自民党麻生副総裁の台湾有事に際しての「戦う覚悟」発言が話題になっているが、私は中国に対して無用の刺激を与えているようで容認できない。そもそも我が国は専守防衛が憲法上の建前であって、台湾が攻撃されたからと言って自衛隊が出動するわけにはいかない。また、現実に日本は一つの中国を認めており、台湾とは国交がない状態である。勿論私は習近平の強権国家体制と覇権主義を認めるわけではないが、だからと言って中国と角突き合せ、戦端を開くなどもってのほかだと考える。ここは「大人の対応」が必要で、そのことは中国側もわきまえていると思う。

 そんなこともあって中国に関する本を何冊か読んでみた。まずは『日本の「中国人」社会』中島恵著(日経プレミアムシリーズ)

 本書は日本の中にある「中国人社会」を取り上げ、その興味深い実態を明らかにしている。

その前提としてまず、日本と中国の関係を現実的、象徴的に捉えているのでそれについて書く。例えばこんな数字を挙げる。

在日中国人は約73万人で、在日外国人の三分の一を占め、なんと高知県の人口とほぼ同じ中国人が日本で暮らしているのである。

逆に日本企業の中国進出は2万社にのぼり、在中日本人は12万人を数える。(数字は2017年) 2万社とは大変な数字ではないか。ちなみに調べてみると、ユニクロが中国に展開している店舗数は767店でこれは日本全体の店舗数より多い。(2020年:現在)

 経済的な一体化はここまで進んでいるのである。言うまでもなく、日本と中国は文化的にも歴史的にはお隣さんであり、その関係は現代でも切っても切れないようである。

さらに著者は次のような中国人の特徴を指摘する。勉強熱心、上昇志向が強い。理数のレベルが高く、日本の中学は中国の小四レベルであるとみなしているようだ。

 この背景には過酷な受験競争があり、一日10時間の受験勉強が普通であり、日本の教育はゆるすぎる、と批判的に見ているという。こういう中国人の反応、現実感覚は日本人にはなかなか理解できないのではないか。

 

 これは最近読んだ雑誌からの引用である。

中国では、大学卒業だけでは就職が有利にならないので大学院に行く傾向にあるという。それでも就職が難しいので海外留学する若者が増える。在日中国人が増えているひとつの要因ともなっている。

 著者はこういう若者の状況について、競争がインフレーションを起こしているとの表現をしている。なんともおかしな表現である。

こうした状況への反発からか、今では「寝そべり主義」(何もしない、あきらめの感覚)が若者に広がっているとも言う。

 過激な競争社会と経済的な格差拡大、習近平による強権的共産党独裁国家は覇権主義的色彩を国際的に広げつつある。

一方で、少子高齢化に伴う日本の「失われた30年」のような経済停滞の懸念、その他多くの難問を抱え中国は今後どう動いていくのか私の興味は尽きないのである。