今回は批判的思考の3回目になりますが、これまでの説明でどのような考え方をするのかの概要は掴んでいただけたと思います。ただ、知っているだけでは十分ではありませんので、今回は如何にして批判的思考(クリティカルシンキング)を身につけるかという話をしたいと思います。
クリティカルシンキングのスキルを身につける方法を調べてみると、いろいろな記事やサイトがヒットします。そして、それぞれがいろいろな内容を主張しているようですね。身につける場合も、もっと鍛え上げようという場合も、同じような内容の主張も多いように感じましたので、一緒にして書きます。
クリティカルシンキングのスキル、身につけたり鍛えたりするためには、そんなクセをつけることが大事なようですね。
一つ目、目的や論点を明確にする
これは最初にすることですね。話をしていると論点がズレてきたり、話が脱線してあらぬ方向に向かって議論が白熱したりすることがありませんか。議論が脱線しないためにも、これは最初に決めておきたいことですね。これは身につけるにしても、トレーニングとして行ううえでも、大事な事です。
また、論点を絞って検討を始めるためには、事実と思いや意見とを分けて考えなければなりません。様々なデータやコメントの中から、先ずは事実だけを取り出す必要があります。意見や思いの場合は、その人の気持ちや考え、立場などによる偏りが加わりやすいので、出来るだけ別にしたうえで検討する必要があります。
前提条件を確認する
これは「前提条件から疑ってかかる」といっても良いでしょう。議論のスタート地点が誤っていてはキチンとした答えに辿り着く事は出来ません。例えば、出来事に対して「本当にそうか?」とか、「事実は何か?」、あるいは「根拠は?」「それを示す数字は?」、場合によっては「例外はなかったか?」などと問いかけてみるんです。そして、それらを検証してみるんです。そうするとじつはデマだったことが分かったり、かなり表現が誇張されていただけだったとか、今までしっかりと監視していなかったので急に気になっただけだった、そんな理由が背景にあったことが判かることだって出て来るでしょう。
とくに注意が必要なのは「暗黙の了解」というような場合です。「周知の~」だとか、「公然の秘密」などの場合も注意しないといけません。どうしてもすっ飛ばして考えてしまい勝ちですが、
一つ一つ確認を取ってみると、じつは担当者ごとに認識が少しずつ違っていたということが出て来るかもしれません。関係者全員の意識統一を図らずに「じゃ、そういうことで・・・」で解散した場合など、後で何が起こるかなんて予想するだけで背筋が寒くなるような事例も実際に存在するかもしれないんです(検討する内容にもよりますが)。
前提条件のみならず、基本的なところから全部見直す必要が出て来るとしたら、「担当者は何をやっていたんだ」という事になりませんか。
そんな土台に当たる部分から見直すのであれば、「その情報はどこから入手したものか」「その状況からメリットを得られるのは誰か」「自分が達成しようとしている目的は何か」「何か見落としていることはないか」、こういった捜査のような事も一緒に考えなければなりません。
もし可能なら、「他には?」「もし〜なら?」と別の角度から検証してみると、意外なことが分かったりするかもしれませんよ。
客観的な視点を持つ
これは検討する自分の側のの思考のクセや先入観に対する戒めといったところでしょう。これらはどうしても見落としがちなポイントです。自分の意見も客観的に見直そうという事ですね。ただ、自分で自分を批判的に見るのはちょっとツラい話でしょうから、第三者的な立場で物事を考える事を意識してみてはどうでしょうか。個人的には、この方が気持ちがラクな気がします。
そのためには、いろいろな立場の第三者の意見に耳を傾けなければなりません。また、気が短い人だと最後まで相手の話を聞く事が出来ないかもしれません。中には自分の意見しか言わないので事実が全く見えてこないような話をする人もいます。だからといって「問答無用、うるせい!」と切り捨てる事は出来ませんよね。多少は我慢してでも、最後まで話を聞く必要があります。そのうえで、いろいろな人の話から出来事を立体的に組み立てて、因果関係や関連する要因を考えて行くことになります。
立場によっても、仕事に対する理解度によっても、それぞれの人の意見や話には微妙に差が出て来ます。また、言葉の足りない部分や相手が想像を交えて話をする場合は、こちらも言葉を足したり補ったり、いちいち確認を取ったりする必要があります。いろいろな情報を集めてインプットして考えて行くことが必要ですから、それぞれの人の立場を理解するといった姿勢が求められるでしょう。
仮説を立てて検証する
ここまでの内容をきちんとこなせば、矛盾点や意味不明な部分、あいまいな状態のままで放置してきた部分などが分かってくると思います。では、その後どうすればよいでしょうか。どのようにしてより良い正解(答え、つまり解決)に辿り着くかですね。
なぜクリティカルシンキングのスキルが必要なのかを考えれば、課題や問題を解決するためという答えに行き着くでしょう。その答えが正しくなければ、更に誤った方向に進んでしまいます。これは避けたいところですね。より高い精度で答えに辿り着くためにも、クリティカルシンキングのスキルを活用して、出来事や課題、問題などの本質が明確にしなければなりません。そうするといろいろな視点で見つめ直す事が出来ますので、思わぬアイデアがひらめく事だって出て来る可能性もあります。それがひょっとしたら大きなヒットにつながるかもしれない・・・、そんな妄想も出て来るかもしれませんが、これも批判的に捉えるなら「夢物語」を考える前に地に足の着いた現実的な落しどころを考える方が賢明という事になりそうですね。
さて、クリティカルシンキングのスキルを身につけるといい事尽くめのような書き方になってしまいましたが、実際にはデメリットが無いわけでもありません。最後にその辺りにも触れておきたいと思います。
何しろ、批判的に捉えて一つ一つの事実を前提条件や基本的なところから疑って行くわけですから、どうしても時間がかかります。労力もかかります。いろいろな人の話を聞いて疑ってかかるわけですから、対人関係の摩擦が生じやすくなります。人間関係がギスギスしたものになるかもしれません。また、場合によっては否定的な視点に偏りやすいということも考えておいた方が良いでしょう。つまり、論理的に、そして客観的に分析する事は出来ますが、その一方でスピード感に欠ける場合や調和が求められる状況下では、むしろ逆効果になる可能性も出て来ます。
話を聞くといいながら実際には質問攻めになってしまうと、「傾聴」や「対話」ではなくて「尋問」になってしまいます。話を聞く側にそんなつもりが無い場合でも、相手が同じく冷静になって話をしてくれるとは限りません。尋問に感じたり責められているように受け止めてしまったとすれば・・・、その後の様子は想像がつきませんか?
今の時代は世の中の動きが激しいので、のんびり(というわけではないでしょうけれども)時間をかけることが難しいと思います。「精度の高い答えは出せたがタイミングの方を失って、ビジネスチャンスを逃してしまった」という事も起きかねません。
こんなデメリットが生じる可能性を含んでいますので、こんな話も意識したうえでクリティカルシンキングをスキルを磨く必要があります。
