を使った場合は、自分の過去の言動や判断を振り返り、その是非を改めて考え、次からは良くなかった点を改めようとすることです。単なる後悔にとどまらず、次の行動を改善するためのプロセスを指すことになるのですが、実際には「出来なかったところ、よくなかったところに注目する」辺りまでは熱心ですが、あまり目を向けたくない所ですから、「次からは気を付けよう」という程度で終わってしまう事があるんじゃないでしょうか。
これでは改善につながるかどうか疑問です。リフレクションは単にミスを責めるのではなくて、成功したところも失敗したところのどちらも含めて客観的な視点で観察しなければなりません。そのうえで、今後の成長や行動改善に繋げるための「未来志向の振り返り」である点が大きな特徴です。多くの場合、成功したところはあまり注目されない傾向がある気がするのは私だけでしょうか。
「反省」と言った場合の主な要素を考えてみると、3つほどのステップが含まれるようですね。
・先ずは出来事などを客観的に振り返る事が必要です。自分の言動やその結果について、感情を交えることなく客観的な事実として見つめ直すことですね。
・そして、振り返った内容について冷静に評価しなければなりません。その行動が適切であったか、間違っていたか、または不足していた部分はどこかを判断することが必要です。
・そのうえで、改善のポイントを探して次に繋げる事が必要です。失敗や問題の原因を明らかにし、同じ過ちを繰り返さない事が必要です。そのための対策を考えて、実行に移すところまでを含みます。
ただし、リフレクションといった時の振り返りは、反省とはちょっと違った意味になります。「振り返り」は、行ったことや起きた出来事を客観的に見直すことでしたね。この時点では良いも悪いも評価をしていません。総合的に判断することになります。この状態を一歩進めたのが「反省」でしょう。この場合は過去の失敗に焦点を当て、同じ間違いを繰り返さないための原因究明や戒めまでを含む言葉になります。ですから、どうしても失敗した部分がクローズアップされてしまう傾向が出て来ます。これに対して「リフレクション」と言った場合は、生じた出来事だけに留まらず、「その時の自分自身の思考や感情、行動の背景にある価値観」に至るまでの全体を俯瞰して、次はどう行動すれば良いかといった「未来」に繋げる所までを含むプロセスを指します。
詰まるところ、反省は自分の言動や行動に注目して次から同じ失敗をしないようにするために行うもの、リフレクションは自分の言動を客観的に振り返って自分の成長に繋げるのが目的といったところでしょうか。その目的のためには自分の主観や感情を除く事で得られる気付きが重要になりそうですね。これが人材育成などのビジネスの場で必要とされるポイントはこの辺りにありそうです。
具体的にリフレクションはどのような手順で行えばよいかですね。この辺りは企業や専門家によって多少違いがあるように感じますが、大筋では同じようです。
ステップ①事実の整理
先ずは、事実として「出来事の整理」から始まります。仕事であったり、対人的な出来事であれば、自分が行った言動や仕事の流れ、成果などについても、事実の部分を整理して並べていくことになります。これによって、「何が起きたか」「誰と出会ったか」「自分はどの様に行動したか」の整理が出来ます。ここで大事な事は、主観や感情を交えない事です。
ステップ②感情の言語化
この時、自分はどの様な事を感じたかを言葉にして表現するステップです。言語化することによって、他社を含めて可視化する事が出来ます。こうして、感情の底にある自分の価値観や考え方の傾向が明らかになります。
ステップ③意味付け
ステップ②で明らかにした感情や背景の価値観、自分の事情などについての整理ですね。「なぜそう感じたのか」「自分の判断にどんな意図があったのか」を考察していきます。他の視点によるフィードバックがあるとより客観的になりますので、同僚との対話やファシリテーターによる質問などが有効です。その時の状況や他者による影響なども考えることで、客観的に何が学べたかを考えるすてっぷになります。これによって自己認識が深まり、次の行動につながる洞察も得られます。
これは、捉え方によっては「経験した出来事や成果の背後にある、それぞれの出来事相互の因果関係を考える」といった表現も出来るんじゃないかと思います。経験したことを他者の視点や環境に注目して振り返ると、別の何かが見えてくるかもしれませんね。
ステップ④次の行動
自分のその時の行動について振り返ってみて、その時に取った自分の行動は適切だったか、その状況での自分の役割は何だったのか、というところに意識を巡らせます。こういったことが自分の気付きにつながります。
ステップ①~③や上記の内容によって得られた今回の気付きを踏まえて、次に自分はどのように行動するか、あるいは何を改善するかについてを具体的に決めます。この段階で「どんな小さな一歩を踏み出すか」を明確にすることが、リフレクションを行動変容につなげるポイントです。
この一連の内容を通して、リフレクションの目的は「客観的な自己理解」によって、自分の行動のクセや価値観、感情の動きに気づくことから始まり、「自律的な成長」を通して自分で課題を見つけ解決する力を養うことによって、最後は仕事で成果を出さなければなりませんので、「パフォーマンスの向上」を目指すことになります。そのためにも、日常の経験を「やりっぱなし」にせず、自分なりの知恵へと変換する事が必要です。
