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決意と行ドウ 10

ガタンゴトン・・・。


電車の中はパラパラと空席があるくらい、何人か立っている人もいる。

レコは空いてる席に座った、私服のおばさんとスーツのおじさんの間に。


乗ってから気付いたレコ。
(こんな時間にランドセルも背負ってない制服の小学生が電車に乗っているのは不自然かな?)


なんとなく視線が気になるような感じもしたが別に話しかけられるわけでもないのでほっとくことにした。
そんなことなんてどうでもいい。
もう頭の中は旅行のことでいっぱいになっていた。


レコの学校では修学旅行は一泊二日で京都、大阪、奈良を回る予定だったのだが、レコは一人で三つとも回るつもりなのだろうか?



その頃学校では、レコのクラスは自習になっていた。
担任が連絡もなく休み、レコがホームルームの後に急に消えて誰も見ていないからだ。
担任の三浦先生も心配されたが、まずは子供であるレコが優先ということになった。

しかし家に電話しても誰も出ない。
レコの父親の仕事先は誰一人知らない。

教師達が心配して数人外に出て探すほどだった。

決意と行動9

先生が学校を休んだ。
自分の親のせいで休んだ。

体が痛くて?

心が痛くて?

もう来ないの?

来れないの?

誰にも会いたくないの?

僕に会いたくないの?

どうしたらいいの?


レコの頭の中は答えのわからない疑問でグチャグチャである。

ホームルームの内容など聞いてもいない。

どうでもいいホームルームが終わると同時に教室を飛び出した。
思いつめた顔でそのまま学校からも飛び出し、
ヒト気のない所まで走っていった。

人気のある先生とクラスのみんなのことを思うと誰にも顔が合わせれなくなってしまったのだ。

ということは、レコにとっては誰にも会えなくなってしまったということでもある。

学校にしか友達はいない、頼る先生もいない、親戚など会ったこともない。
家にはあの兄がいるが、あの父もいる。

あの父親のおかげでここまでレコを悩ませ、追い詰めたのだから。
元々大嫌いだった父親の存在が、実在する生きた悪魔のように思えてきた。


仲間も、頼る人も、行く場所もなくなった。

(あ、修学旅行も行けなくなっちゃった。)

涙が

出てきた。

トボトボと目的地もないまま歩くレコ。

30分ほど歩いただろうか。

本能がそうさせたのか、誰かが導いたのか。
何も考えずに歩いているつもりだったが、ふと前を見るとそこにはさびれた地元の駅が。

駅前にはコンビニが一つあるだけの小さな駅。

駅。

電車。

どこでも行ける。

ポケットには渡せなかった修学旅行費。

・・・・・。



(修学旅行に行こう!一人で!)

答えが出るのは意外にも早かった。

兄と何度か電車に乗った事はあったので、切符の買い方、電車の乗り方、新幹線の走っている大きな駅への行き方はなんとなく覚えている。


ここにいても誰にも会えない、会いたくない。
昨日の出来事はやはり小学生には荷が重すぎた。

しかししょうがなく行くわけではない。
確かに思い出したくもないような出来事がきっかけだった。
耐え抜いてきた父親からも解放されたい。

どこか遠くへ逃げてしまいたい。
どうせ遠くへ行くなら、みんなと一緒に行けなくなった修学旅行先に行ってみたい。
その単純な考えは小学生のレコの素直な願望だった。

学校を抜け出し、誰にも内緒で一人旅。
当然ドキドキする、でもワクワクの方が大きいかな。

そして次の電車に迷いもなく乗り込んだ。


制服のまま。
学校にランドセルも忘れたまま。

けつい8

レコは泣きながら叫び続けた。

しかしこの場合は逆効果だ、父親にしてみれば標的が泣き叫んでいるのは望み通りで、むしろ楽しくなっていた。
死なない程度に、気絶しない程度に『おもちゃ』で遊ぶ父親。
そしてこの悲惨な状況は楽しんでいる人間、父親が飽きるまで続く。


「ふぅ。」

やっと飽きたのだろう、父親は座って何も無かった様にテレビを見だした。
その顔は自分の子供をいたぶった後とはまるで思えない、素に戻っていた。

数分が経ってからゆっくり動き出したレコ。
どうせ行く場所もない、父の機嫌が落ち着いたなら、と今日は外へ逃げるように出て行くのはやめて自分の部屋に入ることにした。


部屋にはテレビもゲームもなく、時間を潰すといったら兄がたまに買って帰るマンガを理解もせずパラパラとめくる程度。
虐待を受けた日は何も考えずボーっと時間だけが経つ事が多かった。


この日もする事が見つからない、父親の顔も見たくないので風呂には入る気がしない。
結局、布団に入り兄の帰りを待つことにした。



ほんの短時間の間に色んなことがあったおかげで濃い1日となったせいか、レコは知らない間にそのまま眠りについていた。




次の日、目が覚めると兄は帰っていた。
眠りについた時間が早かったせいか時間はまだ五時過ぎ、兄も父親もまだぐっすり眠っている。

兄が起きるのはいいが、父が起きるのは困る。
昨日のことが当然まだ許せていないレコは今のうちに学校に向かうことにした。

起こさないように静かに用意をするレコ、ふと机の上をみると『レコへ』と書かれた封筒が置かれてあった。
中身はお札が数枚、小学生にはかなり大金だ。そして一枚の手紙が、(修学旅行費だ。ちゃんと先生に渡すんだぞ。落とすなよ。)と兄の字で書かれてあった。

すぐにでも兄を起こし、お礼を言いたい気分だが、グッと我慢し置手紙を書くことにした。
(ごめんね。ありがとう。)
薄っぺらい内容だが気持ちを込めて書いた。

大事そうに封筒をランドセルの奥の方へ入れ、寝ている兄にペコっとお辞儀をして家を出たレコ。


(兄ちゃんはすごいな。まだ高校生なのに。兄ちゃんが父さんだったらいいのに。いつか恩返ししなきゃな。)


さすがにまだ早いのでフラフラと時間を潰しながら学校に向かう。
学校に着く間にランドセルの中が気になって3回も確認した。

教室に着いたのも一番だったレコ。
「おはよう。」
だんだんとクラスのみんなも集まってきた。
教師達はもうほとんど来ているだろうと思い、封筒を持って職員室へ。

しかし担任の先生はまだ来ていないらしい。
他の教師が「どうしたの?」と聞いてきたが、昨日のことも謝りたいレコは封筒もまだ渡さず教室に戻ることにした。

チャイムが鳴り、ホームルームの時間。
ガラガラっと扉を開けて教室に入ってきたのは担任とは違う教師だった。

「えぇ、三浦先生は今日はお休みですので、僕が今日一日受け持ちまーす。」



(!?)

小学生のレコは今頃になって昨日起きた出来事のコトの重大さに気付いた。