『イエスという男』田川健三著 三一書房

 

 『マホメット』、『ブッダ』、そして本書と、世界の三大宗教の教祖について書かれた本をついに読み終えた。ある先輩から読むように渡されたもので、私に課せられた宿題みたいなものであった。

 本書は副題が「逆説的反抗者の生と死」とあるようにイエスの人間像とその教えについて、マタイ伝やルカ伝を素材に、極めて熱くポレミックに論じたものである。

 ところで、ある評論、批評を理解するためには、その対象(人物とその思想)に対してある程度の識見がなければ理解はおぼつかない。

私にはイエスに対する基礎的な知見が欠けているので、これまでのイエス像やキリスト教義の論議を前提に、これを批判的に検証するような評論はなかなか理解できなかったのが正直なところである。

つまり親身になって読めるようなものではなく、晦渋な評論で私にはいささか難解であったと言わねばならない。

 

『愛の渇き』三島由紀夫著 新潮社

 

 上に書いたことと関連するのだが、先月『三島由紀夫論』を読んだが殆ど理解できなかった。何故かと考えると、論評の対象になった作品はかなり昔の読んだもので、内容を覚えていないに等しいからだ。

 極論すれば、知らない作品を如何に論じられても、そこに理解も共感も生じないということである。知っていればこそ、ああ、そこはそういう視点もあるのか、そう理解するのか・・・等、その評論に馴染み参画することができ、自分なりの評価もできるのである。

 そこで、三島の主な作品をもう一度読み返してみようと思ったのがきっかけで読み始めた。

 この小説『愛の渇き』は、悦子という女が主人公。夫との夫婦間の不仲であったり、その夫の死後、舅と関係を繰り返したり、また、恋人のある若い使用人への横恋慕、そして最後にはその若い男を殺してしまうという物語である。

 なんという不道徳で禍々しい愛であろうか。愛というものが潜在的に有する苛烈な闘争、というものを顕在化させたのであろうか。愛のもつ皮肉で逆説的な意味を考えさせられるような小説である。

 

『日本を変える!若手論者20の提案』田原総一朗 潮出版

 

 ジャーナリスト田原総一朗が20人の若い論者とのインタビューをまとめたものである。

古市憲寿、木村草太、白井聡、堀江貴文など、現代の論壇で活躍する若手の社会学者、憲法学者、大学教授そして実業家等と、日本の現状とこれからの日本はどうあるべきかを論じている。

 田原という老ジャーナリストの面白いところは、硬骨・熱血漢そうでいながら、左にも右にも理解を示し巧みにバランスを保っているところであろう。私に言わせると鵺的な存在である。氏が司会を務めるTV「朝まで生テレビ」も、BSのゴールデンタイムに移るらしい。90歳を超えて、どこまで現役として勤められるのか。氏が常々洩らしているように、朝生の本番中にばったり旅立つということも・・・、

 

『探花』隠蔽捜査9  今野敏著 新潮社

 

    7月1日 既述

 

『冥』「バイオリン弾き」他三篇

 

 例によって、百年文庫の短篇シリーズである。気軽に世界の名短篇に触れることができるのがいい。 後日詳述