『詩人の紙碑』長田弘著 朝日選書

 懐かしい詩人である。若い頃に傾倒した詩人で、書架には詩集他十冊近い著書が並んでいる。本書は詩人論を中心とした評論集である。

 戦後史の原点でもある『荒地派』の鮎川信夫を論じているが、この詩人にとって『荒地派』は一つの乗り越えるべき巨峰であったはずだ。『荒地派』から数えて二世代目、60年代から70年代にかけて活躍した詩人の一人である筆者が戦後詩の真髄に切り込むような分析が秀逸である。その他安倍公房論、大江健三郎論等も面白く読めた。戦後世代の熱い思いが伝わってくるような評論集である。

 

『日本史の仕組み』林屋辰三郎、梅棹忠夫、山崎正和他 中公文庫

「鉄砲とかぶきもの」の章では城の天守閣(天主閣)はキリスト教の天主からきているのではないかという意外な起源説を展開する。また、明治以前の日本は高度な近代社会になっていた。全国に百数十校の藩校があり、寺小屋にいたっては二万校もあったという。優れた江戸時代の再評価である。

豊饒な歴史の中から煌めく文化の宝石を拾い上げるような気分になって楽しい。知の泰斗たちが繰り広げる歴史夜話といったところか。

 

『日本経済入門』野口悠紀雄著 講談社現代新書

 「異次元金融緩和政策は失敗に終わった」と評価するように、反リフレ派、反アベノミクス派の経済学者である。

「輸入物価指数と消費者物価指数は連動しなければおかしいが、企業の利益や内部留保にとどまり、消費者物価に反映されなかった」と主張する。円安が輸出企業の収益に大きく貢献しても、一般庶民にまで還元されていない事実を鋭く言い当てているように思われる。

 今後の日本経済について、深刻な労働力不足が日本経済を直撃すると警告するとともに、公的年金、医療費等社会保障関係費の膨大な伸びをどのように抑えるかが、日本の膨大な借金経営の改善と密接につながっていると言う。

少子高齢化と社会保障関係費の天井知らずの伸びは、どの経済学者も言及しているが、もっともっと真剣に議論して明日のよき日本を見出していくべきだと真剣に思う。

 

『日本経済 瀕死の病はこう直せ!』島田晴雄著 幻冬舎 後日詳述

『日本を救う最強の経済論』高橋洋一著 扶桑社 2月28日既述

『勇敢な日本経済論』高橋洋一・ぐっちーさん 講談社現代新書

『日本経済はどこで間違えたか』 菊池哲郎 イースト新社 3月2日既述