今回は、前回のコンテクスト再構築力の話の続きです。概要は前回に書いたつもりですので、続きの今回は「再構築するうえで注意する事」、そして「再構築の手順」について書いていこうと思います。
先ずは再構築をするうえで注意する事についてですね。コンテクスト(文脈)を再構築する際に必要な事は、単なる「都合の良い言い換え」や「事実の歪曲」にならないようにしなければなりません。これはとても重要な事です。
1、「客観的事実」を正しく伝える事
言い換えれば「歪めて伝えないこと」です。解釈(ストーリー)を変えることと、嘘をつくことは、全く違うことです。データや過去の事実はすでに完了している、あるいは終了したものですから、もはや固定されてしまったものです。ここに手を加えると捏造になってしまいますので、信頼を失う行為です。事実はそのままに、光の当て方(切り口)だけを変えるのが鉄則です。
2、相手(ターゲット)の前提や感情を無視しない事
どれだけ優れた文脈であっても、それが相手側の価値観から離れたものになってしまえば、響くものではありません。自分本位の文脈を作って相手に押し付けても、相手に不信感や強い反発を与えてしまいます。相手が今置かれている状況、知識レベル、文化的背景などを徹底的に調査した上で、コンテクストを再構築する必要があります。
3、論理的な一貫性(ロジック)を保つ事
文脈を変えたことによって全体のストーリーに矛盾が生じてしまうと、説得力がぜんぜん無くなってしまいます。したがって、こちらから新しい文脈を提示したときには、「なぜその解釈になるのか」という筋が通っていなければなりません。部分的には辻褄が合っていても、全体を通して矛盾が起きていないか、論理的おかしなことになっていないかをキチンと検証しておかなければなりません。
4、目的を見失わない事
文脈を新しくすること自体が目的になってしまう、いわば「手段の目的化」になりやすいという問題があります。コンテクストの再構築は、「相手に行動を促す」「課題を解決する」といった目的を達成するための、あくまでも手段に過ぎません。コンテクストを再構築自体が目的ではないので、そこを勘違いしてしまってはトラブルの元です。いくら奇抜で面白い解釈やストーリーを作る事が出来ても、本来のゴールである「課題の解決」に繋がっていなければ、何の意味もありません。
5、倫理的な意味で一線を踏み外さない事
これは必要不可欠な要件です。なぜなら、扱い方によっては意図的にヘンな方向に誘導することになるかもしれませんし、マインドコントロールの手段になってしまいかねないかもしれないからです。いくら都合が悪いことであっても真実を隠してしまったり、一部の立場の弱い人を騙したりするためにコンテクスト(文脈や解釈)を書き換えることは、倫理的に許されることではありません。社会的にみても正当性があり、関係者全員にプラスの価値をもたらす再構築であるか、常に自問する必要があります。
このような点に注意しながら、コンテクストを再構築しなければなりません。失敗すると信頼を失いますし、関係者との間に摩擦を生じる原因にもなります。
こういったことを念頭に置いたうえで、コンテクストを再構築するための手順を考える事になります。ここで失敗しないためには、ここにもいくつかのポイントがあるようです。
もし、何かトラブルが起きた場合、対応の方法を組み立てるうえでの最優先事項は、「顧客が見ている世界(コンテクスト)」をこちら側も一緒になって、同じ景色を見ることです。そのためには、顧客と自分たちを「パートナーの関係」として捉える事が必要です。「私 vs 顧客」を「私たち(顧客と私) vs 問題」として、同じ方向を向いて「問題を解決する」、そんな姿勢が必要です。
仮にそのトラブルが「顧客の勘違い」から生じたものであったとしても、相手のプライドを保つ逃げ道を作っておかなければなりませんので、論破しては火は消せません。また、初動のスピードは迅速でなければなりません。対応が遅れてしまった場合は、顧客は「不誠実だ」と判断してしまいます。すると、その後の言葉がすべて言い訳に聞こえてしまいます。このような事を踏まえて、コンテクスト再構築をしなければなりません。
結局のところ、そういった注意点をまとめると、
1. 顧客のコンテクストの完全受容(傾聴と同期)
言い訳を一切せず、顧客が「何に怒り、傷つき、困っているか」という背景と感情をすべて吐き出させ、すべてに対して完全に共感する姿勢が必要です。
2. 事実の客観的特定(認知のズレの修正)
顧客の主観(感情)を否定せず、何が起きたのかという「客観的事実」だけを、顧客と一緒に整理してみてはどうでしょうか。
3. 共通のゴール(目的)の設定
「どちらが正しいか」の議論から始まるかと思いますが、これを「この問題を解決して、お互いにどのような未来を迎えたいか」という共通目的へ移行させる必要があります。
4. 解決策の提示と「意味の転換」
単に代替品を出すだけに留まらず、「今回の件を教訓に、御社の業務をより強固にするための仕組み(新しいコンテクスト)」として解決策を提示します。
5. 未来の約束と関係性のアップデート
対応が完了した後、今回のトラブルが「ただの事故」ではなく「お互いの信頼関係が一段深まるための通過点だった」と思えるようにフォローを行います。
こういった点に意識しつつ、コンテクスト再構築の手順を組まなければなりません。特に、新しい製品の開発やサービスの設計・構築においては、物事を要素に分解したうえで再構築していくプロセスが有効とされています。
①コンテクスト(状況・背景)の確認
:顧客の生活背景、時代の空気、社会的な課題を知る。
②目的の確認
:誰のどんな課題を解決して、どのような状態(未来)をつくり出したいか。
③どのような機能を持たせたいか
:目的を達成するために必要となる、具体的な機能や性能のリストアップ。
④手段の確認
:それを実現するための技術やデザインの検討。
最後に一つ、コンテクストの再構築力がなぜ重要なのか、もう一度確認しておきましょう。現代は情報過多の時代です。ただ「商品」をアピールするだけでは人々の心を動かすことなど出来ません。それよりも、商品やその需要といった「背景にある意味」を見つめ直して、顧客が「なぜそれが必要なのか」という理解や納得感(つまりコンテクスト)を改めて認識することが出来れば、商品やサービスの価値は何倍にも跳ね上がります。
だから必要なんですね。
