
酒屋の棚に並んだ日本酒は各々を主張し、見栄を張らなければなりません。
只単に目立つだけでは不十分で、見るものに手に取りたいという気持ちを抱かせなければなりません。
酒屋の棚は戦場であるのです。
大振りな体配の多い南北朝期において小振りな短刀を造る作者に大左、長義がいます。
この中で如何なるわけか例外的に大振りな短刀が確認されているのが長義であります。
数振り程度現存しますが、重ね薄く幅広く一尺を超えます。
いずれも銘字から初期製作で、延文期と思われます。
通常裏年期は統一されたものですが、南北朝に至っては注文主によるものか擁護する主権者の都合か同一刀工でも双方が併存する例も少なくありません。
南北朝正閏論のせいでしょうか、後に北朝の年号は消されたり改竄された例があり、時よりそのような例に遭遇することがあります。
本作も延文年期を改ざんされており、登録証にも不明としてありますが延文二年と判読されます。
寸伸び重ね4mm。
小杢目肌麗質によく積み、淡く映りを立てて冴える。
湾れに小互の目、矢筈風の刃を交え匂い口深く金筋を交え、小沸良くつき冴える。
相伝上位の雰囲気十分にて、備前物としては異色ですが、温度感の高い魅力的な作品です。